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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

第五十九話


〜『愚者の書庫』地下会議室・闇姫〜

「・・・さて、今回の件ですが、皆さんの意見をお聞かせください。」
私の声が静寂を破る。
最初に意見を述べたのは嵐姫。
「かなりヤバイ状況だな・・・けど、お嬢のとこにはヒロインが二人もいるんだし、
 いざとなったら女王様も龍姫だしてくれるだろ?」
「・・・ええ、もちろんですわ。龍姫ならば次は決して逃しはしないでしょう。」
唯姫も息巻いている。
「ふむ・・・いざとなれば、わらわも配下をつかわすぞ。」
「あら、光姫さんもご協力くださるのですか?」
「今回の件、少々気がかりでな・・・。」
それっきり何か考え込むように光姫は黙りこくってしまった。

次いで聡姫が口を開く。
「では、最低でもヒロインが四名、他の姫達もそれなりに集まるということか。
 それならば何とかなるだろう、あまり頭数を集めて大騒ぎにするわけにもいくまい。
 それに、そこまでやるイレギュラーにも興味がある、私は少々動向を見させて貰うよ。
 ・・・もちろん、収まらないなら私も配下を出さざるを得ないだろうがね。」
「あいかわらず研究熱心なことだな、聡姫・・・
 まあ、おまえの言うとおりだよ、私もひとまず待機だな。
 しかし、イレギュラーを見過ごすことは出来ない。
 少しでも事態が悪化しそうなら、うちの連中をいかせるぞ。」

「天姫さんも征伐には賛成ですか・・・私は今回の件、じっくりと見守らさせてさせて頂きたく思います。」
「祭姫・・・そんなことを言っている場合か?」
「今までになかったケースですから、成り行きを見守ることも必要ではないかと。
 私たちは自身の存在を自覚して以来、
 "既に知っていたルール"に基づいて姫達の闘いを仕切ってきました・・・
 ですが、その意味は我々すらわかっていないのですよ?
 イレギュラーを抹殺しなければならない、というのも"既に知っていたルール"に過ぎません。」
「馬鹿馬鹿しい、意味などいくら考えたところで我々が後付で与えた物に過ぎない。
 我々は存在し、八人全員が従うべき共通したルールを知っていた、ただそれだけのことだろう。」
「そういう事ではありません、我々は何を為すべきか・・・
 時には流れに任せ、それを感じることも必要ではないかと言っているのです。」
「だから、そのような悠長なことを・・・」

天姫と祭姫も対極に位置しているので、私と唯姫ほどではないが仲が悪い。
きりがなさそうなので、止めようとしたら、先に嵐姫が止めてくれた。
「まぁまぁ・・・おまえらも仲が悪いなぁ、相変わらず。
 とりあえず、いざとなったら五名のヒロインがご登場するわけだ、
 これだけでも今までにない大事だぜ?
 私も様子見させてもらうよ、そういう元気のある奴は興味がある。」
「・・・ま、好きにするがいいさ。」
天姫が矛を収めてくれた。彼女は感情で動くタイプではないし、わかってくれたようだ。
そして、最後は炎姫。
「私としては、すぐにでもその小生意気なイレギュラーをぶちのめしたいところだが、
 うちは姫が一人しかおらん。
 その上、凛姫は性格上、集団行動には著しく向かないのでな。
 ま、闇姫と唯姫にも面子があるだろう、私は手出しせぬよ。」

一通り意見が出たところで、そろそろ締めに入ろう。
「それでは、今回の件に置いては、これまで通り私の配下が捜索に当たり、
 唯姫さんの配下にもご協力頂くということで。
 もし、それでも手が足りないようならば、
 光姫さん、天姫さん、聡姫さんもご協力頂けるということでよろしいですね?
 異議のある方はご意見を御願い致します。」
・・・誰も特に異議はないようだ。
「それでは、今回の女帝会議はこれで終了とさせて頂きます、お疲れさまでした。」
私がその言葉を発すると同時に円卓上に置かれた水晶球から次々と光が失われていく。
皆、帰るのは速かった。さて、危険な任務になりそうだが、将姫達にもがんばってもらわなければ。


〜翌朝『愚者の書庫』・将姫〜

いつも通りの朝、朝食を終えて雪姫と一緒に学校へ向かう。
昨夜、闇姫様から会議の報告を頂いたのだが・・・

「なんか話がでかくなってきたねぇ・・・。」
「・・・ええ、そうね。」
「くっそー、他んとこの連中がしゃしゃり出てくる前になんとかしたいよね!」
「・・・それに越したことはないわ。でも、話が本当なら、黒幕はかなり手強いわよ。」
「まーね。でも、星姫も龍姫も直接闘ったわけじゃないから、わからないでしょ。」

