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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第二十六話

 

〜廊下・雪姫〜



・・・・・。
すぐに立ち上がって当たりの気配を探る。
黒い影は見あたらない。気配も消えた。

由美子は何が起こったか分からないようで呆然としている。
「・・・怪我は?」
そう言って由美子に手を貸して立ち上がらせる。
由美子には怪我はなかったようだ。

「な、なに・・・?いったいなんなの?」
少し混乱しながら由美子も立ち上がる。
廊下にいた他の生徒達は呆然としていて、
しばらくすると教室の中からも生徒達がぞろぞろと出て人だかりになった。

「!・・・雪乃、怪我してる!」
「・・・えっ?」
よく見るとガラスの破片が手や足の数カ所を切ったみたいだ。
しかし、浅かったようでどれも大したことはない。
「はやく保健室に行かないと!」
「・・・大丈夫、大したこと無いわ。」
「ダメだよ!行きましょう。」
由美子に引っ張られるようにして保健室に行くことになった。


「先生!」
由美子が保健室のドアを開けた。
「ん?どしたの?」
30歳前半ぐらいの白衣を着た女が答えて言った。
どうやら養護教諭のようだ。

「この子、怪我してるんです。」
「ん?あらら・・・どうしたの、そんなに何カ所も?」
「さっき廊下で突然ガラスが割れて・・・」
「そう。どれ、見せて。」
私は怪我をした右手を差し出した。
「ふんふん。大したこと無いみたいだね。足も見るからちょっと座って。」
私は近くにあったイスに座った。

両足のふくらはぎ辺りに出来た傷を先生は念入りに見ている。
「うん、大丈夫。そんなに深くないよ。消毒してガーゼ当てようね。」
そう言って先生は脱脂綿にガーゼ、包帯を持ってきて処置をはじめる。
「大したこと無くって良かった・・・。雪乃、ごめんね、私をかばったせいで・・・。」
由美子が申し訳なさそうな顔をしている。
「・・・私が勝手にかばっただけ。気にすること無いわ。」

「ガラスが割れたって、どうして?」
先生が私の足に包帯を巻きながら聞いてくる。
「それが・・・何がなんだか全然。」
由美子は、あの黒い影に気づいていなかったようだ。
無理もないけれど。

「ふーん。よしっと。これで大丈夫だよ。」
「・・・ありがとう。」
「ありがとうございました。」
「あはっ、これが仕事だからね。他にけが人はいなかった?」
「たぶん、大丈夫だったと思います。」
「そ。それならいいんだけど。それじゃ、気をつけて帰りなさい。」
「それじゃ、失礼します。」
由美子が頭を下げる。わたしもそれにならって会釈をしてから保健室を後にした。

「・・・由美子、歯医者は間に合うの?」
「あっ!急がないと。いこ!」
私たちは早足で学校を出た。



〜文芸部室・長谷川直美〜



今日はうまくいった。
あえて面識のない方を狙って、
今朝から使い魔のインプに見張らせ、機会をうかがっていたのだ。

目的はこれ。
血の付いたガラスの破片。
突然ガラスが割れて起こった騒ぎに乗じて拾うことができた。

「上出来ね。」
そう言って、コウモリの羽を持つ醜い小人の姿をしたインプをなでてやると、
うれしそうにキィキィと鳴いた。
ガラスを割ったのはコイツだ。
使い魔は私と視覚や聴覚を共有しており、とても便利である。

この血を使えば、いろいろとおもしろいことが出来そうだ・・・。
早速帰って準備しよう。


To be continued...

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