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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第三十六話

 

〜校内庭園・井村亜希子〜



長谷川直美さん、"黒の聖書"の所持者。
いつも穏やかに微笑んでいて、おっとりとした印象を受ける。
けれど、どこかつかみ所がなく、とっつきにくい人だ。
彼女の右肩にはコウモリの羽根がはえた醜い生物が留まり、足下には黒い犬が座っている。
彼女は笑みを浮かべたまま口を開いた。
「校内でやたら噂なってる怪談は・・・あなたが原因?」
「なるべく見つからない様にはしてるんですけど。」
「いったい、何をやってるんですか?」
彼女の顔から笑みが消えて、こちらを真っ直ぐ見つめてくる。

「学校の中には霊が結構いるんです、ホントに。
 私、霊感が強いみたいで、昔からよく見えちゃうんです。
 みんなとっても悲しそうな顔してたり、とっても怒ってたり・・・。
 でも、霊は生きてる人間には何も望んでいないし、もとより話すことも出来ません。
 一方的に訴えかけてきたり、危害を加えてくるだけです。」
長谷川さんは無表情のまま頷く。
「そうですね。けれども、あなたの霊縛輪を使えば、
 こちらからも働きかけることができる、というわけ?」
「そうです。これがあれば話すことができるし、危害を加えられることもありません。
 そんなに執着が強くない霊なら話しを聞いて上げるだけで成仏したりもしますし、
 心残りを果たしてあげれば大抵の霊は消えていきます。
 だから私、できるだけ成仏させて上げようと思って。」

長谷川さんは、また笑みを浮かべた。
「そうだったんですか。
 ・・・ですが、あの子達が校内の噂について調べ始めましたよ。」
それは私も知っていた。
校内の、いわゆる魑魅魍魎と呼ばれる様な低級な霊を手なずけ、
彼らが見聞きしたことが分かるようになっているので、
あの二人の動きはだいたいわかっていた。
「はい、知っています。それは気を付けますね・・・」
そして、もう一つ知っていることがあった。
「それと・・・あなたの使い魔が、私や他の二人の周りをこそこそしてるのも知っています。
 どういうつもりなんですか?」
いつか、聞かなければいけないと思っていた。
ちょうど良い機会だから聞いてしまうことにする。
「気づかれてたんですか。」
悪びれた様子もなく、長谷川さんが答えた。
「この校内で私に隠し事は出来ません。」
「ふふふっ、怖いですね・・・実は私、矢部雪乃さんの方に呪いをかけてみたんです。
 でも、失敗してしまって、知っての通り彼女はピンピンしてます。」
「そんなことしてたんですか。それで?」
表情も変えずにさらりと怖い事を言う人だ。
「それで、まだ彼女たちを倒すには決定的に力が足りないと思いしらされました。
 だから・・・だからもう一つぐらいアイテムがあれば倒せるんじゃないかと思って。」
「!?」

この人、何を言い出すの?
そう思った時、彼女の足下にいた犬がみるみるうちに大きくなって
2メートルほどの不気味な獣に姿を変えた。
そして、一羽のカラスが彼女の元に舞い降りてきて、口をきいた。
「クククッ、人払いの結界、張り終えましたよ。」
「ご苦労様、あなたもバンダースナッチに加勢して上げて。」
「御意。」
そう言うとカラスは白いスーツの青年に姿を変えた。
「どういうつもりですか!」
彼女の顔から笑みが消えた。
「あなたのアイテムを、私にください。」
言うが早いか獣が私に飛びかかってきた。
「きゃあっ!!」
危なかったけど何とか身をひねってかわすことができた。
獣は着地してすぐにこちらを向き、低く唸る。
そして、カラスの青年・・・あの時の悪魔!
死んだはずなのにどうして?
・・・彼も、嫌な笑いをしながら近づいてくる。
「と、いうことですので、かわいそうですが死んでください。クックックックックッ・・・」
「長谷川さん!あなた、こんなことして・・・他の二人も敵にまわすつもりですか!!」
「ここで、あなたに消えてもらえばすむことです。」
こともなげに言う彼女は本気の様だ。
まだ・・・まだ死ぬわけにはいかない。

To be continued...

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