戻るTOPへ

 

機動戦士ガンダム00感想
ガンダムの串ダンゴオー 第5話

前回のあらすじ:
団子ガンダムの出番がなかった。

さてさて、米リカ合衆国(←なんて読むんですか?という質問を頂きましたが、こめりかに決まっております。椎名高志先生に敬意を表して…)とタリビアの間で行われた茶番劇にもピリオドが打たれました。物資援助とエネルギー供給量の増加を取り付けたタリビア大統領はゴネ得であります。両国大統領が白々しく握手を交わす姿が世界へ発信されていますが、この大統領を見るといつもこう思う、こっち見んな。

さて、タリビア国とその大統領のモデルになったと思われる南アメリカの一国ベネズエラ。ウゴ・チャベス大統領は対米的な姿勢で、反米ブロック形成の動きを推進しており、その過激な発言(ジョージ・W・ブッシュを悪魔呼ばわり)等がよく知られておりますが、今月も香ばしい話題を提供してくれました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スペイン国王、ベネズエラ大統領の非難に「黙れ」と一喝

スペイン、ポルトガルや中南米諸国など計22か国で構成するイベロアメリカ首脳会議がチリの首都サンティアゴで8日から10日まで開催され、毒舌で知られるベネズエラのチャベス大統領が、スペインのアスナール前首相を「ファシスト」と繰り返し非難、業を煮やした同国のフアン・カルロス1世国王が「黙れ」と一喝する場面があった。

スペイン国営EFE通信などによると、チャベス大統領は会議中、ベネズエラで2002年に起きたクーデター未遂事件について、アスナール前首相が計画を支援していたと非難。前首相は会議に出席していなかったが、大統領はさらに中南米の問題に何度も干渉したとして、「蛇の方がまだ人間らしい」などとこき下ろした。

これに対し、会議に出席していたスペインのサパテロ首相が「相手に敬意を払うべきだ」と批判。大統領が、反論を求め首相の発言を何度も遮ろうとしたため、首相の隣にいた国王が激高、大統領を指さして「黙ったらどうだ」と一喝した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チャベス大統領、スペイン国王の一喝「黙れ」に謝罪要求

ベネズエラのチャベス大統領は、チリで開かれた首脳会議でスペインのフアン・カルロス1世国王から「黙れ」と一喝された問題について、「騒動の責任は国王にある」と述べ、国王に謝罪を要求し、同国との関係見直しも示唆した。

大統領は13日の地元テレビ番組で「私は(スペインのサパテロ首相と議論していたのであって)国王には何も言っていない。乱暴な口調で人を侮辱したのは国王の方だ」と強調。「両国の関係悪化を避けるためにも国王は謝罪すべきだ」と述べた。

また、14日の別の番組では「現在、スペインとの政治、外交、経済関係を大幅に見直している」と述べ、スペイン企業の活動監視を強める意向を示した。

チャベス大統領は10日の中南米諸国などによるイベロアメリカ首脳会議で、サパテロ首相と激しい言い争いになり、首相の発言を何度も遮ろうとして、国王から一喝された。

同大統領は当初、「国王と争うつもりはない」と述べていたが、一転して批判のトーンを強めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チャベス大統領、怒られても「私は黙らない」

「なぜ私を黙らせられないか? スペイン王室はラテンアメリカの先住民に500年間『黙れ』と命じ続けた。先住民は首を切られ、黙らせられてきたからだ」。ベネズエラのチャベス大統領は13日、先に開かれた会合の席上「黙りなさい!」と自らを一喝したスペインのフアン・カルロス国王を非難した。

 チャベス氏は10日、中南米諸国と旧宗主国のスペイン、ポルトガルによるイベロアメリカ首脳会議で、スペインのアスナール前首相を「ファシスト。蛇よりも非人間的だ」と厳しく批判した。「民主的に選ばれた首相に対し、敬意を払うべきだ」とクギを刺した同国のサパテロ首相に対しても文句を言い続け、業を煮やした国王から怒られた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


