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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第十話

 

〜2−D終礼直後・将姫〜

今日の授業がやっと終わった・・・数学も英語も勘弁して欲しいよ。
任務とはいえ、ツライ。
さてと、演劇部に見学に行く約束をしてたんだったっけ・・・
などと思い出したところに園田さんが話しかけてくる。

「さぁて、部室に行ってみよう!」

「はは・・・ちゃんと覚えてるって、
 逃げも隠れもしないから先行ってて。ちょっと電話するから。」

「うん・・・あ、先生に見つかったら取り上げられるから気を付けるべし。」

「わ〜ってるって、ありがと。じゃ後でね。」

さてと、物陰に隠れて雪姫に電話しよう。

プルルルル・・・・

「・・・・はい、もしもし?」

「あぁ、ユキ?わたし。ちょっと用事できちゃってさ・・・
 なるべく早く切り上げるからホント悪いんだけど、
 それまで一人で探索しててくれないかな・・・」

「・・・わかった。あと、5時に武道館の裏に来いって手紙を受け取ったの・・・
 だから、それまでに武道館裏に潜伏していて。」

「はぁ?!誰から?」

「・・・わからない。わからないけどおそらく先方が接触を図っているのでしょう。」

「それっぽいね。あっちから来るとは良い度胸してんじゃないのさ。
 わかった、あわよくばふんづかまえてシバきあげるわよ。」

「・・・・あちらも無策では来ないと思うけれど・・・それじゃ、後で。」

「わかった、じゃあね。」

さてと、演劇部に行こう!

 

西の階段で一階まで降りて、そのまま直進すると、
文化部室の集まった建物に通じる渡り廊下に出る。
建物に入ってけっこう奥の方にあるのが演劇部だ。
ドアをノックするとすぐにドアが開いた。

「はい・・・あ。いらっしゃい、待ってたのよ。」

昨日会った部長の・・・そう、水田七瀬さん。
少し冷たい印象を受けるけれど親切な人だ。

「あ、昨日は失礼しました。
 今日はちゃんと見学させてもらいますので、宜しくお願いします。」

礼儀正しく挨拶する私。

「こちらこそ、園田さんが無理矢理引っ張ってきたみたいになっちゃってごめんなさい。
 さあ、中へどうぞ。」

「おじゃましま〜す。」

中に入ると、他に男女が5名ほどいた。
私が会釈をすると、みんなそれぞれ「ようこそ」とか「ゆっくりしていって」とか言ってくれた。
園田さんは、、、いない。

「あれ、園田さんはどちらへ?」

「あぁ、今、二年生は、みんな外で発声練習をしているの。もうすぐ帰ってくると思うけど。」

「あらら、そうだったんですか。発声練習って、やっぱり毎日するんですか?」

「もちろん!基本だもの。」

うぅん。演劇の修行も基本が第一なんだね。

「で、私たち三年生は部活動紹介のネタを考えてたんだけど、
 どうも良いネタが浮かばなくてみんなで悩んでいたところなんだよね・・・。」

「た、大変ですね・・・。」

そういえばみんな真剣な顔をして考え込んでいる。

「せっかく見学に来てくれたのに、こんなんでごめんなさいね。
 私も今日あたり部活動紹介の練習に入れると思ってたもんだから。
 退屈だったら園田さんが戻ってくるまで
 お茶でも飲みながらなんかその辺のを読んでいて。」

そうだね、まだ時間もあるし、園田さんと顔も会わせないで帰るってのもなんだし。

「そうさせてもらいます。」

「ホントにごめんね、あっちの本棚にあるものは自由に見てもらって良いから。
 冷蔵庫の中にある飲み物も好きなのを飲んでね。」

「はい、ありがとうございます。」

私は本棚を物色し始めた。
本は発声法の初歩について書かれた本からシェイクスピアまであった。
どれも私の趣味じゃないなぁ。
他は台本しかない・・・ざっとタイトルだけ眺めても、
『逆光少女』『犯罪心理学』『センチメンタルアマレットポジティブ』
『ウェディング・メロン』などなど・・・
むむぅ・・・タイトルだけじゃどんな内容なのかまったくわかんない。
タイトルを見てるだけでも時間を潰せるのがすごいね。

振り返ると三年生達はなんか熱心に、ときには動作を交えながら話し合っている。
その様子を見ているのもおもしろいといえばおもしろい。
・・・どんなネタなのかはやっぱりわからないけれど。

そんな三年生達の挙動を観察していると、ドアをノックするのが聞こえた。
けれど、三年生達は話し合いに熱が入りすぎて誰も気づいていないようだ。
なんだか、みんな本質的に園田さんと変わりないような気がする・・・大丈夫かな?

「はい、今開けまーす。」

しかたがないので私がドアを開けてみる。(本棚の側にいる私が一番ドアに近いし。)
ドアを開けると、そこには一人の女の子が立っていた。

「あっ、すいません。水田さんはいらっしゃいますか?」

え〜っと、部長さんのことか。

「はい、います。ちょっとまってくださいね〜・・・」

あぁ〜、なんか熱く語り合っておられる・・・。
こりゃ近くまで行って話しかけないと気づいてもらえなさそう。

「ちょっと待っててくださいね、呼んできますから。」

と言って私が呼びに行こうとすると女の子が口を開いた。

「あ、なんだか取り込んでるみたいだからいいです。
 演劇部からお借りした本を返しに来ただけですから。
 この本を水田さんに渡しておいていただけますか?
 私は文芸部の長谷川っていいます。」

そう言ってなんかごつい本を差し出してきた。

「はい、わかりました。渡しておきますね。」

「お願いします。ところであなたは新入部員ですか?」

長谷川さんが人の良さそうな笑顔を浮かべて聞いてきた。

「え?いや、ただの見学者です。」

「あ、ごめんなさい。演劇部員とはみんな顔見知りなもんだから、新入りさんかなって。
 それにしても、演劇部は活気があってホントに良いですね。
 それじゃ、本のことよろしくお願いします。」

「あ、はい、わかりました。それじゃ。」

長谷川さんは会釈してから帰っていった。
なんだか立ち居振る舞いがおっとりした感じで穏やかそうな人だなぁ・・・
なんて考えていたらガヤガヤと人の集団の気配がした。
どうやら二年生が帰ってきたみたいだ。

To be continued...

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