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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第二十七話

 

〜自宅・長谷川直美〜



両親と弟が寝静まるのを待って儀式を開始する。
弟は普段、夜更かしするのだが、今日は飲み物に弱めの眠り薬を入れておいたのが功を奏したようだ。

空き缶に刻んだロウソクを入れて湯煎して溶かす。
この中に、学校で手に入れたガラス片にこびりついている血を削り取って入れた。
よく混ぜてこれに糸をたらし、固めてふたたびロウソクにする。

ロウソクが固まるまでにインプに取ってこさせたイモリとヒキガエルを殺して生贄にする。
私は正直、この手のモノが非常に苦手だけれど、
これを乗り越えなければ黒魔術などろくに使えやしない。

「ひえぇ・・・」「うぇぇっ・・・」
イモリやカエルをくびり殺すのについ声が出てしまう。
作業を終える頃には、私の目には涙が浮かんでいた。

それから必要なのは鶏の血と羽根。
これもインプに取ってこさせた。
これらを、黒い布を敷いた机の上に並べる。
紙に逆さに描いたペンタグラム(五方星)を置き、その中央に先ほどのロウソクを立てた。
ロウソクに火を付けた後、私は東に向かって呪文を唱えはじめた。

「ヘー・カァス ヘー・カァス エス・ティー ビイ・ベイ・ロイ・・・・・・・・・」

こうして儀式は始まった。



〜古書店・『愚者の書庫』の朝・将姫〜



目覚まし時計の鳴る音が聞こえる。
うぅん・・・朝か。
私は布団の中から手探りで目覚まし時計を探し当て、ベルを止めた。
掛け布団を勢いよくはねのけて上半身を起こす。
伸びをしてから起きて、布団を上げてしまう。
さて、朝だ朝だ、いつものパターン通り歯を磨いて顔を洗いダイニングに向かう。

「おはよ〜う・・・あれ?」
いつもは既に台所に立っているはずの雪姫がいない。
床にショウがグテッとだらしなく転がっているだけだ。

「ショウ、雪姫は?」
足でつつきながら尋ねてみる。
「うぅん・・・お・・・お腹へった・・・。」
このリスは情けない声を出すだけだった。

「だ〜か〜ら〜、雪姫は?!」
ショウを軽く蹴飛ばしながらさらに尋ねる。
「いててっ!やめてよっ!・・・まだ寝てるんじゃないの?」
「えぇっ?そんなバカな。」
雪姫は起きたい時間に起きることができるという特技の持ち主だ。
寝坊なんてありえない。
しかたがないので雪姫の部屋に行ってみる。

とりあえずドアをノックしてみたが返事がない。
「雪姫〜、そろそろ起きないと遅刻しちゃうよ〜?」
やっぱり返事がない。おかしいな。

「雪姫、入るよ?」
そういってドアを開けると、雪姫はまだベットに入っていた。
マジで寝坊か!?まぁ、雪姫といえど、たまにはそんなこともあるよね。

「お〜い、ユキちゃ〜ん。お腹へったよ〜。」
そう言って、雪姫をのぞき込むと、色白の雪姫の顔はそれと分かるぐらい赤く上気していて、息も荒い。
汗もかいているようだ。これは・・・様子がおかしいぞ。
額に手を当ててみる・・・。

「げっ!すごい熱・・・。雪姫!大丈夫?ユキ!!」
雪姫は少し目を開ける。
「・・・あ・・・姉さん・・・今起きるから・・・。」
「ちょっとまった!!!寝てな!」
私は慌ててダイニングに戻り、へたばってるショウをつまみ上げる。
「おい!薬箱は!?」
「へ・・・?あぁ・・・アッチだよ・・・それよりご飯・・・。」
ショウの訴えを無視して薬箱を開き、体温計をもって雪姫の部屋に戻ろうとすると、
なんと雪姫がよろよろと歩いてくる。
「・・・ご飯、作らないと・・・。」
そう言いながらふぅっと意識を失って倒れそうになる。

「わぁぁ!危ないっ!」
ショウを放り出して雪姫を間一髪で支える。ショウの悲鳴が上がったが、もちろんそれどころではない。
気を失った雪姫を抱きかかえて部屋のベットに寝かせてやる。

すぐに熱を測ってみると・・・40度!?
ありえない。
私たちも病気は時々するけれど、風邪ぐらいなら大抵ほっとけば1日で直ってしまう。
微熱さえ発熱することはない。
さっきの薬箱だって、ありゃショウ用だ。
それが・・・40度?

とにかく、私はショウに氷を用意するように言ってから闇姫様の部屋に向かった。

To be continued...

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