自転車放浪記 2

奈良へ行こう

我が愛車「晴走雨走」号(命名ヒライ様

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北は京都まで行った

西は神戸三宮まで行った

私、隠居主務は自転車を駆り、大阪周辺の各地を走破してきた

しかし、こと東の方角に向かっては

東大阪、大東、四条畷等を周遊したことはあるものの

大きな遠征を行った事は一度もなかった

大阪と奈良の間に横たわる生駒山が我が行く手を阻んでいるからである

しかし、たった山ひとつの為に隣の県にすら行けないなどという事は

自転車乗りとしての矜持が許さない

私はバイトの休みを利用して、奈良への遠征を決行したのである

京都遠征と同じく、今回も京橋からの出発である

京橋のすぐ隣の蒲生四丁目交差点から東へ延びる府道8号線が

生駒山の麓までほぼまっすぐに伸びているからだ

このことは既に何度かこの道を通って

生駒山の近くにまで行ったことがあるので先刻承知である

途中コンビニで飲み物を買うなどしながら、ゆっくり自転車を走らせること一時間

生駒山の麓、阪奈道路の入口に到着した

ここまでは大阪平野の中であったから道も平坦であったが

この先は生駒山を登りきるまで上り坂が続く

延々と上り坂が続くため、自転車を押して進む事を余儀なくされる

道が山の中に入って民家がなくなると、それに伴って歩道も途絶えた

曲がりくねった上り道の、端のわずかな部分を自転車を押して歩く

しかし、この道は奈良と大阪を結ぶ大きな道のひとつであるので交通量が多い

後からは大型の車が来るたびに、ガードレールに寄り添うようにして端に寄った

上の写真の道はまっすぐであるが

これは道が曲がりくねっている所は危険なので

悠長に立ち止まって写真を撮るわけには行かなかったからである

 

季節は冬だというのにもう汗だくである

上着はもちろん中の服まで脱ぎ、長袖のシャツとその下のタンクトップのみとなって歩きつづける

40分ほど登ると、道の脇に歩道があらわれたので車の脅威は去ったが

上り坂はまだまだ続く

あぁ、私は何故こんな苦労をして山を登っているのだろうか

奈良に行くのであれば近鉄電車に乗ればよい

山道を自転車押して登っても何の意味もないではないか

そんな考えが頭をよぎる

しかし、ここまで来て引き返すわけには行かない 前進あるのみである

 

幸いなことに上り坂は徐々になだらかになり始め

普通に自転車を漕いで進めるところも出始めた

そして眼前に現れる信貴生駒スカイラインの入口

このスカイラインは生駒山の尾根を南北に走る道である

ということは後は下り坂のみ

脱いでいた上着を着込み、一気呵成に駆け下る

長い下り坂で普通なら自転車ではありえないほどに加速する

しかし、我が「晴走雨走」号は普通の自転車でしかない

制御できないスピードにならぬようブレーキを握り締めて下っていく

それでも相当なスピードが出ているので、ブレーキがいかれてしまわないか心配であった

さっきまでブレーキの心配をしていたのに、いきなりフルブレーキング

奈良県に入ったことを示す標識を発見したのである

ただちに「晴走雨走」号をとめて写真を撮影

私はついに奈良県に突入したのだ

さらば、大阪 さらば生駒山

奈良に入ってしばらくすると、道が上の写真のようになってしまった

高速道路さながらのこの道は明らかに自転車で走るところではない

が、この道が奈良への最短ルートであるということはわかっているので

そのまま路側帯を突っ走る

といっても上り坂と下り坂が交互に来るので

上りのときは自転車を押して歩くのであるが

 

しばらく行くとなぜか道の端にゲーセンを発見

こんな車しか通らなさそうなところで営業して儲かるのか、とは思ったが

ちょうどいいのでここで一休み

まずトイレを借り、トイレを借りただけで去るのもなんなので

1ゲームだけプレイして出発しようとしたところで

友人から電話がかかってくる

「今どこにいる?」という問いに「奈良県生駒市」と答えると

「お前は何をやってるんだ」と怒られた

 