中南米諸国の、欧米からの自立を提唱するチャベス大統領。その姿勢故に各地で激突を起こしております。さてこのスペイン、ポルトガル、中南米諸国によって構成される「イベロ・アメリカ首脳会議」の席上で、チャベス大統領はスペインのホセ・マリア・アスナール前首相を誹謗するかのような発言を行っておりますが、アザディスタン王国第一皇女マリナ・イスマイール様(24)とはなんの関係もございません。名前こそ似ていますが、アスナールさんはおっさんですよ?(えー

マリナ様は公式サイトのキャラクター紹介に寄れば、2007年11月15日現在で、アザディスタン王国第一皇女と紹介されております。王女ではなく皇女なのには何か意味があるのか、それとも種公式で連発された只の誤字なのか。二つの単語は意味が異なっており、それらからアザディスタン王国の内情を推察する事が出来るかもしれません。

王女:「国王」あるいは「王と同様の君主」の娘。

皇女:天皇の女子を指す呼称。転じて、
   日本以外の国の「帝王の女子」を呼ぶのにも用いる。


「第一皇女」の表現が正しい物ならば、アザディスタン王国は皇帝が存在していることになりますが、それならば王国ではなく帝国ではないか? という疑問が生じます。4話で「議会は王制を復活させた」という発言があるので「王女」の間違いなんじゃないかなー。

ついでに、王女を姫と呼ぶことがありますが、姫は大名等の娘にも使われる呼称なので「王女より格下」であり、正しい用法ではないそうですが、当サイトで誤用されていても気にしないでください、可愛いは正義!(真理

さて、ついでに国名についても追求してみましょうか。「〜スタン」という国や地域は中東に多く見られる名称であることはご存じかと思います。ざっと取り上げると、パキスタン、バルチスタン、アフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタン、カザフスタン、トルキスタン、タタールスタン、バシコルトスタン、タゲスタン、クルディスタンなど。由来については諸説ありますが、おおよそペルシャ系の言葉で「スタン=国・地域」と訳されます。アザディスタンの前半は恐らくAzad(アザド=自由)なので、アザディスタンとは自由の国という意味になります。ついでに王国(Kingdom)まで付いているので「自由の国王国」という二重表現になってるような気もしますが、どうにもならないので諦めましょう(えー
「王国」表記は王制が敷かれてる事を強調したかったのかな?


さて、毎度イントロだけで半分ぐらい語っているような気がしますが、マリナ様がエネルギー援助を取り付けるため諸国漫遊に出かけたところで話はガンダムに戻ります。今回の舞台は地上1万kmの上空。人革連の低軌道ステーション付近で行われる(対ガンダム)新型MSテストを巡る事件が起こります。



ソレスタと軍人の闘いばかりでは潤いがないためか、一般人代表としてサジ&ルイスも舞台に上がります。この時代は高校生が奨学金で宇宙へ研修へ出かけてしまえます、今で言えばちょっと割高な海外旅行気分でしょうか。しかもお金持ちのルイスお嬢様の要望によりわざわざ個室となりました。ブラコン姉さんとしては、金髪娘に大切な弟が喰われてしまうんじゃないかと気が気ではありません。小生意気なビッチを口汚く罵りたい所ですが、弟の手前そんな事はできない姉なのでした。

エレベータ内はリニアトレインで上昇していきます。なぜリニアかと言えば、当然ながら太陽光発電による電力を利用できるからです。また降下時に物理接触によるブレーキはまず使えないので、磁力で制動をかけられるリニアという形態になるのです。何万kmもの移動ともなれば必要な電力も膨大なものになりますが、心配は要りません。上昇に従いリニアは位置エネルギーを獲得できるので、下り時にそれを別のエネルギー変換してやれば、元は取れる計算です。

さて、リニアは初期加速の終了後、緩やかに減速する事で擬似的な無重力になるそうです。しかし宇宙だから重力が無いんだな、と解釈するのはちょっと待って欲しい。軌道エレベーター(上り)内ではその構造と理論上、無重力ではないはずなのです(後述)。ここが地球ではない事を表現するための演出かと思いますが、SF考証担当の千葉智宏・寺岡賢司がミスったんでしょうか。しかしルイスがスカートの中身を見せつけるための英断であったと思えば悪くないぜ黒田洋介脚本(えー



