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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

第三十九話

 

〜麗峰学園校庭・将姫〜



旧校舎の周りをうろついていると、携帯が鳴った。
「はい、もしもし?」
「・・・姉さん、急いで表の庭園に来て。」
雪姫だ、さっきほとんどケンカ別れしたってのにあの子ってば。
「なぁに?なんかあったの?」
「・・・結界が張られていたの。破って踏み込んだら人が倒れていたわ。」
「そ、それって!!わかったすぐ行くから。」
私は携帯を切ってすぐに駆けだした。
とうとう手がかりをつかめるかもしれない!
はやる気持ちを抑えつつ全力疾走して庭園の手前にある茂みの所に人影が見える。
雪姫と・・・献姫か。
献姫は誰かをおぶっているようだ。

「おまたせ!何があったの?」
あえて献姫の方は見ないで雪姫に尋ねる。
「・・・体育館に行こうとしたら、この庭園の奥に大きな力を感じて踏み込んだの。
 結界が張ってあったから破って入ってみるとこの子が倒れていたわ。」
そう言って雪姫は献姫がおぶっている人の方を見た。
一目で分かるほどひどい怪我だ、この出血は命に関わる。
「ふぅん・・・井村・・・さん!?」
思わず声を出してしまった私に献姫が尋ねてく来た。
「あなた、この子を知ってるの?」
「直接は知らないけど、友達の彼女・・・あっ・・・ふんっ。」
ちっ、うっかり口を聞いちゃったよ。
「あなたねぇ、意地張ってる場合じゃないでしょ?」
献姫が半ばあきれたように言う。
「うっさい。私はアンタと手を組むつもりはないんだからね。
 それより雪姫、救急車を呼んだ方が・・・」
「もう呼んだわよ。生徒手帳から自宅の電話番号もチェック済み。」
献姫に言葉を遮られた。ちっ。

そうこうするうちに遠くから救急車のサイレンの音が近づいてきた。
結界の中にいて、こんな所じゃ考えられないような怪我をしていたこの子、
しかも私がさっき見かけた時までは無事だったのに。
この子には何かあるはず、目を離さない方が良さそうだ。
「それじゃ、雪姫。私はこの子と一緒に救急車に乗るよ。
 アンタは戻って闇姫様に報告して。」
「・・・・(こくり)。」
そこに献姫が口を挟んできた。うるさいヤツだなぁ・・・。
「待った。私は校長先生と、この子の担任の先生に状況を報告しなきゃならないんだから。
 付き添いは私がするわ。」
「・・・勝手にすればいいでしょ。私は絶対に行く。」
「やれやれ・・・そうさせて貰うわ。」
耳が痛いほどサイレンが大きくなり、
赤いライトが壁の向こうでくるくる回るのが見え、校門の方で止まり、
バンッ、と車のドアが閉まる音がした。
私たちは誰からとなく小走りに校門の方に向かった。

校門からは丁度、救急隊員が二人でキャスターの付いた担架を押して走ってきた。
「ご苦労様です!この子をお願いします。」
献姫が隊員達に声をかけた。井村さんを見て救急隊員がわずかに息を飲むのが分かった。
これだけの怪我ならば当然と言えば当然だけどね・・・井村さん、大丈夫かな。
献姫と隊員達で井村さんを担架の上に寝かせて救急車の中に運び込んだ。
それに私たちもついて行くと
救急隊員はテキパキと意識の確認や脈拍を取り、止血を施していた。
「幸い呼吸はありますが、意識もありませんし大至急に処置が必要です。
 いったい、何が起きたんですか?」
何が・・・って言われてもねぇ。
私は雪姫の方を見たが雪姫も首を横に振るだけだ。
そんな私たちに代わり献姫が答えた。
「それが、私たちが発見した時は既に怪我をして倒れていたものですから。」
「そうですか・・・先生ですよね?この方のご家族にもご連絡できますか?」
「はい。病院はどちらでしょうか。」
隊員は、無線で連絡を取っているもう一人の隊員の方を伺いながら答える。
「今、問い合わせていますが・・・おそらく赤口総合病院になると思います。」
「わかりました。それじゃ、自宅の方に連絡を入れます。」

献姫は井村さんの生徒手帳を見ながら携帯をプッシュし始める。
隊員たちは何か相談しているみたいだ。
私は雪姫にもう帰るように言ってから救急車の中で井村さんの様子を見てみる。
止血の処置はしたものの脂汗を浮かべて苦しそうにしている。
・・・いったいあんなところでどうすればこんな怪我をするんだろう。
常識では考えられない、とすれば非常識的な何か・・・
状況から見てアイテムが関わっている可能性も大きい。
被害者である以上、この子がどう関わっているかはわからないけれど、
ようやく尻尾をつかんだかも知れない。


「赤口総合病院に向かいます!付き添いの方は・・・」
隊員の声で我に返り、
「私がいきます。」「あの、私も連れて行ってください!」
電話を終えた献姫と私がほぼ同時に言った。
くぅぅ。
献姫を睨み付けたが、シャラッとした顔で流された。
「わかりました、とにかく急ぎましょう。」
なんか邪魔なのがいるけど、やっとつかんだ手がかり、逃すわけにはいかないんだから。

To be continued...

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