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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

第五十話


〜放課後の2−A・雪姫〜



帰りのホームルームも終わり、荷物をまとめていると由美子がこちらへやって来た。
「さっきの事話したいから・・・学食にいこうか?」
「・・・いいわよ。」
会話もそこそこに学食に向かうと放課後なこともあって人影はまばらだ。
由美子もこの方が話しやすいだろう。

「・・・それで、相談って?」
断ったのだが律儀にも私に飲み物を買ってきた由美子から紙コップを受け取りつつ話しかける。
「うんとね、さっきも言ったけど澪のこと。
 実は澪が学校来始めてからなんだけど、
 時々夜に澪のとこのお母さんから
 『澪がお邪魔していませんか?』って電話が来るんだよね。」
「・・・夜って、何時頃?」
「十時ぐらいかな?まちまちだけどね。
 それで、今年になってからもう十回ぐらいかかってきてるからさ、
 いったい澪どうしたんですかって聞いてみたの。
 そうしたら、時々夜中にふらっと出て行っては一時間ぐらいして帰ってくるんだって。
 最初はコンビニにでも行ったのかと思ってたみたいだけど、
 二,三週間にいっぺんぐらいの頻度でそういうことがあるから
 心配になって本人に聞いてもちょっと夜風に当たってたとか言うだけなんですって。」

それを聞いて私は一番最初に思いついたことを口に出した。
「・・・逢い引きじゃないの?」
「あ、逢い引きって・・・古い言葉使うんだね。
 ・・・う〜ん・・・実は澪のお母さんもそれを心配してるみたいだけど、
 澪ってその、入退院繰り返してるせいかそういうことってかなり奥手なほうだし、
 仮にそうだとしてもそんな人目を忍んで会わなきゃいけない人と
 付き合ったりしないと思うんだけどなぁ。」
「・・・・。」
私は長岡澪とつい最近知り合ったばかりだが、
確かに夜に人目を忍んで逢瀬を重ねるようなタイプでは無いような気がする。
そもそも、深夜に出歩いて遊び歩くタイプでもなさそうだし、
それだったら一時間では帰ってこないだろう。

「まさか澪に限って夜遊びって事もないだろうし、いちおう十二時前には戻るみたいだしね。
 ・・・だから余計に謎なんだけど。この前さりげなく聞いてみたけどさらっとかわされちゃったし。」
由美子もだいたい私と同じように考えているようだ。
「・・・ちょっと見当つかないわね。」
「私も。それで、澪のお母さんが何回か跡をつけてみたらしいんだけど
 いつも見失っちゃうんだって。
 だからさ・・・その、あんまり良いこととは思えないんだけど、
 澪のお母さんもほんとに心配してて、
 私もやっぱり心配だしさ、私が跡をつけてみますって言っちゃったんだけど、
 私だけじゃ心もとないし、本当に悪いんだけど、雪乃も手伝ってくれないかな・・・?」
由美子は大人しそうに見えてわりと突拍子もないことを言う。

「・・・・。」
「お願い!・・・・ダメ?」
正直、私は余り興味がないし、そんなことをする筋合いもないのだが
由美子の真剣な様子を見ていたらなんとなく手伝ってもいいかと思ってしまった。
それに私にとっては素人を尾行することなどどうということもない。
「・・・わかったわ。」
「ほんと!?ありがとう!よかった〜!それじゃ、詳しいことはまた今度連絡するよ。
 じゃ、私、そろそろ部活行かないといけないから。今日はありがとう。」
「・・・じゃあね。」
澪がいつ外出するかも分らないのにどうするのだろうかとも思ったが、
その辺は由美子にまかせるとして、私もそろそろ帰ることにする。



〜『愚者の書庫』ダイニングルーム・雪姫〜

いつもだいたい将姫姉さんが帰ってくる時間をめどに食事の準備を始めてはいるのだが
姉さんは本当に謀ったかのように、できあがりとほぼ同時に帰ってくるのだった。
「ただいま〜、お、今日は天ぷらですかな?」
「・・・正解。たった今できたところ。」
「よっし、すぐ着替えてくるから・・・・」
「・・・イモ天はちゃんと姉さんの分、別に取ってあるわよ。」
「お、よくわかってるじゃん!じゃ〜ね!」
そういうと姉さんは階段を駆け上がっていった。
エビ天をつまみ食いしようとしていたショウをつまみ上げつつ、鬼姫に声をかけ、
ショウには闇姫様の所に行ってくるように言った。

闇姫様以下、そろって食事が始まった。
鬼姫はテレビを見ながらゆっくりと、
将姫姉さんはショウとエビ天を奪い合ったり闇姫様や私に話しかけたりと忙しく食事をしている。
私は早めに食べ終わり、お茶を飲みながらそんな様子を眺めていた。
やがて闇姫様が食べ終わり自室に戻ってゆき、残った私達は各々デザートを食べながら
テレビを見ていたりすると時間はあっという間に9時半になっていた。
そろそろ洗い物をすませて風呂にでも入ろうかと思っていたら携帯が鳴った。
液晶画面には「秋山 由美子」と表示されている。
「あれ?雪姫に電話?珍しいなぁ〜、まさか男?」
ニヤニヤしている将姫姉さんを無視しつつ電話に出る。

「・・・もしもし。」
「あっ、雪乃!あ、あのね、今大丈夫?ちょっと来て欲しいんだけど!」
小声だが妙にあわてている。
「・・・・もしもし、落ち着いて。どこに?」
「ごめん、澪の家に電話したらさ、
 たった今、澪が出て行ったって聞いてあわてて澪の家の方に行ったの!
 そしたら澪に出くわしてね、ちょっと買い物に行くって言ったから
 すぐに別れる振りして今跡をつけてるの・・・
 私の家は前に教えたことあるよね?私の家の近くに来たらまた電話してくれる?」
「・・・わかったわ。」
「ありがとう、地図持ってきた方が良いよ、じゃ電話待ってる。」

まさかこんなにすぐ動く羽目になるとは思わなかった。
中学が同じなだけあって由美子の家と澪の家は近い。
しかし、ここからはでは走っても30分はかかるだろう。
「ねぇねぇ、誰から誰から?!」
「・・・由美子よ。」
「なぁんだ、由美子ちゃんか。で、どうしたの?」
興味津々と言った顔で聞いてくる将姫姉さんをほおっておいて
テレビを見ながらスナック菓子を食べているショウに声をかける。
「・・・ショウ、ここには自転車・・・ある?」
「物置にあるけど。どうしたのさ?」
「どうしたのさ〜!」
ショウに続いて将姫姉さんも聞いてくる。
「・・・由美子が呼んでるの。なんか急いでるみたいだし
 私もよく分らないから帰ってきてから話すわ。」
そう言って私は地図をひっつかんで物置に向かい、自転車を引っ張り出して由美子の家に急いだ。
これなら10分ほどで着くだろう。


To be continued...

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