ラグナ記

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131回目「千葉松本」

 

 のう、騎士よ ペットを飼おうと思うのじゃ

 は? ペットでございますか
      ろくに政務も見ずに道楽ばかりのくせにまだ余計な金を……
      あーいや、それで何を飼うおつもりで?
 実は、このあいだお忍びで城下に遊びに行ってな
      そのときに適当な卵を買ってきてあるんじゃ
 (王が気軽に外に遊びに行くなよ……)

 それでじゃな、この卵はそちがワシに代わって育てるのじゃ

 は? 陛下、それではペットを飼うということにはなりません
      自分で世話してこそのペットでございます
 んー、世話とかそういうのは別にイラン
      朕はただペットを可愛がりたいだけ 面倒なのはごめんじゃ
      親密度が最高値になったらつれて参れ
 (この愚王、チワワなんかをかわいいから飼い始めて
       糞がくさいとか夜吠えるとか言って捨てたりするタイプかね)
 それでは頼んだぞ


 愚王め、この私にペットの世話だと!? どうしようもない馬鹿だな
      ……ところで、これは何の卵か 愚王は何も言ってなかったな
      ふむ、とりあえず孵化させてみるか

 スポアで、名前が「中華キャノン」か……
      なんと品性下劣なペットだ まあ、愚王にはお似合いかな
 上官殿、よろしくお願いいたします!

 おぅ、こやつ喋りおる もう親密度は最高ではないか
      では別に私が何かしてやる事もないか
      まあ、せっかくだから私が住むゲフェンの町を案内してやろう
 はっ! 上官殿 ありがとうございます

 ふむ、名前はアレだが態度は慇懃だな、気に入った ついて参れ

 上官殿、これは屋台ですね しかし、店員がおりません

 ふむ、よく田舎に野菜の無人販売所というのがあるだろう
      これは魚の無人販売所だな 生魚でこんなことしていいもんだろうか?
 上官殿、自分の胞子が魚にかかってしまいました
      3時間以内にキノコが繁殖し始めます
 なんと、それではスポアの無人販売所になってしまうな
      見つかる前に退散するぞ
 上官殿、次はどこに行くでありますか?

 うむ、この町には魔術師のギルドがあるからな
      そこにつれてってやる

 おっと、こんなところに見慣れぬ子供が……

 僕はセス 折り紙が好きなんだよ

 上官殿、無邪気な子供であります

 今日は先生がきれいなお花の作り方を教えてくれたの
      ちっちゃくてかわいくて、髪に飾ったらぜったいみんな喜ぶよ
      おじちゃんにも作ってあげるよー
 おじちゃんだと!? ふざけるな 花の髪飾りなんぞいるか!

 えーん、えーん

 上官殿! 子供を泣かすなんて酷いであります!

 あれは甘やかされた子供だ
      誰もが自分のことを可愛がってくれると思っておる
      しかし、世の中はそんなもんじゃない
      誰にでも甘えていては痛い目を見ることになる
      それを教えてやったまでだ
 そうだったでありますか!
      さすがは上官殿 その深謀は自分の及ぶところではございません
 うむ、わかればよい さあ、魔術師ギルドについたぞ

 ふむ、マジシャンはいい 露出が高くて可愛くて
      えんこちゃんも昔はこんなだったのに……
 上官殿、女の子をじっと眺めるというのは
      あまり誉められた行為ではないのではないでしょうか?
 魔術師の女の子の向こうに魔術の神秘とかいろいろ感じておるのだ
      決して女の子だけを眺めていたのではないぞ
 そうでありましたか
      では自分も魔術の神秘を感じてみたいと思います(クンクン
 こら、なに嗅いでるんだ!

 いや、甘い香りがしたもので…… 嗅ぐのはダメでありましたか

 うむ、見るのはよいが嗅ぐのは微妙なところだな
      ちなみに触るのはダメだ 覚えておけ
 承知いたしました 上官殿といると勉強になります

 うむ、そうだろうそうだろう

 ところで上官殿
      ゲフェンにはブラックスミスのギルドもあったと思いますが
      そちらには行かないのでありますか?
 あそこはおっさんしかおらん 行っても楽しくない

 ……そうでありますか

 さて、軽くゲフェンダンジョンでも流してから
      首都に行くとするか ついて参れ
 ダンジョンでありますか!
      上官殿の剣捌き、この目に焼き付けるであります
 ふん、そんな大層なものではない
      AGI騎士だからな ちょっと速いだけだ

 ウィスパーくらいで騒ぐでない

 ふん、おだてても何も出んぞ
      このゲフェンダンジョンは私の庭のようなものだ
      どんな敵が来ようとも……

 おっとっと、ドッペルゲンガーがおるな

 ふむ、その通りだ 私もドッペルには手出しはせんけどな
      さて、そろそろ引き上げるとするか

 

 さあ陛下、こやつがあなた様のペット、スポアの中華キャノンでございます
      ご命令どおり親密度最大の状態でつれてまいりました
 なんじゃ、この薄汚いキノコは!
      おまけに名前が中華キャノンじゃと? なんと下品な名前なのじゃ
      そのような汚れたものなど見とうもないわ!
 しかし陛下、こやつは陛下が直々にお求めになられたペットですぞ

 そんなことなど知ったことか
      こんなものはゴミタメにでも捨てておけ!
 国王陛下とはいえ、あまりといえばあまりのお言葉
      上官殿、自分は、自分は……
 愚王めが…… キャノンよ、まあ黙ってみておれ
      陛下! それは聡明な陛下のお言葉とは思えませんな!
 なんじゃと?

 たしかに外見はよくないかもしれませぬ
      しかし、王たるものが自ら飼うと決めたものを捨てる
      これは民草や臣下の目にはどう映りますかな

 むむむ、どう映るというのだ

 何かあれば自分たちもあのペットと同じように
      陛下に見捨てられてしまうのではないかと猜疑心を覚えるでしょう
      そうなれば皆の忠誠心は薄れ、臣民は働かず税を納めず
      臣下は陛下の命に従わぬようになるのではありますまいか?
 ぐぬ、そちの申す通りじゃ…… 朕が間違っておった

 この中華キャノン、まじめでよい奴です
      可愛がってくださいませ
 上官どのぉ、ありがとうございますぅ……(涙

 うむ、陛下のもとでも達者で暮らせよ


 陛下、中華キャノンを飼われてから一ヶ月ほど経ちますが
      可愛がっていただいておりますかな?
 可愛がるもなにも、あやつのせいで朕のパンツにキノコが生えたわ!

 あっはっは、サルマタケでございますな
      ラーメンに入れて食べると美味いらしいですぞ
 食うかそんなもんっ!


ではまた

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