ラグナ記

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139回目「フェイヨン解放戦線」

 朕の治績を後世に残さねばならん

 は? いきなり何をおっしゃいますやら

 朕は偉大な王である
      その偉業を示す一大事業を興すのだ
 ろくに政務もとらず
      趣味で国民の結婚式の面倒みてるだけなのに……げふんげふん
 ついては夏の離宮をフェイヨンに造営する
      末代まで宮殿というものの模範となるようなものを築くのだ
 はて、そのような事業を行う財源がございましたでしょうか?

 そのようなもの、現地で税を取り立てればよいではないか
      フェイヨンの代官であるその方の仕事であるぞ
 おそれながら陛下、フェイヨンの民は決して豊かではございませぬ
      (重税をかけて上米をはねておるからな)
      そのような負担をかけては民草の生活が成り立ちませぬ
      (生かさず殺さずの絶妙のバランスが崩れてしまうではないか)
 騎士殿、その程度の取り立てもできぬようでは
      代官たる資格がないのではございませぬか?
 む、何者……ネプチューンマン?

 いかにも

 「いかにも」なのか……

 陛下、私は陛下の偉大な事業をお助けしたいと思っております
      私めにフェイヨンの代官の任をお申し付けください
 貴様! フェイヨンの代官は私だぞ!

 朕は朕の事業の助けとなるものを取り立てたい
      ネプチューンマンをフェイヨンの代官とする
 ははぁ、ありがたきしあわせ

 騎士よ、朕に意見するような愚か者は臣下にいらぬ
      しばらく故郷のゲフェンで蟄居しておれ
 なんと! そのような沙汰は納得できませぬ

 フフフ 騎士殿、陛下の御前で見苦しいですぞ
      貴公は蟄居を命じられたのだ おとなしくこの場をさりなされ
 ……太鼓持ちが調子に乗りおって、覚えておれよ

 

 フェイヨン代官の地位を失うとは……
      援助交際の財源が絶たれてしまったではないか
 なんですって!

 あ、えんこちゃん

 地位と財源を失ったですって?
      それじゃわたしに対する援助はどうするつもりよ
 いや、それはこれから考えるところで……

 何をのんきなことを言ってるの!
      力のないパパなんて援助交際する意味もないのよ!
 そ、そんな! えんこちゃんまで私を見捨てるというのか

 うふふ、そう慌てないで
      わたしに策があるの ちょっと聞いてくれるかしら
 ……ふむふむ、なるほどわかった
      同じフェイヨンを手放すのであれば、そのほうがいい
      しかし、それは危険な策だな
 さっきも言ったでしょ、力のないパパなんてパパじゃないのよ
      危険を冒してでもやるべきじゃないかしら
 そうだな、いっちょやるか、手助けは頼めるのだろうね

 うふふ、もちろんよ じゃあ、さっそく動きましょう

 

 働け働けぇ! 国王陛下は闇がお嫌いじゃあ!
      光り輝く宮殿を建てるのだ、働けぃ!
 前の代官も税の取り立ては厳しかったが
      今度の代官は酷すぎる ワシらを奴隷とでも思っているのか!
 そこ! なにをごちゃごちゃ言っておるか!

 ゴホゴホ…… 

 おねえさま、大丈夫?

 大丈夫よ、むにぃ ちょっとむせただけだから心配しないで……

 よーし、今日の作業は終わりだ 明日に備えてじっくり休めよ フフフ

 おねえさま、早く帰って休みましょう

 そうね、ゴホゴホ……

 さあ、ご飯の用意をしなくちゃね
      むにぃの大好きな麻婆豆腐にしましょうね、ゴホゴホ……
 おねえさまは休んでて、わたしが食事の用意をするから

 フン、このほったて小屋はなんだ 無様にもほどがある

 あっ、騎士……

 くそー、何しに来たんだー わたしたちを笑いにきたのかー

 そう敵視されても困るな
      私はフェイヨンの代官を外されて、もう統治にはかかわっておらん
      ただ、元代官として状況が気になったから見にきただけだ
 ……状況もなにも、新しい代官が来てからというもの
      重税と強制労働でまともな暮らしなんて出来やしないわ
      あなたの時も酷かったけど、今は生きていくことすらも……
 フン、そうだろう
      私がお前たちが倒れぬよう王の圧政から守ってやっていたのだからな
 なんだとー、うそばっかりいってー

