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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

第五十一話

〜路上にて・雪姫〜

自転車を10分ほどこぐと由美子の家がある街に着いた。
ひとまず由美子に電話してみると、三回目のコールが鳴りおわるまえに由美子がでた。
「・・・もしもし、あなたの家の近くまで来たのだけど、今どこにいるの?」
「あ、早かったね。今、澪が公園に入ったところまで見たんだけど見失っちゃったの。
 とりあえず公園の入り口で待ってるからさ、来てくれる?
 鶺鴒公園って言うんだけど、
 うちの近所では一番大きい公園だから地図見ればすぐわかると思う。」
地図を見てみるとたしかに広い公園のようだ、すぐにわかった。
「・・・すぐに行くわ。」
私は電話を切るなり公園に向かった。

・・・2,3分ほど自転車を漕いだだろうか、
住宅地がとぎれて家がまばらになって来たかと思うと公園らしきものが見えてきた。
公園の入り口まで行って辺りを見回すが、由美子は見あたらない。
念のため門に刻まれてる名前を確認してみたが、確かにここは鶺鴒公園だ。
電話を取り出して由美子に電話しようとすると私を呼ぶ声がした。
「雪乃!ごめん、人通りが無いし、怖いからちょっと奥に引っ込んでたの。」
「・・・おまたせ。長岡さんは?」
「うぅん、私はずっとここにいたから少なくともまだ公園にいると思う。」
「・・・地図を見るかぎり他にも出入り口があるみたいだけど?」
「この公園、けっこうおっきいでしょ?
 他の出口からでちゃうと家に戻るのにものすごく遠回りしない 帰れないんだ。
 他から出ちゃった可能性がないわけじゃないけど、たぶん帰るならこの出口からだと思う。」
「・・・なるほど。それで、これからどうするの?」

そこで由美子はうーんと唸って少し考え込んでいたが、すぐに口を開いた。
「ここって道が二つに分かれてるでしょ?
 道なりに行くと、ぐるっと周遊してまたここに戻ってくるようになってるんだ。
 澪がまだ公園にいるなら二手に分かれればどっちかが必ず会うと思うんだけど。」
「・・・そして、どちらも長岡さんに会わなかったとしても、
 歩き続ければ私たちは落ち合うというわけね。
 いいんじゃない?」
「そういうこと。もし澪に会わなかったら合流してからまた考えよう。」
「・・・わかったわ。それじゃ行きましょう。気をつけて。」
「うん、雪乃もね。」
そういって私は向かって右へ、由美子は左へ歩いていくことにした。



〜鶺鴒公園・秋山 由美子〜

雪乃と分かれてから5分ほど歩いたけれども、
自転車に乗った人と一回すれ違っただけで、他に人は見あたらない。
休みの日には私も時々散歩に来ている公園けれども、こんな時間に来たのは初めてだった。
水銀灯の青白い光がまばらに見えるけれども夜の公園はしんとして気味が悪い。
私は少し緊張しながら用心深くあたりを見回して歩いていく。

しばらくして、私はなんとなく誰かに見られているような気がしたので立ち止まった。
辺りを見回してみるが誰もいない。聞こえるのは虫の声だけだ。
気のせいだろうと思い直したものの、怖くなって少し早足で歩く。
あと3分も歩けば雪乃と会うはず。
私は当初の目的も少し忘れかけて、小走りしはじめたが、
ふと視界の端っこで誰かが動いたような気がして私は立ち止まった。
今度のは気のせいじゃない、なぜかそんな確信があった。
私は公園の中央の方へ向かう小道の方へ向かってゆっくりと歩いていくと、
奥の方でかすかに物音がしたような気がする。
少し怖かったけれども、意を決して私はそちらの方に声をかけてみる。
「誰かいるの?・・・澪?澪なの?」
しかし、返事はなかった。あたりは静まりかえり、虫の声すらしなくなった。
けれども私は誰かがこの先にいるという確信をもってさらに小道を数歩歩き始める。
その時、木陰から誰かが飛び出して来て私に掴みかかってきた。
「いやああああっ!!」
私はとっさに大きな声を出してもとの道に戻ろうとしたが
腕を捕まれて後ろから首に腕を回される。
なんとか腕をはがそうともがいている私の目の前に大きなナイフを持った手が見えた。
「あっ・・・・」
私はすくみ上がってそれ以上声を出すことができない。
何とかしなくてはと思っても頭の中は完全にパニックになってしまっていてどうしようもなかった。
不意に後頭部をガツンと衝撃が走り、意識が薄れていった。

To be continued...

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