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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第二十三話

 

〜夜の公園・?〜



今ごろ学校の方はどうなっているだろうか・・・。
まあいい。私の方もそろそろ『狩り』をしなければいけない。
あちらはあの三人にまかせておこう。

親に気づかれないように家を抜け出した私は、家から離れた広い公園にやって来た。

人の気配はない。
今日の獲物はここで探そう。。

私の手には剣が握られている。『嵐の魔剣』・・・この剣の名前だ。
真っ黒な刀身には不気味な模様のような文字がびっしりと刻み込まれている。
刃が月明かりに照らされて鈍い光を放つ・・・。

かつて、この剣の所持者は最愛の人を自ら手にかけねばならなくなったという。
「従妹殺し」「魂の盗人」など、数々の汚名を背負ったそうだ。
所持者は剣の邪悪な意志に翻弄され、数奇な運命をたどることになる・・・。

これを手にしたことで私の運命も大きく変わったに違いない。
本当にこれで良かったのかと思う時もあるが、もう後戻りは出来ない。

・・・足音が聞こえる。どうやら一人のようだ。
今夜の獲物がやって来た。
足音がだんだんと近づいてくる。
静かに剣を構え、相手が間合いに入るのを茂みに潜んで待つ。

その時、向こうの茂みからガサガサと音がしたかと思うと足音が止まる。
「・・・だれ?」
若い女性の声だ。私の他にも潜んでいた者がいるのだろうか。

息を潜めていると、またガサガサという物音が聞こえ、声がする。
「きゃっ・・・・・・・・んんっ!!!」
悲鳴が何やらくぐもった声に変わる。
何かが起きたようだ。

茂みの影から様子を見てみると、
女性−−−おそらく最初の足音の主−−−がナイフを持った男ともみ合っている。
女性はどうやら口を押さえられているようだ。

私は飛び出していってその場に駆け寄る。
二人ともこちらに気づいて一瞬動きを止める。
それにかまわず私は一気に間合いを詰めて刃を突き立てる。
嫌な感触が手に伝わってきた。


・・・剣は女性の左胸を正確に貫いた。
女性はあっけに取られたような表情で自分の胸に突き刺さった剣を見ている。
いや、見ていると言う表現はおかしいかもしれない、女性は既に絶命しているのだから。

がくりとへたりこむように崩れ落ちた女性から剣を抜く。
剣を通して体に力が流れ込んでくるのを感じた。
これでしばらくは狩りをする必要もないだろう。

そして、その場には一部始終を見て
一言も発することが出来ずにへたり込んでいるナイフを持った男がいた。
ガリガリにやせた貧相な男だ。
怯えた目でこちらを見ながらパクパクと口をうごかしている。

私はその男の喉元に剣先をつきつけて話しかけた。

「・・・あなた、ひょっとして噂の連続通り魔なの?」

男は何もいわずに剣先を見つめながら震えているだけだ。
剣先をぴたりと喉に押し当ててさらに問う。

「・・・違うの・・・?」

「そ・そそ・・・そうだ。。。」

男がようやく小声で答えたので、私は剣を引いた。

「で・・・でもオレは・・ま、、まだ3人しかやっちゃいない・・・
 な、なのにニュースじゃ8人も殺したことになってやがるんだ!
 あ・・・あんたか!?後の5人はあんたが!?」

私はもういちど剣を突きつけると男は再び黙り込んだ。

「・・・静かにして。・・・そう、あなたの言うとおり。5人は私が狩った・・・。」

男の顔が恐怖で歪む。

「怖がらないで、あなたを殺すつもりはないから・・・。
 そのかわり・・・あなたはこれまでとおりに通り魔を続けること・・・。
 もし、やめたなら次の獲物は・・・。」

「わ、わかった・・・わかったから剣をひっこめてくれよ。」

私は男の願いを聞き入れずに続けて言った。

「・・・もう一つ・・・私とゲームをしましょう。」

「げ・・・ゲーム?」

頷いて私は続ける。

「・・・あなたと私、どちらかが警察に捕まるまで通り魔を続ける。
 先に警察に捕まったほうが全ての罪をかぶる・・・。」

「そ・・・そんな無茶な・・・」

剣先を押し当てて、不平を言いかけた男を黙らせる。

「・・・あなたに拒否権は無いの。もし約束を破れば、たとえあなたが刑務所の中にいても・・・
 死刑になったほうがマシと思えるような死に方をしてもらうから。わかってもらえた・・・?」

「わ・・・わかったよ・・・だからもういいだろ?」

私は無言で剣を引いてやった。
すると男は一目散に逃げていった。
これでしばらくは周囲の目をごまかすことができるだろう。

我ながらとんでもないことをしているな、と思う。
だけどやめるわけにはいかない。

もし、私を止めることができる人がいるとしたら・・・

「・・・あの子なら、私を止めてくれるのかな・・・。」



・・・少し物思いにふけってしまったようだ。
誰かに見られる前に私も立ち去ろう。

 

To be continued...

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