 ……いや、そうかも知れませんね
      今の暮らしに比べたらマシだったもの
      でも、俄かには信じられないわね
 まあ、信じる信じないは勝手だ
      それより私に対してしたように、反抗してはみせんのか
 もう、そんな気力なんか……ゴホゴホ

 おねえさま、しっかりー!

 フン、哀れよの しかし、また人間らしい生活をしてみたいなら
      この私に協力してみんか?


 フェイヨンの離宮もとうとう完成か よくやったぞ

 お褒めに与り光栄です しかし、まだまだがんばりますぞ
      まだ工事の借入金がありますからな
      税を絞るだけ絞ってやりますぞ!
 大変です!

 なんだ、騒々しい

 フェイヨンで反乱が起きました
      首謀者は頭にリンゴを載せていたとの目撃情報あり!
 うぬぬ、騎士めか 朕に反旗を翻すとは愚かな
      ネプチューンよ、直ちにフェイヨンに戻り騎士を討て!
 かしこまりました!

 

 王様、およびです?

 おー、かわいいのぅ じゃすこはこんなかわいい顔をしておったか
      前の叙任式のときは兜のせいで見えんかったからのぅ うんうん
 王様、じゃすこかわいいですぅ? てれるですぅ

 うむ、孫にしたいくらいじゃ 可愛いぞい!
      で、用件であるが
      実はフェイヨンで反乱が起きたのじゃ
      そちも鎮圧軍に加わって戦うのじゃ
 承知したです じゃすこは戦うですぅ

 最近の戦果は朕の耳にも届いておる そちの能力に期待しておるぞ
      帰ったら朕、いや、おじいちゃんにそのお顔をまた見せておくれ
 わかったです また王様のところにくるです(退場

 ……おじいちゃんって呼んでほしかったのぅ

 

 というわけでフェイヨンに行くです
      ぼんごんも一緒に来るです
 フェイヨンで反乱かぁ
      一緒に行くけど、先に実家に寄ってもいいかな
      おねーちゃんたちが心配なんだ
 わかったです あとから合流するです 城で待ってるですぅ
      それじゃ、行くですぅ!

 

 

 フン、反乱討伐軍というのはこいつらか

 わたしも戦ったほうがいいかなー?

 いらぬ、ただついて来ていればそれでよい

 じゃあそうするー

 戦場の真中でぼーっとするなー!

 おねーちゃーん!

 ぼんごん!

 反乱軍っておねーちゃんたちだったの?

 うむ、そうだ

 あ、騎士…… きさまー!

 まって、今は味方ー!

 ……どういうこと? この騎士は僕らの村を搾取してたんじゃ?

 今はフェイヨン解放戦線の総司令官だ

 総帥はそひーおねえさま 故郷フェイヨンのために戦ってるよー

 お前はぼーっとしてただけだろう……

 そひーおねえさまが総帥…… おねえさまはどこにいるの?

 ここにいるわよ、ぼんごん ゴホゴホ

 おねえさま、咳き込んだりしてどうしたの!?

 総帥は今のフェイヨン代官ネプチューンによる強制労働によって
      肺病を患っておられる
 ぼんごん、私たちと共に戦ってください ゴホゴホ

 わかったよおねえさま、戦うよ
      だから今はゆっくり休んでー!
 前線を押し上げる 宮殿の城門に攻撃をかけるぞ!