同便にて人革連のセルゲイ中佐と、芸人一号ソーマ少尉もステーションへ向かいます。特に会話の無い二人。しかし芸人であるソーマ少尉は芸人計画の為に生み出されたデザインベイビー。場を盛り上げなければ生きていられないという使命を帯びています。中佐に一発芸を提案しますが、即座に却下されました。
生まれたときから単一目的の為に生み出されたまさしくコーディネイターのソーマ少尉。さらにナノマシン改造により、宇宙環境下での長時間芸能活動が可能となっています。凄いぞ、ソーマ・オッパッピーリス少尉!(誰だよ

人革連が用意した芸人用カスタム機、ティエレンタォツー。パッと見、サクラ大戦の光武っぽい。あるいはデス種の忌まわしきピンクザクを彷彿とさせるカラーリングですが、あれもラクス・クライン(偽)のコンサートに特化した芸能活動機だったので、これはこれで間違っていないかもしれません(ぉ

しかし、セルゲイ中佐は気に入りません。芸人機関の研究員に「自分達がやっている行為を何とも思わないのか」と問いただしますが、ソーマちゃん萌え萌え研究者集団の趣味丸出しオタトークには敵いませんでした。「自分で見た物しか信じない」は中佐の信条ですが、「自分が見た物でも信じたくない」気持ちはあるようです。

セルゲイ・スミルノフ中佐(43)。私は常々、本作のライバルキャラ年齢設定は巧みであると考えていました。1979年の機動戦士ガンダムスタートから2007年で28年。アムロ・レイ(15/16歳説も)の活躍を見守った当時15歳の少年達も、今では43歳前後となります。即ち、ファースト世代=セルゲイ世代となり、今や中年となった往年のガンダムファンの心のツボを刺激してやまないのが人革連コンビなのであります。一方でグラハム・エーカー(27)、コーラ沢(28)は1995年前後の平成ガンダム世代だと言えるでしょう。1993年放映のVガンダムの主人公ウッソ・エヴィン(13)や1995年放映のガンダムWの主人公達(15)を見つめていた少年達は現在、グラハム前後の年齢となっております。若い兵ばかりが登場し、安易にガンダム台詞を言わせる事でガノタの神経を逆撫でしていた種とは異なり、旧ガンダムファンへのアピールが巧いなと感心しています(今のところは)。

セルゲイ中佐ってばソーマ少尉を指して「彼女はまだ処女(おとめ)だ…」なーんて呟いてましたが、どうやって確認したのかしら、きゃっ♪ 大丈夫だよ中佐、どんなにロリっぽくても設定上18歳だからね、遠慮しないでゴーゴー!(待て



個室でイッパツ一息ついたサジ&ルイスは、露出プレイへと走ります。無重力プレイでも満足しなかったか!
ステーションはその全長が未だ明らかではありませんが、この低軌道ステーションで高度1万kmというので、延長端はさらに果てまで続いている事が推測できます。そこでサジ達の研修を担当するのはホルス・アッサン。Vガンダムのクロノクルっぽからきっとシスコン(えー

低軌道ステーションのリングは内部に磁性流体を回転させ、作り出した遠心力でステーション全体を軌道高度に留めているそうですが、この辺の理屈はよく分かりませんでした、教えて物理の偉い人ー!

先程、リニア内で無重力が発生していたため宇宙=無重力と認識してしまいがちですが、軌道エレベーター内では特定の場所でしか無重力とはなりえず、常に地球に引かれています(微重力の存在)。この辺りが従来のガンダムシリーズとは違った舞台設定で面白いです(詳しくは後述)。



さてさて、新型MS性能実験の監視にやってきたアレルヤですが、こんなにノンビリやって来てちゃテストに間に合いませんよ?もっとも初めから近づき過ぎては、今回のエピソードが成り立たなくなった為と思われますが…。

低軌道ステーションに降り立ったアレルヤは、奇妙な感覚にあい、頭痛に悩まされます。ガンダムファンにはお馴染みである精神感応現象の一種に見えますが、ハレルヤは突如として別人格が表層に出現。髪の分け目も逆になって性格も凶暴化しちゃいました。募ったイライラのぶつけ先も見あたらず、虚空を睨み付けて「てめー殺すぞ!」と叫ぶアレルヤ(?)。助けておまわりさーん!

