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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第二十話

 

〜校内・将姫〜

みんなに囲まれちゃって、どうしたものかと考えていたら、
下駄箱に寄りかかっていた女の子がこっちにやって来ておずおずと話しかけてきた。

「あの・・・すいません、雪乃、どうかしたんですか?」

「あれ?雪乃の友達?」

「はい、同じクラスの秋山由美子です。さっきの放送は一体なんなんですか?」

雪姫のヤツ、ちゃんと友達できたんだ。姉さんうれしいぞ。
って、そんなこと考えてる場合じゃない。

「わからない、それを調べに行くところ。」

「そうですか・・・ホントにこの学校、どうなっちゃったんでしょう。
 私、合唱部なんですけど、いつものとおり音楽室に集まったら突然、
 壁に貼ってある音楽家の肖像画の目が動いたり笑ったり・・・
 それで・・・それで・・・ピアノが勝手に鳴り出したりしてみんな慌てて逃げてきて・・・・」

秋山さんの顔がみるみる蒼白になっていく。
やれやれ・・・いろんなところでベタな怪奇現象が起こってるみたい。
さてと、いつまでものんびりしてられない。

「おじさん、この学校で放送が出来るところってどこですか?」

「あぁ、事務室と職員室にマイクがあります。あとは二階の放送室ですね。」

放送を使ったってことは、そのうちのどこかに敵がいるってことだ。
もっとも、これだけ変な事ばかり起こってるんだから怪しいもんだけど。
事務室と職員室は一階なんだから・・・すぐそこに見えてる部屋だね。

「じゃ、とりあえず事務室と職員室を見てみようよ。おじさん、事務室に一緒に来てください。」

そう言って私は事務室に向かう。おじさんもうなずいて後からついてくる。

「わたしが開けましょう。」

おじさんが硬い表情でドアノブに手をかけた。

「ありゃ、ダメだ開かないっ」

おじさんは一生懸命ドアを引っ張るけど全然動かないみたいだ。

「ダメみたいですね・・・じゃ、職員室はどうかな・・・」

職員室の方をみると既に理奈達がドアの前に立っていた。
こちらを見て首を横に振っている。

「と、なると放送室か・・・二階に行かないとダメね。」

するとおじさんがドアの前で息を切らせながら答える。

「ゼィゼィ・・・そ、それじゃ・・・・・い、行ってみましょうか。」

「そうだね。それじゃ、北東の階段とやらから行ってみますか・・・」

北東階段には職員室の前を通らなくてはいけないので、
私たちは理奈達の方へ行って声を掛ける。

「職員室も開かないのね?じゃ・・放送室に行ってみようか。」

部長さんがそれに答える。

「えぇ。この分じゃ放送室も閉まってるような気がするけれど・・・
 ここにいてもしかたがないし、行きましょ。」

結局、おじさん、演劇部トリオと一緒に北東階段に向かおうとすると、
さっきの雪姫の友達もこっちにやってくる。

「私も連れて行って下さい!」

うぅん・・・たぶんこの子は止めても五階まで行っちゃうだろうな。一緒にいた方が安全かも。

「うん、わかった。一緒に行こう。」

 

私たちは北東階段を上って二階にやって来た。
だけど、シャッターが閉まっている。

「あれ、閉まってる。」

「放送室には行けないみたいね・・・・・・!?」

突然シャッターが開き始めた。

「どうやら来いってことみたいね・・・。」

部長さんがポツリと言った。
おじさんが険しい表情で言う。

「行くしかないでしょう。」

みんな無言で頷きあい、二階に踏み込んだ。
廊下に出て放送室に向かって歩く。正面にはシャッターの閉まった南東階段が見える。
いよいよ放送室の前にやって来た。
わたしは早速ドアノブに手をかける。

「・・・開けるよ。」

みんな固唾をのんで見守っている。
ノブをまわし、押してみるとドアはあっさりと開いた。
慎重に中の様子をうかがうが、誰もいないようだ。
おそるおそる部屋に一歩踏み込む。全神経を室内に集中して気配を探る。
・・・やはり何もいないみたいだ。
私は後ろを振り返ってみんなに声を掛ける。

「誰もいないみたいだよ。」

しかしなんの反応もない。変だな。

「みんな、誰もいないよ。上に行くしか・・・・・」

みんなうつろな目をしている。昨日の武道館で私と雪姫を囲んだ連中と同じだ。

「ちっ、しまった・・・。」

しかしおかしい。人を操るアイテム使いが敵にいることは確かだが
、術者はどこにいるんだろう。
わたしが放送室の中に気を取られている一瞬でみんなに影響を及ぼすなんて。
素早くみんなの脇をすり抜けて廊下に出て距離をとった。
けれどみんなは動かない。いぶかしく思っていたら次の瞬間。
みんなバタバタと倒れ始めた。

「なっ・・・。」

術者は全員に眠るように指示を出したようだ。

「いったいどういうこと・・・。」

するとまた放送が入る。さっきと同じ声だ。

「さぁ、矢部雪乃さんが五階でお待ちですよ。
 御劔翔子さんお一人でお越し下さい・・・ケッケッケッケッケッ・・・。」

なるほどね、そういうことか・・・。
私はみんなをそこに残して北東階段に向かった。
大がかりなことしやがって。ただじゃおかないからね。

 

To be continued...

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