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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

第五十七話


〜『愚者の書庫』地下会議室・闇姫〜

会議が始まるや否や、天姫が口を開いた。
「それでは、何が起こったのかを簡潔に説明してもらいたい。」
「ええ、もちろんです、そのために皆様に集まっていただいたのですから。」
私は頷いて、アイテムが盗まれたこと、そして今までの経緯をかいつまんで話した。
皆、黙って聞いていたが、私が話し終わってまず最初に聞こえたのが炎姫の怒声だった。
「闇姫、貴様の所のアイテム管理はどうなっておるのだ!」
「簡単な封印が施してあって、近くの詰め所に"魔性の"星姫を待機させていました。」
それを聞いて一同がどよめいた。

「おい、"魔性の"星姫って言ったらおめぇ・・・」
嵐姫が戸惑ったように漏らした言葉に続いて私が答える。
「ええ、私の元にいるヒロイン<真姫>の一人です。
 暗黒八姫衆とは別にインペリアルガードとして仕えてもらっていますが。」
ヒロイン<真姫>とは、一つ以上のアイテムの力を100%引き出すことができる者で、
今のところ、名前が挙がった星姫を含めて9名が確認されている。
「ヒロインである星姫を出し抜いたと言うことは・・・その犯人、なかなかできるな」
聡姫がぽつりと言った。
私はその言葉に頷いて答える。
「えぇ、犯人はよほど隠密行動に適したアイテムの持ち主か・・・
 ヒロイン、ということになるでしょうね。」

しかし、その言葉に唯姫が食い付いてきた。
「ふふっ・・・しかし、先の<戦>から大分経っておりますし、
 こんな事は言いたくはないのですけれど、おたくの星姫さん、少々勘が鈍っていただけ、
 なんてことは考えられませんの?」
「・・・確かに、ヒロインといえど過失はあり得るのう・・・その辺はどうなのじゃ闇姫?」
唯姫の言葉に光姫も賛意を示す。

「無論、彼女とて全能ではありません、そういった可能性も否定は出来ないでしょう・・・。
 しかし、それは限りなくゼロに近い。
 それに問題は、仮にもヒロインである星姫を出し抜くような者が野放しになっていて、
 かつ、アイテムをばらまき、イレギュラーを誕生させていると言うことです。」
私がそう言うと今度は祭姫が発言する。
「その通りですね。たとえ唯姫さんの言うとおりだったとしても、
 ヒロインたる"魔性の"星姫が、そう滅多に後れを取る事はないでしょう。
 その犯人が警戒すべき相手であることに変わりはないと思いますが?」
しばしの間沈黙が支配した後、天姫の声が響く。
「・・・ではなにか、エンプレス・ウィル<女帝の意思>を発動させるとでもいうのか?」
エンプレス・ウィル<女帝の意思>・・・各エンプレスの元にいるヒロイン一人ずつ、
計八人でチームを組み、共通の敵を排除するということだ。
これはまさに普通の姫達では手に負えないレベルのイレギュラーを仮想敵としたものだったが、
今まで一度も発動の必要はなかった。
各エンプレスの元には基本的にヒロインは一人ずつしかいないし(例外的に私の元には二名)、
ヒロインは一人でも物騒きわまりない力を持っているので、おいそれとは動かせない。
簡単にその決断を下すわけにはいかなかった。

「エンプレス・ウィル?おいおい、冗談きついぜ。
 ・・・お嬢、調査の方はどうなんだ?
 やばそうなら、確かにエンプレス・ウィルも視野に入れなきゃなんなくなるぜ?」
嵐姫が、意識的にか無意識にかはわからないが、軽い調子私に問いかける。
「最初は手がかりの少なさから苦戦を強いられていたようですが、
 あの子達ならば必ず役目を果たしてくれると信じています。
 それに、唯姫さんの配下である"鉄壁の"献姫が手伝ってくださるということですから、
 勝算はあるでしょう。・・・ね、唯姫さん?」
「え?ええ・・・当然ですわね。」
突然話を振られてか、わずかに動揺しつつ唯姫が答えた。
「おや、よりによって闇姫と唯姫とは、呉越同舟もいいところだな。
 どういう風の吹き回しだ、唯姫よ。」
好奇心旺盛な聡姫が突っ込んで聞いてくる。
そう、私も知りたかった。
よりによって彼女が私の配下に協力を申し出るなど正直、考えられない事態なのだ。

「それは私の所にも賊が侵入したからですよ。幸い、うちは何も取られておりませんけれども・・・
 時期が近かったですし、同一犯ではないかと思ったからですわ。」
それは私も聞いている。
しかし、私は、それだけではないと踏んでいた。
不届き者を捉えたいという気持ちはわかるが、何も取られていないのに
なぜ彼女が私に協力を申し出たりしたのか・・・。
・・・そろそろ、明らかにしておこうか。


To be continued...

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