ラグナ記
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八回目「わが友エルダ」
私は一人、あてもなく森を歩いていたのです
すると、木の陰より私を見つめるモンスターが一匹
エルダウィローという木のモンスターです
エルダのまなざしがあまりに寂しげだったので、私は思わず声をかけました
今にして思えば、私自身も寂しかったのだと思います
いつしか私のエルダの間には友情が芽生えていました
同じ寂しさを持つもの同士、感じるところがあったのでしょう
私はエルダと共に森を散歩し、時にはじゃれ合ったりして
毎日思いっきり遊びまわりました
私はエルダといて幸せでした
エルダもきっと幸せだったと思います
一人と一匹は、互いにとってなくてはならない存在になっていきました
しかし、幸せなときはそう長くは続かなかったのです
道行く人がエルダの姿を見て驚き、時には攻撃をしかけてきたりしました
人とモンスターとが一緒に暮らすことなど許されなかったのです
「いずれ誰かの手にかかるのなら、この私が」
私はエルダを自らの手で伐採し、タンス工場に送ることにしました
エルダは哀しげな目をしていました
私は泣きながら剣を振り下ろしました
「さようなら……エルダ」
伐採されたエルダはタンスとして第二の人生を歩み始めました
私にとっても、エルダにとっても、これでよかったのだと思います
でも、私は時折、エルダの絵を眺めて楽しかった日々を思い出すのです
ではまた
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