 

 ぐぬぬ、反乱軍め やりおるわ……
      国王陛下からの援軍はまだ来ぬのか!
      屈強のクルセイダーをよこすと言っておったのに
 遅くなったです ごめんです

 貴様が援軍のクルセイダーか? こんな小娘が援軍とは……

 じゃすこは鉄壁のVITクルセイダーです
      小娘とかいっちゃだめですぅ
 小娘を小娘と言って何が悪い!
      だいたい来るのが遅いではないか! 何をしておったのじゃ!
 じゃすこは一生懸命走ってきたですぅ

 ええぃ、このノロマめ とっとと城門の守りにつけぃ!
      クソッ、陛下はなぜまともな援軍をよこさぬのだ……
 じゃすこはとっても堅いのにですぅ……

 

 よし、城門を攻撃するぞ
      すまんな、みんなの命をくれ・・・!
 ここは一歩も通さないですぅ!

 その声は……じゃすこちゃん?

 ぼんごんが反乱軍にいるです 裏切り者です?

 ちがうよ、僕らは悪い代官からフェイヨンを開放しにきたんだよ

 確かにあの代官は悪い奴みたいですぅ でも……
      はわわ、あこがれのリンゴ騎士さまもいるですぅ
 聞け!騎士団の勇者達よ!
      今日、この日を、フェイヨンの最良の日としたい。
      代官ネプチューンは圧政者である。悪い奴ということだ。
      私の後に続いて叩きのめすのだ。
 かっこいいですぅ じゃすこは騎士さまに続くですぅ!

 おのれ小娘、裏切ったな!

 裏切ってないです じゃすこは悪い代官を倒すですぅ

 悪代官めー 覚悟しろー

 おまえはなにもしてないと言うのに……
      それにしてもネプチューンよ 貴様の防衛軍は脆いものだな
 国王陛下がまともな援軍をよこしておればこんなことには!

 じゃすこはまともな援軍だったのにですぅ

 愚か者め、太鼓持ちしか脳のないお前が指揮官では
      どんな優秀な兵がおっても同じことよ
      さあ、その席をあけてもらおう
      我々はここにフェイヨン自治政府の樹立を宣言する!
 こんなことをしても、すぐに首都から討伐軍が来て終わりだぞ!

 フン、そんなもの、既に対策済みだ
      貴様にはコモドファロスの灯台守の任を与えてやる
      辺境でゆっくり余生を過ごすが良い ククク
      

 

 栄光あるソロ軍団の兵士達よ!
      かつて我々を、暗黒の世界に押しやった者どもは、今我々の足元にいる
      愚かな国王に思い知らせる時がきたのだ
      って言えっておねーちゃんがいったー!
 最後のは余計よ バカッ!

 今やプロンテラ城は我々ソロ軍団のものだと!
      機は熟した、共に戦おう、ソロ軍団の為に!ソロ軍団の栄光の為に!
      って言えっておねーちゃんがいったー!
 だから最後のは余計だってば!
      でしこも一応騎士だから隊長役にって思ったけど……ほんとにバカね

 なんでもいいや、ともかくいくぞ ヒザマヅケー!

 おー! いくぞー!
      我らソロ軍団の力を愚王に思い知らせるのだー!
 なんで盛り上がってるのかしら、この人たち?
      でもまあ、王を守るべき兵を抱き込んだんだから
      もうこっちのものね うふふ

 貴様が王様かー ヒザマヅケー!

 なんで国王たる朕が跪かねばならんのじゃ!
      狼藉者じゃ、ものども出あえ!
 あらあら、バカな王様ね
      この期に及んでまだ自分の置かれた立場がわかんないのかしら?
 なんじゃと? どういうことじゃ?

 プロンテラ城の兵力はすべて我々フェイヨン解放戦線の傘下に入ったわ
      なんて人望のない王様なのかしら
      あっさり行き過ぎてビックリしちゃった
 おおぅ、なんということじゃ……

 うふふ、治績を後世に残そうなんてバカなこと考えないで
      結婚式の司会でもしてればよかったのよ
 ヒャッハー! 王様ヒザマヅケー!


ではまた

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