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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

第四十話

 

〜愚者の書庫・雪姫〜



「・・・ただいま。」
「おかえり〜。」
奥からショウの声が聞こえる。
恐らく鬼姫も何か答えたのだろうけれど、聞こえないだけだと思う。
真っ直ぐダイニングに向かうと、鬼姫とショウがテレビを見ていた。
「おつかれさ〜ん。」
ポテトチップスをバリバリ食べながらテレビから目を離さずにショウが言う。
鬼姫はこちらを振り向いて首をかしげる。
「あら・・・将お姉様は・・・?」
その声を聞いてショウも振り返った。
「あれ?どうしたの将姫は。」
時間がもったいない。私はそれに答えずに逆に尋ねた。
「・・・闇姫様はお部屋?」
「うん。そうだと思うけど。」
「・・・それじゃ、二人とも付いてきて。」
二人・・・一人と一匹は顔を見合わせてからこっちを向き頷いた。

すぐに地下への階段を降りて闇姫様の部屋をノックする。
少し間をおいてから声が返ってきた。
「どうぞ。」
その声を聞いてからドアを開け、
私に続いて肩にショウを乗せた鬼姫が入ってきてドアを閉める。
こちらに背を向けて机の上に本を広げていた闇姫様がこちらを振り返った。
「どうしたのですか?」
「・・・先ほど学校で・・・」
私はこれまであったことをかいつまんで話した。

一通り話し終えると闇姫様がイスから立ち上がってこちらに歩いてきた。
「そう・・・ようやく手がかりらしきものにぶつかったってわけね。
 ・・・でも、その井村という少女を将姫が四六時中見張っているわけにもいかないでしょう?」
「・・・はい。ですから、鬼姫に付いてもらうのが良いかと。」
そう言って鬼姫の方を振り返ると、彼女は困ったような顔を浮かべてうつむいてしまった。
その様子をみて苦笑した闇姫様が口を開いた。
「あらあら、鬼姫が困っていますよ・・・
 この子に人混みに混じって病院に潜入しろっていうのもね。
 確かに鬼姫にやってもらうのが一番良いのでしょうけど、向き不向きって言うのもあるし。」
「・・・ですが、鬼姫にやってもらうしか。」
再び鬼姫の方を見ると、
「あの・・・式神をうてば・・・できると思います・・・。」
鬼姫はわずかに顔上げて自信なげに答えた。
「そうね、それがいいんじゃないかしら?
 将姫にも戻るように伝えてくださいね。」
闇姫様がそれに頷く。
「わかりました・・・すぐに準備します・・・。」
一礼して鬼姫は出て行った。

それを見送ってから闇姫様が視線を私に戻す。
「ところで、献姫の様子はどうですか?」
「・・・今のところ敵対する意志は無いようです。
 以前、協力を提案してきたのでそれに乗ることにしました。」
「目的が一致しているってことね・・・もっとも、それだけじゃないと思うけれど。」
「・・・今のところ問題なく協力できるかと思いますが、
 妙なそぶりを見せれば私があの人を倒します。」
「それはその時に考えればいいわ。今はアイテムの奪還を最優先してくださいね。」
「・・・分かりました。それでは私も失礼します。」
「ええ、ご苦労様。」
頭を下げてから私も部屋を出る。
ようやく事態が進展してきた、このままうまくいけばいいのだけど。


〜愚者の書庫・将姫〜



いつも通り近所迷惑なぐらいやかましい目覚まし時計の音で起こされた。
布団から上半身を起こして伸びをする。
昨日、病院に向かい、お医者さんからいろいろなことを聞かれたが、
私も献姫もただの発見者に過ぎず、何も説明できなかった。
井村さんのご両親や担任の先生がやってきて献姫は忙しそうだったので、
私は井村さんの部屋番号を確認して、闇姫様に連絡を入れようとした時
鬼姫の式神である小鬼に呼び止められ、戻ってくるように言われたのだ。
不本意だったが、闇姫様の命令じゃしかたがない。
小鬼に彼女の部屋を教えて、献姫からも目を離さないように言ってから帰ってきたのだった。

洗顔をすませてからダイニングに入ると、雪姫が朝食の準備、ショウは新聞を読んでいた。
「おはよ〜。」
ボケッと座っている低血圧気味な鬼姫の頭にポンッと手を乗せてから挨拶する。
私の席に着いてからリモコンでテレビを付けると丁度ニュース番組をやっていた。
経済の事やらローカルな行事やらのニュースが流れていくのを何となく眺めていく。

『・・・次は殺人事件のニュースです。一家が殺されるという事件がありました・・・』

「おぉ、怖い怖い。」
誰に言うとでもなくつぶやく私。

『・・・事件があったのは今朝、
 水見市先勝町(みずみしさきがちちょう)で高校教諭・長谷川浩二さん(45)方で
 浩二さんと妻の専門学校講師・純恵さん(42)、
 長男で先勝中央高校一年の義也くん(15)が鋭い刃物のようなもので斬られ、
 死んでいるのが発見されました・・・』

「うへ〜、ひどいや。」
ショウも新聞から目を上げてテレビを見る。
確かにかなりひどい。

『なお、浩二さんの長女で麗峰学園高校三年の直美さん(17)が行方不明になっており、
 玄関に残された血痕が直美さんと同じAB型であることから警察では、
 直美さんが何らかの形で事件に巻き込まれたものとして捜査を進めています・・・』

「・・・はあっ?!」
長谷川・・・直美?
私はあんまり驚いておもわず立ち上がってしまった。
「な、なに、どうしたの?」
ショウがこっちを向いて尋ねてきた。
鬼姫も眠たそうな顔でこっちを見る。
「私・・・この、直美さんって知ってるの。」
「え〜っ!」
ショウが驚きの声を上げ、雪姫もこっちの方を向いた。
「・・・これでは、今日の学校・・・大騒ぎね。」
雪姫がボソッと言った。
そりゃそうだろう。
昨日の井村さんの件に加えてこれじゃ・・・。
何かが動き始めているみたいだ。


To be continued...

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