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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第三十三話

 

〜麗峰学園・将姫〜



さて、学内を探索するわけだけど、まだ部活やら何やらで学内は結構にぎやかだ。
とてもじゃないけどオバケの出る雰囲気ではない。
「まだ時間があるし、卵サンド買いに行こうか?」
雪姫がこくん、と頷く。
やれやれ・・・なんにでも無頓着なようで、意外と食い意地が張ってるんだから。

私たちは学校から徒歩三分、美味しいと評判のパン屋さん『グローリー』に行った。
入り口でトレイとパンばさみを手に取り、パンを物色する。
「ユキは、卵サンドだよね?」
「・・・卵サンド二つ。あとカツサンドも。」
「ん・・・わかったよ。」
はいはい、カツサンドね。私がわるうございました!
この店はなんでもおいしいけど、カツサンドはとくに美味しいと評判なんだよね〜。
自分の分もカツサンドを確保して私たちは店を出た。

学校に戻り、校庭のベンチに座ってサンドイッチを食べることにする。
カツサンドを一口かじってみる。
肉はあくまでジューシーに揚げられたカツの味が口の中に広がる。
やっぱりおいしいね、うんうん。
「うーん、やっぱりグローリーのカツサンドはおいしいね。」
話しかけてみたけど、雪姫は頷いただけで無心にサンドイッチを頬張っている。
そんなに好きだったのね・・・。
こりゃ、食べ終わるまで話しかけてもムダっぽいな。
無言の行のごとくサンドイッチをむしゃむしゃと食べていると
向こうから見覚えのある人が歩いてくる。
こないだ校舎に閉じこめられた時に一緒だった事務室のおじさんだ。
後で知ったけど、名前は伊藤さんというそうだ。

「伊藤さ〜ん。」
私が手を振って叫ぶと伊藤さんもこっちに気が付いて手を振ってくれる。
こちらに歩いて来ると、彼はサンドイッチに目をとめる。
「やぁ、これはこれは。おや、グローリーのカツサンドですか、いいですねぇ。」
「おいしいよね、グローリー。」
「あの店は出来た時から人気がありましたねぇ。
 ちょうど私がここに就職した年にできたんですよ。
 だから・・・20年ほど前になりますかな?はははっ。」
伊藤さんが人のいい笑みを浮かべる。
「へー、そんなに前からあったんだ・・・。」
「そうなんですよ。・・・おっと、いかん。
 私、これから用がありまして、これで失礼しますよ。」
「あ、はい。さようなら〜!」
伊藤さんは丁寧に会釈してグランドの方に歩いていった。
ホント、腰が低くて丁寧で、いい人だなぁ。

「伊藤さんっていい人だね。・・・あれ、アンタもう食べちゃったの?」
私が振り返ると雪姫は既に卵サンド二つとカツサンドを平らげていたのだ。
あきれつつカツサンドの残りにかぶりつく私を尻目に、雪姫はすましている。
まったく、食べるの早いんだから・・・。
絶対この子は人生の楽しみを一つ損してると思うんだけど。
慌てることもないので私はゆっくりとカツサンドを味わって食べる。

しばらくすると、ぼちぼちグランドや体育館から部活を終えた生徒達が歩いてくる。
ではでは、手始めにボールが勝手にスポーツするという噂の体育館を調べに行こうじゃないか。
「ユキ、まず体育館に行ってみようか?」
私が言うが早いか立ち上がってスタスタと歩き出すと雪姫も黙ってついてくる。
部活帰りの人たちとすれ違う中、そのうちの一人が立ち止まった。

「やあ、御劔さんに矢部さん!」
・・・杉浦だ。もうみんな忘れてるかもしれないけれど、かなりベタな軽薄男の杉浦君だ。
「あ、杉浦君。部活終わったの?」
「うん、明後日、赤口学園と練習試合があるからねぇ。
 今日の練習はちょっとハードだったかな、ふふっ。」
「へえ、がんばってね。・・・ところで杉浦君って何部だっけ?」
わざわざこっちから話題を振るところが我ながらお人好しだ。
「あれ?知らないのかい?ショックだなあ・・・。僕はテニス部さ。」
「あはは、ごめんごめん。そうだったんだ。テニス部だったんだ。(だと思った。)」
なんてベタなヤツなんだ!!!いや、分かってはいたんだけど。
もう。コイツにかまっているヒマはないのだ。適当に切り上げないと。
「二人ともこれから帰るなら、よかったら一緒に・・・」
「あ。ゴメン!私たちこれからちょっと用事があるの。それじゃ、試合がんばってねー!!」
杉浦君のセリフを強引に遮って駆け足で体育館に向かう。
「あ!ちょ、ちょっと待ってくれよ!!おーい。」
待つもんか。
ダッシュで無事に体育館に到着したのは良いのだけど、
入り口から体育の先生が出てきて、あちこち施錠している。
あっちゃ〜。そういやあたりまえだけど、部活が終わったら施錠するよね。

「うわ、どうする?」
雪姫に声をかけてみると、別に返事は期待してなかったんだけど、珍しく答えが返ってきた。
「・・・手はあるわ。」
「へ?ホントに?・・・何するつもりよ?」
なんかイヤな予感がするのは気のせいでしょうか。


To be continued...

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