「殺すぞ」宣言を脳内でダイレクトキャッチしてしまったソーマ少尉は錯乱状態に。声が聞こえた方向(ステーション)へ、模擬弾を打ち込みます、ヤベェ。

よくよく見れば、アレルヤは左右の目の色が異なっていませんか?いつもの左目はグレイ系だと記憶しているのですが、このたび露出した右目はソーマ少尉と同じ金色。公式設定にある「孤児であった幼少時代を人類革新連盟で過ごす」と合わせて考えると、両者には何らかの繋がりがあるのかという推測が立ちます。



セルゲイ中佐は暴走したティエレンタォツーを取り押さえましたが、重力ブロックの一部が分離して地球へ落下を始めるというアクシデントが発生。たまたま内部にいたルイス達も5話で退場です、さようならビッチ(暴言

「事故か・・あははは、ご愁傷様だな」と冷笑を浮かべるアレルヤ(?)。いつもの大人しい人格と脳内会話している様子から推察するに、以下のように仮定しておきます。


左分け・気弱・温厚=アレルヤ(いつもの人)
右分け・凶暴・冷徹=ハレルヤ

突如挿入された回想シーンからは、過去に事故か何かでアレルヤ(達?)が宇宙を漂流した事が読みとれます。幼き日の彼と思わしき少年は「嫌だ死にたくない!」と叫んでいますが、これは一体誰なのでしょうか? 単純に少年アレルヤと判断はできません。アレルヤが最初から多重人格でなかったとすれば、アレルヤとハレルヤという人間が存在していたと考えられるからです。

宇宙漂流が事故として起こった場合、救助に時間が掛かれば掛かるほど、人間が生存するために必要な物質(食料や水、酸素)が不足する事態が発生します。「冷たい方程式」とも呼ばれる図式ですが、イレギュラーな事態に対して人間の「緊急避難」の是非が問われる状況です(参考:カルネアデスの板)。二人とも死ぬよりも、一人が生き残る事を優先させたとしたら?

「俺を殺せ、アレルヤ……」

回想シーンで死にたくないと言う少年は髪が右分けなので、上の仮定に従ってハレルヤ少年としましょう。となれば、ハレルヤ少年に呼びかけたのは、アレルヤ少年(仮定)だったのでしょうか。もしも一方の少年が生き残る過程で、もう一人の少年が死亡していたとしたら……。その時に起きた悲劇(なんだろうね?)を緩和するために、アレルヤ(もしくはハレルヤ)が相手の人格を抱え込むことになったのかもしれません(予想)。

アレルヤ・ハプティズムは、基本的に穏やかなアレルヤを主人格としていますが、本当にこの肉体がアレルヤの物かは疑わしいです。なんとなくですが、アレルヤの髪型は無理矢理左分けにしている気がしませんか? ハレルヤ時の右分けの方が、髪の流れは自然に思えるのですが。そして回想シーンでの右分けの少年は、なぜモノクロ映像だったのか? 答えは・・・「現段階で視聴者に、瞳の色を見せないため」ではないかと。

切り離された重力ブロック内は、遠心力が無くなった為に無重力状態になっているようなのですが、これにも科学的疑問が…(後述)。



地球へと落下していく重力ブロック。普通なら落下を開始したとしても地球まで1万kmもあるのでかなりの時間的余裕があるのですが、爆発の衝撃+空気の流出によるブレーキが大きかったのか、重力圏へどんどん引き込まれていきます。救助隊の到着を待っていては、間に合いません。「限界離脱領域」にまで高度が下がれば、もはや落ちるしかないのです。落ちないためには速度を上げてやるしかない。中佐はティエレンでブロックに取り付き、必死で押し上げます。ですが、第7区画の質量、落下速度、ティエレンの出力、残りの燃料、限界離脱領域までの距離・・・それらを総合すれば、やってみるまでもなく計算結果が弾き出されてしまうのが宇宙空間。

