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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第三十四話

 

〜将姫・体育館前〜



「で、その手っていうのは?」
「・・・献姫と手を組むの。」
「は?何いってんのアンタ、冗談でしょ?」
雪姫は顔色一つ変えないで続ける。
「・・・あの人は教師として潜伏している。教師ならばカギもなんとかなるはずよ。」

それは言えてる、確かにそうだ。でも。
「私はイヤだからね!なんであいつと組まなきゃならないわけ?
 何企んでるか分かったもんじゃないわ。」
「・・・たしかに彼女がまだ何か隠している可能性はあるわ。
 でも、今のところ私たちと利害は一致しているはず。
 あの人も言っていた様に、私たちが今、争う理由もないわ。」

雪姫の理屈でも私の気持ちは収ることがなかった。
「そ、それはそうかもしれないけど・・・。とにかく、あいつといっしょなんて御免だよ!」
そう怒鳴って睨み付けたけど、雪姫の態度は相変わらずだ。
「・・・姉さん、これは任務よ。感情に流されてものを言わないで。」
あくまで冷静な雪姫の態度に私は余計イライラしてしまう。
「アンタこそなんでそんなに割り切れるのよ!あいつらと何度闘ったと思ってるの?
 間違いなく敵よ、あいつらは!!それで・・・」
何を言い出すか自分でもわからなくなったので、なんとか言葉を切る。

「・・・それで?」
「・・・もういいよ。
 それじゃ雪姫は献姫のとこでもどこでも行ってカギが必要なところをまわってよ。
 わたしは、カギ無しで行けるところをまわるからさ。」
「・・・・・・・。」
雪姫は無言で私を見つめていたが、やがてあきらめたのか校舎に向かって歩き始めた。
なんか大人げないことをしてしまったけど、しかたがない。
私は焔からもらったメモを見て、どこから行くか考えはじめた。


〜雪姫・職員室〜



将姫姉さんは一度へそを曲げると決して考えを改めることはない。
説得するのが時間の無駄であることは今までの付き合いからわかっていたので、
あきらめて私だけで職員室に向かった。

「・・・失礼します。」
職員室をのぞき込んだが、人はまばらにしかいない。
こちらに気が付いた男がこちらに来る。
登山家のようにヒゲを生やした怪しげな中年の男だが、
時々見かけるような気がするので、おそらくは教員だろう。
「ん、どうした?」
「・・・数学の楯先生はいらっしゃいますか?」
「おお、いるぞ。・・・楯先生!生徒が来てますよー!」
男は、奥の方でインスタントコーヒーを作っていた楯 忍・・・献姫を呼ぶ。
献姫がこちらに気づいてやってくる。
「あ、先生、申し訳ありません。」
「いやいや。新任だというのに先生は人気があっていいですなぁ。」
「そんな、篠原先生のとこだってよく生徒が来てるじゃないですか・・・しかも女の子ばっかり。」
そう言うと献姫がくすりと笑う。潜入先での適応力はなかなかのようだ。
「はははっ、からかわんでください。おっと、すまん楯先生に用事だったな。それじゃ。」
篠原と呼ばれた男は、私の方を見てそう言うと献姫に軽く会釈して机に戻っていった。

「あら、一人なの?ま、ここじゃなんだから、こっちにいらっしゃい。」
「・・・はい。」
職員室の奥の方へ進んでいく献姫の後を追うと、
『生徒指導室』という札の出ているドアの前に着いた。
「たしか、今の時間は誰も使ってないはずなんだけど・・・。」
そういって献姫はドアをノックしたが返事はない。
「大丈夫みたいね。さ、入ってて。私はさっき作ったコーヒー持ってくるから。あなたも飲む?」
「・・・けっこうです。」
「そ。じゃ、待っててね。」
言われたとおり部屋に入って待つことにする。
姉さんは授業の抜けだしが見つかって、二回ほど呼び出されたらしいが、
私がこの部屋に入るのは初めてだ。
折りたたみの机とパイプイスが置かれているだけの殺風景な部屋。
窓からは正門が見える。
部活が終わったのか、そろいのバックをもった生徒の集団が正門から出て行くのが見えた。

「おまたせ。で、私に何の用かしら?」
ドラえもんの描かれたマグカップを片手に献姫が部屋に入ってきた。
おもむろに机を挟んで私の向かい側のイスに座る。
「・・・協力してほしいの。」
「ふふっ、そう、助かるわ。こちらこそよろしくね。でも、将姫さんは?」
「・・・どうしてもあなたとは組みたくないみたい。」

それを聞いた献姫は肩をすくめる。
「そ。嫌われたものねぇ。闘う定めとはいえ、私はああいう真っ直ぐな子は結構好きなんだけど。」
「・・・将姫姉さんは、麗姫姉さんと一番仲が良かったから。」

献姫は少し間をおいて、コーヒーを一口飲んでから口を開いた。
「・・・・・・そっか。"邪眼の"麗姫・・・やっかいな相手だったわ。
 倒したは良いけど、まさか聖姫さんを持って行かれるとはね。
 まだ麗姫さんの事にこだわっているのだけど、かといって、
 聖姫さんを仲間と認めた以上、麗姫さんのことを蒸し返すわけにも行かない。
 そこに私が現われたもんだから気持ちの整理がつかない・・・ってところかしらね。」

「・・・思い出話をしにきたわけじゃないわ。」
私は、一人で勝手にしんみりしている献姫を止めた。
献姫は一瞬、不満そうに口を尖らせてから、ふっと笑みを浮かべた。
「ふふっ、そうね。私たちは和やかに語り合うような仲じゃなかったわね。」
私はその言葉に頷いてから言葉を続ける。
「・・・これから校内の探索を手伝って欲しいの。」
「何か手がかりでもつかんだの?」
「・・・手がかりってほどのものではないけれど。
 最近、妙に怪談話が増えているから調べようって言うことになったの。」
「あ。確かに最近、生徒がよく怪談を聞かせてくれるわ。おもしろいんじゃない?
 こないだアンタ達が校舎に閉じこめられたとかいう事件とも関係ありそうね。」
「・・・知っていたのね。」
「ふふっ、私だって教師やりにわざわざこっちに出てきたわけじゃないもの・・・。
 わかった、カギはなんとかしましょ。あとセキュリティもなんとかしないとね。」

こうして私たちは、二人で校内を探索することになった。

To be continued...

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