休憩を終えて出発、またも路側帯を突っ走る

道はどこまでもまっすぐで非常に走りやすい

途中で1車線を規制して測量を行っているところがあったが

車が渋滞とまではいかないまでも、それなりに混んでいるその脇を

すいすいと自転車で走り抜けた

 

快調に走っていると安全運転を訴える看板を見かけた

「調子に乗るな 一寸先は闇」ということらしいが

一緒に描いてある絵が銚子に乗った一寸法師であった

写真を撮ろうかとも思ったが

看板は道の反対側にあり、道をわたる手段がないので断念した

 

そうこうしているうちに市街地に入る

道は平坦だし歩道もあるし、大阪みたいに放置自転車や歩行者も少ないので

走りやすいことこの上ない

快調に走っているといきなり左手に現れたのが下の写真の朱雀門

最近復元されたこの朱雀門は

ほとんど国産の木材を使って当時の工法に近い手法で建てられているということであるが

耐震強度の都合上、見えないところに鉄板やステンレスを使って補強してあるらしい

平城宮跡が広大な原っぱのまま保存されている中に

間口25m、奥行10m、高さ22mの朱雀門だけがそびえ立っている風景は

異様といえば異様であった

 

さらに自転車を走らせ、旧奈良そごうの前を通る

トイレの手洗いの蛇口が金で出来ているという金満の権化みたいな建物であるが

今はフェンスで囲まれて人気もなかった

 

そしてついに目的地、奈良公園に到達

信号が青なのに車が止まっているので、何でかと思ってよく見たら

鹿が道を渡っている

さすが、鹿注意の看板は伊達ではない

ここでは車より鹿のほうがエライのである

 

ここの鹿は野生動物であると看板に書いてあったのであるが

野生を名乗るのがおこがましいと思えるほどに人に馴れている

この「奈良へ行こう」のTOP用に鹿と「晴走雨走」号の写真を撮ろうと

鹿のすぐ横に自転車を止めたのであるが

鹿は私の姿を一瞥しただけであった

 

まずは興福寺へ行って五重塔をバックに記念撮影

京都の東寺の五重塔に次いで2番目に高い塔であるらしい

天平2年(730)聖武天皇の皇后にして藤原不比等の娘、光明皇后が建立したのがはじめなれど

その後5回の焼失・再建をへて、現在のものは応永33年(1426)頃再建されたそうであるが

それより写真を撮ろうとしゃがみ込んだら

足元に鹿のフンが大量に落ちていて嫌な気分であった

 

奈良公園内を走っていると通行人に道を訊かれた

自転車なんぞに乗っているから近所の人間だと思われたらしい

大阪から自転車で来たというとえらく驚かれてしまった

 

奈良に多くの寺社仏閣あれど、いちばん有名なのはやはり東大寺

ということで東大寺へも行った

まず手始めに南大門の前で写真を撮る

門の高さは基壇上25.46m、日本最大の山門である南大門

現存するものは鎌倉時代に作られたものだそうだ

 

続いて金剛力士像の写真撮影を敢行すべく

南大門の下へ自転車を担いで突入した

観光客が写真を撮っている後で、自転車と一緒に順番待ち

「あの人何してるんだろう」と言いたげな目で見られた

ちなみに上の写真は阿形像

 

しかし、「晴走雨走」号とともに行けるのはここまで

自転車で大仏殿には入れない

拝観料が500円もしてもったいない気もしたがせっかくなので入ってみた

まあ、入るのは初めてではないけれど

 

というわけで大仏殿である

世界最大の木造建築の名に相応しい威容を誇るが

なにやら工事中のようで足場が組んであった

屋根の上をやたらカラスが飛び回っているのがちょっとやな感じ

 

で、大仏をはじめとする仏像の写真も撮るには撮ったのであるが

私の持っていたスナップ用のカメラでは

屋内では暗くて鮮明には写らない

どうしても大仏が見たいんじゃぁ、という方はこちらをお薦めする

 