私たちのアイテムはそれぞれが異なった能力を持ち、
単純な戦闘力だけで比べることは出来ない。(もちろん、重要なファクターではある。)
仮に、黒幕の持つアイテムが潜伏や隠密行動に特化した能力を持っていたとしたら
たとえ見張りがヒロインといえども見つからずにこそ泥の真似事もできるだろう。
「・・・それはそうだけど、その相手を私達は見つけなければいけないのよ?」
「わかってるよもう。とにかく、なんとかよその手まで借りないようがんばろう!」
「・・・えぇ、これ以上、闇姫様のお顔に泥を塗るような事は出来ないわ。」
「ん、その意気!」

そんなこんなで、いつもと同じ時間の電車に乗り、赤口町に到着すると、
うちの学校の制服を着た生徒達がいっせいに降りる。
「ご両人、おはよう!」と声がして、
理奈が私と雪姫の間に入るように後ろから肩に手を乗っけて来た。
「おはよー。」「・・・おはよう。」
「翔子〜!英語の宿題やった?」
・・・忘れてたよ。
「クックックックッ、その顔色、やっぱり忘れてたな?」
「変な笑い方するな、つか、アンタはやってきたの?」
「やってこなければこんなことわざわざ訊くかって!」
そういって勝ち誇ったように笑う理奈。
「ほう、そりゃ珍しいこともあるもんだね。この、裏切り者。」
「ふ〜ん、見せてあげようかと思ったけどやめようかな・・・。」
「へっ、岸部君に見せて貰うもんね。」
「忘れたかね、彼は朝練だよ・・・。」
くっ、このアマ。
・・・などと馬鹿話を繰り広げていると、佐伯君が私たちの横を通り過ぎていった。
なんか、うつむいて歩いているから気が付いてないのだろうか。
「おーい、さえきーー!」
理奈は佐伯君にも声をかけたが、それすら聞こえなかったのか、すたこらと行ってしまった。
「ちっ、あいつめ。ま、仕方ないか・・・」
理奈が舌打ちすると今度は井上理沙さんが後ろからやってくる。
みんなだいたいこの電車に乗るみたいだからそれぞれ会うのは珍しい事じゃないけど、
今日みたいにオンパレードはなかなか無い。
「おはよう、佐伯君、最近元気ないよね・・・。」
「うん・・・今は、しかたないよね。」
佐伯君、なんかあったのだろうか。
「彼、どうしたの?」
「ああ、アイツさぁ、ほら、長谷川さんのファンだから。」
「う・・・。」
二人とも気が付いてなかったが、その名前を聞いて雪姫も一瞬ぴくっと眉を動かした。

「まあ、そういうこと。」
私が言葉を詰まらせた意味を誤解しているが、まあ、あえて訂正することもない。
やれやれ・・・その長谷川さんが私達の標的というわけね・・・。
「じゃ、同じ部員なんだし、理奈が励ましてあげればー?」
「いやー、そいつぁ、一文字違いの、このお人の仕事でしょう。」
そう言ってニヤリと笑って井上さんの方を意味ありげに見る理奈。
「理奈っ!!!」
顔を真っ赤にして怒る井上さんとニヤニヤしながら私の陰に隠れる理奈。

「そっか、井上さん、佐伯君のこと・・・。」
私がそう言うと顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
おぼこい子だのう・・・。
「でも、長谷川さんがあんなことになって・・・頭から離れなくなっちゃったみたい。」
「こないださあ、理沙が、アイツを励ましてやろうと、みんなで遊びに行こうって企画したんだけど、
アイツだけこないのさ。まったく、佐伯のくせに女泣かせちゃって。」
「そりゃ重症だね・・・。」
「もうっ、しかたないじゃない。好きな人があんな事になっちゃったら誰だって・・・」
井上さん、声を詰まらせて少し涙ぐんでしまった。

「こら、理奈、アンタまで泣かすんじゃないよ。」
「わわ、理沙ごめんね!」
結局、二人で井上さんを慰めながら学校に行く羽目になり(雪姫はもちろん一緒に歩いてるだけだ)、
遅刻ギリギリで学校に着いたため、宿題を写すヒマもなくて私は先生に怒られることになる。

ま、それはいいのだけど・・・なんだか因果な仕事になってきたねぇ。



To be continued...

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