「宇宙(そら)は何故にこうも無慈悲なのだ…ッ」

そこへ駆けつけたのはガンダムキュリオス。上半身のみを変型させ、重力ブロックを押し上げていきます。逆シャアを彷彿とさせる素敵シーンですが、どうにもカエルっぽいキュリオスの下半身が気になって仕方のない私。

監視任務の枠を逸脱したアレルヤの行動。ソレスタの理念は「戦争の根絶>人命救助」なので、ここで二百人が死に瀕していようとも、行動理由にはならないはずでした。しかし、幼き日のアレルヤの体験は、それを許しませんでした。

「あなたには分からないさ。宇宙を漂流する者の気持ちなんて」

出力全開で重力ブロックを支えるキュリオス。ですが、GNドライブの力を持ってしても、落下は止まりません。中佐がとったデータと、重力ブロックの質量と落下速度を合わせれば、人格連はキュリオスの限界出力を知る事になると思われます。うーん、それはちょっとマズいね。

キュリオスもこのまま海の藻屑かと思ったその時、ビームが重力ブロックの一部を吹き飛ばしました。デュナメスが高濃度圧縮したGN粒子ビームで射撃したのです。いくらブロックが地球へ近づいてると言っても、数千kmレベルの狙撃ってどんだけー。100m先の目標に対して1mmしかズレない射撃が出来たとしても、10,000km先では100mもズレてしまいます。さらに大気の揺らぎも計算に入れなければいれません。デュナメス恐ろしい子! 次のスパロボで00とEVAが共演したら、宇宙空間の使徒もガンダムで狙い撃つ!

2度の超々距離狙撃によって、3つの重力ブロックは1ブロックに減少。キュリオスも救助艇が到着するまでの時間を稼げたので、揚々と引き上げました。めでたしめでたし、とは終わりません。(今回も出番がなかった団子ガンダムの)パエリアはお怒りです。

「ヴェーダが推奨したミッションを放棄し、人命救助を優先させるなんて。しかもデュナメスの高々度砲撃能力まで世界に晒してしまった」

ソレスタの理念を体現できないヤツは乗せるべきじゃないと主張するパエリアですが、スメラギさんはお前のファッションセンスもどーなんだと心の中で突っ込みました。サジとルイスのラブコメは省略。



〜解説:軌道エレベーターと重力〜
さて、00特有の設定である軌道エレベーターの成り立ちと、重力について解説する、私だけが楽しい時間がやって参りました。アニメ誌の設定とか全然見ていないので、あくまで画面や台詞から推測できるデータによって組み立てられた話ですので、間違ってたら教えて物理の偉いひとー。



まずこちらの図をご覧下さい。これは地球と、一般的な人工衛星軌道、低軌道ステーションの位置関係を表したものです。地球の赤道面直径は12,756kmなので、軌道エレベーターは地球の直径よりも長い図となります。アムロ声のナレーションが、軌道エレベーターの総延長は50,000kmと説明していました。これが3勢力の保有する3基の合計距離だとすると、1基の長さはおよそ16,600km程度になるのですが、それでは軌道エレベーターは存続できそうにありません(下で説明)。恐らく1基の総延長が5万kmなのでしょう、人類まじすごい。

軌道エレベーターの動きを見る前に、人工衛星について触れておかねばなりません。人工衛星は宇宙にありながら、なぜ地球に落ちてこないのでしょうか? 宇宙は無重力だから、という答えは不正解です。地球には巨大な引力があるので、ただ宇宙空間に浮いているだけの物体は重力の井戸に落ち、大気との摩擦で燃え尽きます。人工衛星も地球の引力に引かれ、実際は落ちている、いえ落ち続けていると言う方が正しいでしょう。人工衛星はその移動速度が速すぎるため、地球に引かれて落下するカーブが地球の曲率と同じになって釣り合っているのです。そのために人工衛星は落ち続けているのです(ずっと自由落下状態)。