殿内の北東にある、大仏の鼻の穴と同じ大きさの穴があいている柱

くぐり抜けられると幸運を授かるらしいが

身長185cm体重92kgの私には無理だろう

でもただ穴だけの写真を撮るのも虚しいので

団体の観光客が大騒ぎして穴を通っているところを勝手に撮影してきた

穴を通っているのは若い女性

引っ張り出す役のおっさんは役得である

 

東大寺にあるもうひとつの有名な建物といえば正倉院

自転車進入禁止とあったから徒歩にて見に行ってみると

売店の老人以外にだれも人がいなかったので一旦戻って自転車で突入

正倉院をバックに「晴走雨走」号を撮影して逃亡した

 

さて、当初の目標は果したことだし、そろそろ帰路につかなければならない

遅い昼食を食べながら道路地図を眺めて帰りのルートを考える

来た道を引き返すのが一番早いが

そうすると今は冬で日が短いために

日が暮れるか暮れないかの薄暗い時間帯に

曲がりくねった山道を駆け下る事となり非常に危険であるし

もう一度生駒山を登るのは骨が折れる

というわけで遠回りにはなるが生駒山を南に迂回して帰ることとする

秋篠川という川に沿って進めば途中には唐招提寺や薬師寺もあるので

ちょっと寄り道してみてもいい

 

と思ったら唐招提寺は平成大修理だとかで工事中であったので

やむなく寺の前を素通りした

コンピューターグラフィックスを駆使した画像で寺の様子を再現する

「唐招提寺金堂液晶映像シアター」なるものがあるらしいが、別に見に行かなかった

 

続いて薬師寺であるが、こちらも伽藍復興の工事中

でも裏に回って写真を撮った

拝観料が800円もするので中には入らなかったが

50人くらいの団体客がいたので紛れて入ることは不可能ではなかった

まあ、そんなことしないけど

 

そして私と「晴走雨走」号は南下を続ける

いつしか奈良市を出て大和郡山市に突入

郡山城跡の脇を通り抜けて進撃を続ける

次第に景色が田舎っぽくなtっていき

そしてついに聖徳太子ゆかりの斑鳩の地に至った

ここまできたら法隆寺にも寄っていくしかあるめぇよ

というわけで法隆寺に到達

されど拝観料は1000円と薬師寺に輪をかけて高く

やむなく廻廊の外から記念撮影をするだけにした

別に寺社仏閣の写真集を作っているわけではないし

自転車でそこまで行ったという事実こそが重要であるからこれでよいのである

 

そろそろ日も暮れ始めた

さっき法隆寺に到着したばかりであるが、あまりゆっくりもしていられない

法隆寺を後にして、一路大阪を目指して出発である

時刻は4時半

大阪までの距離は33km

私と「晴走雨走」号の最後の戦いが始まった

 

いくら生駒山を迂回したとはいえ、多少の坂道は覚悟していたのであるが

思ったよりも楽な道のりであった

国道25号線は王寺町から大和川に沿って大阪へ延びていた

川沿いを進めば途中で上り坂に出くわす可能性もない

あとは道なりに突き進むのみである

しかし、県境に近づくにつれて民家が減っていく

そしてついに歩道までもが消滅

またも車道の脇を走ることを余儀なくされたが

県境を越えて大阪府に入り、しばらく走ると歩道が復活

あとは大阪目指してただひたすら走るのみ

柏原市、八尾市と通り向けて中央環状線を突破して大阪市内に入る

難波まで9kmという標識を見て、ゴールは難波ということに決めてさらに走る

寺田町駅の下をくぐり、とうとう環状線内に戻ってきた

そうだ、私は帰ってきた 大阪に帰ってきたのだ

で、途中で気が変わって方向転換

そして時刻は6時45分、難波に行かずに辿り着いたのは四天王寺

聖徳太子ゆかりの寺であるから、この旅の終着点に相応しかろう

 

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