戻るTOPへ

 

著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第二十四話

 

〜日曜日・将姫〜

学校に閉じこめられた日から数日、やっと日曜日だ。
ウチの学校は土曜日も授業があるので久しぶりに昼近くまで眠ることが出来た。
お昼ご飯は雪姫がラーメンを作ってくれたので
それを食べてからテレビのチャンネルを一通り変えていって見たけど
日曜日の番組はおもしろくない。
ショウは新聞を読んでいるし、雪姫は居間でマンガを読んでいるみたい。
闇姫様は自分の部屋にいるそうだ。
退屈なので、散歩がてらコンビニにでも行くことにする。
今日はとても暖かくて、ちょっと暑いぐらいなのでアイス食べたくなったし。

「ねぇ、ちょっとコンビニでアイス買ってくる。雪姫とショウもなんかいる?」

居間にいる雪姫がちょっとこっちに顔を出してくる。

「・・・みぞれバー。」
「おっけー。ショウは?」
「抹茶。」
「了解。じゃ、行ってくるね。」

ダイニングを出ようとしたらショウに呼び止められる。

「まって。ハーゲンダッツじゃないとイヤだからね。」
「・・・ハイハイ。」

生意気なリスだ。

外に出てみると、やっぱり良い天気だ。春の日差しが心地よい。
コンビニはちょっと遠くて15分弱かかるけれど、散歩にはちょうど良いぐらいだ。
愚者の書庫は少々奥まったところにあるので表通りに向かって歩いていく。
その時、右手の方から何かがゆっくりと弧を描いて飛んできた。
キャッチしてみるとバトミントンの羽だった。
それと同時ぐらいに声がして羽が飛んできた敷地から女の子が出て来た。

「すいませ〜ん!・・・・あら?」
「あれっ?」

そう出てきた女の子を私は知っていた。

「こんにちは、この間はありがとう。」

その子はそういって微笑んだ。
え〜っと、文芸部の部長さんの・・・そう、長谷川さんだ。

「いえいえ。本はちゃんと部長さんにお渡ししましたから。・・・あ、これどうぞ。バトミントンですか?」
「えぇ。ちょっと思い切り打ちすぎる子がいて。ごめんなさいね、ありがとう。」

羽を手渡すと長谷川さんが出てきた敷地からわらわらと子供達が出てきた。

「おねえちゃん、羽は?」
「はい。あんまり思いっきり打ったらダメだよ、庭が狭いんだから。」
「は〜〜い。」

子供が羽を受け取ってまた敷地の中に戻っていった。
ここってよく見ると、教会だ。

「あのー、長谷川さんってクリスチャンだったんですか?」

バトミントンをしている子供の方を見ていた長谷川さんがこちらに振り返って答える。

「あははっ。実はそうなの。
 といっても、両親がクリスチャンなものですから成り行き上、って感じですけれど。」
「へ〜、でもなんか言われてみれば、長谷川さんってそういう雰囲気ですね。」

わたしがそう言うと長谷川さんはちょっと困ったような笑いを浮かべた。

「よく言われます。どういう意味かよく分からないんですけどね。」
「あっ!その、変な意味じゃなくて、穏やかな感じというかなんというか・・・」

ちょっと慌てて弁明する私。
長谷川さんはそれがおかしかったみたいで、くすっと笑って言った。

「悪気がないのはわかりますから大丈夫ですよ。
 あなたは・・・え〜っと、ごめんなさい、お名前伺ってませんでしたね。」
「御劔翔子です。」
「みつるぎさん、ね。御劔さんはこのご近所なの?」
「そうです、長谷川さんも?」
「私は両親と一緒に車で来ていますから。ちょっと遠いです。」
「車で、毎週来るんですか?大変ですね〜。」
「あはは、私は物心つく前からこうだからあんまり気にはならないのだけど。」
「ふえぇ〜、そんなもんですか。」
「ええ。そんなもんですよ。」

笑って平然と答える長谷川さん。そんなもんなのか。。。
って、おっと、コンビニに行くところだったんだ。

「あ、私、買い物に行くところだったんだ。すいません、失礼します。また学校で!」
「はい、お気を付けて。」

長谷川さんは手を振って見送ってくれた。

それにしても偶然ってあるもんだね。
さてと、ちょっと時間をくっちゃったね、急ごうっと。



〜教会前・長谷川直美〜



御劔翔子の姿が見えなくなるまで手を振ってやる。
姿が見えなくなってから、
ほっ、と溜息をつく。まさかこの近所に住んでいるとはね。
まさに奇遇というものだ。

「この間はなかなか楽しそうなことをやっていたわね?」

不意に後ろから声を掛けられる。
びくっとして振り返ると見たことのない女が立っていた。

「すいません、人違いじゃありませんか?」

わたしがそう答えても女はくすくす笑っているだけだ。
気味が悪い、こういうのには関わらないのが一番だ。
そう思って、わたしは会釈して教会の中に戻ろうした。

「黒の聖書・・・扱いには慣れたかしら?」
「!・・・あなたは?!」

まさか、この人は。

「ふふふっ、わたしよ、わたし。ま、あの時とは姿が違うから、気が付かなくて当たり前だけどね。」

そう、私に黒の聖書をくれた人物らしいが、あの時は私と同い年ぐらいの少女だった。
今は20代半ばぐらいに見える。顔も声も別人だ。

「えらい変わりようですね・・・気が付きませんでした。それで、何か用ですか?」
「五人目を決めたわ。これからアイテムを渡しに行くところ。それだけよ。」
「とうとう五人そろうわけですね・・・。」
「そういうことね。それじゃ、他の三人にも伝えに行くから。
この前は惨敗だったみたいだけど・・・ま、せいぜいがんばりなさいな。」
「ええ。言われなくてもね。」

それだけ言うと女は立ち去ってしまった。
いよいよ本腰を入れた闘いが始まるのだ、
そう思うと恐れと歓喜がない混じった感情がわき上がってくる。

「おねえちゃ〜〜ん!!おねえちゃんも一緒にバトミントンしようよ〜!!」

子供達に呼ばれて我に返った。

「は〜い、今いくからね。」

私は教会の敷地の中へと戻ることにした。

To be continued...

戻るTOPへ

inserted by FC2 system