この、人工衛星化する速度は「第1宇宙速度」と呼ばれており、地球の場合ですと約7.9km/sが必要です。この速度で物を放り投げると、大抵の物は人工衛星になってしまいます。ただし地表近くを飛んでいては、大気との摩擦熱で燃え尽きるので、大抵の人工衛星は高度数百km以上を飛んでいるわけですネ。

つまり「この速度を下回ると、地球の引力に掴まって落ちる」と理解してください。

人工衛星の速度は地表からの距離によって異なるため、高度10,000kmの軌道を周回する場合に必要となる人工衛星の速度は以下のように計算できます。

V=(398600/(6378+H))^(1/2)

H=10,000を入力し、V≒4.93km/s

参考:宇宙航空研究開発機構JAXA

分かり易く時速に直すと、17,748km/h。地表数百kmを周回している衛星よりは遅いですが、それでもこのマッハ14.5相当の速度が必要です。

さて、低軌道ステーションはどのぐらいの速度で回転しているのでしょうか。低軌道ステーションは高度10,000kmにあります。地球の半径が6,383kmですから、半径16,383km(直径32,766km)の円周を24時間で回転していることになります。ちょっと計算してみましょう。直径32,766kmなので円周率およそ3……ゲフゲフン……3.14をかけまして、移動円周102.885km/day。24時間で割って、4,287km/hという速度が出ました。

低軌道ステーションの速度: 4,387km/h
同じ高度で必要になる速度:17,748km/h

通常、ステーションは磁性流体などの機構によって落ちないことになっていますが、今回の事故のように切り離されてしまうと、上の計算結果が示すように、明らかに速度が足りないために地球の引力によって落下していくことになります。



次の図で、今回のミッションをおさらいしてみましょう。落下を始めた3つの重力ブロックは、オレンジ色のライン(低軌道ステーションの周回高度)より内側へと落下していきます。図内に黄色のゾーンで示した範囲が限界離脱領域とすれば、これ以下に落ちればアウトです。地上からの砲撃により切り離した1ブロックのみをキュリオスは加速させ、なんとか持ちこたえました(恐らく乗客救助後のブロックは再び落下していったと思いますが)。



最後の図は、軌道エレベーターの全貌予想図です。軌道エレベーターは一種の静止衛星です。静止衛星というのは、人工衛星の中でも特殊な高度にあり、地球を1日に1回転しかしません。つまり、地球から天を見上げれば、常に同じ位置に見えます。気象衛星などがそうで、24時間常に日本周辺を撮影してデータを送ってくれていますね。軌道エレベーターも同じです。地球と同じ速さで回転してくれなければ、エレベーターは折れてしまいます。そのため、エレベーターは地球に合わせて回転している必要があります。
軌道エレベーターは地球の引力と、回転による遠心力を釣り合わせることで立っています。しかし、どの位置でも両者の力が釣り合っているわけではありません。遠心力と引力が釣り合うポイントは、静止軌道高度のみとなり、ここでしか無重力は生じません。それより内側35,786km以下のエレベーター内では引力の方が勝っており、そのため常に微重力が存在しているのです。

サジたちのリニアトレインが減速した際に無重力が生じたシーンについてはイマイチよくわかりません。上方向への慣性力がブレーキ力と釣り合ったのかもしれないですが、微妙なところ…?(判断材料の不足です)

また、この図で示したように低軌道ステーションあたりでは引力の方が勝っているので、落下する重力ブロックが無重力になるかどうかも微妙です。自由落下状態になれば、大気圏内でも無重力を体験することが出来ますが、今回のミッションではすぐさま自由落下状態になっていたとは考えにくく、疑問が残りました。

以上。












ひとつだけ聞いていいかしら。
なぜこのレビューを引き受けたの?



・・・決まっています。わたくしにしか出来ないからよ。


第6回へつづく

戻るTOPへ

 

inserted by FC2 system