ラグナ記

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164回目「アルデバランの薔薇」

 

 何故だ 何故なのだ!

 旦那様、如何なさいました?

 名門オウル公爵家に生まれたこの私が
      何故一介の地方領主に甘んじなければならないのだ
 オウル公爵家が地方領主の家系だからじゃないんですか?

 ならば、かの騎士! リンゴを頭に載せたあの男!
      一介の騎士に過ぎなかった彼奴が王城で権勢をふるうのは何故だ
 んー 戦功と政治力の賜物ですかね?

 そんな事は知ったことか!
      国王陛下のお側には、下賎な騎士などより名門の私のほうが相応しい
      彼奴めを追い払って身の程をわからせてやる
 別に地方領主でいいでしょう
      一生平穏に暮らせるんですし
 男たるもの、天下を目指さんでどうする!
      愚かな庶民どもを牛耳るぞ!
 なるほど、さすがは旦那様 素晴らしい心意気です
      しかし、ろくな兵力もないのに、何をするおつもりで?
 アルデバランに時計塔があるだろう

 あの巨大な時計を動かしている動力は何だと思う?

 んー、ゼンマイとか?

 そんなもので動くか! あれは魔力で動いておる
      あの時計塔は、莫大な魔力を持っているのだ
      私は研究の結果、魔力で動く機械人形を作り出す術を編み出した
 機械人形? そんなもので大丈夫なんですかね?

 安心しろ この術は強力な機械人形をいくらでも量産できる
      再編中のプロンテラ騎士団など敵ではない
      しかし、一つ問題がある
      術を使うためには、時計塔を占拠せねばならんのだが……
 アルデバランには強力なソロ軍団が駐屯しております

 そうだ それが問題だ

 ふーむ…… 
      そういえばアルデバランには錬金術師ギルドがあります
      彼らを利用して、ソロ軍団に陽動をかけるのは如何でしょう?

…………………………………………………………………


 おい リンゴを知っているか?

 リンゴ? えぇ、知ってますよ

 そうか リンゴはどこだ 教えてくれ

 向こうの果物屋さんにあると思いますわ
      そんなにリンゴが食べたいんですか?
 リンゴは食べ物ではない!

 きゃっ なんなのこの人……(退場

 リンゴは食べ物ではない
      しかしリンゴは果物で、果物は食べ物のはず
      わたしはどこで間違えたのか……
 おや、あぷりコット様?

 わたしの名を知っている、お前は誰だ

 私はソロ軍団の団員A
      あなたは私を知らなくても、私はあなたを知っていますよ
 なんだそれは 最近流行りのストーカーか?

 ちがいますよ あなたはソロ軍団の間では有名ですからね
      自己完結なAGI型でソロプレイにぴったりですし
      ソロ軍団にスカウトしようって話もあります
 ソロ軍団、えんこの妹の軍団か
      最強の修羅の妹、おそろしい
 おそろしいだなんてとんでもない
      でしこ軍団長はソロ軍団員の気持ちを
      一番わかっていてくださる優しいお方ですよ
      なんでしたらお会いしてみては如何ですか?
 顔は見たことがあるが、あまり話をしたことがない 会おう

 あぷりん、にゃっす♪
      ソロ軍団長にしてアルデバラン駐屯軍司令官のでしこ様だぜー
      とっても偉いからヒザマヅケー!
 断る

 そっか ざんねん
      で、何しに来たー?
 知らん お前の部下に連れてこられた

 ふーん

 「ふーん」と言われても困る

 あの、でしこ様 有望なソロ戦闘員をスカウトしようって
      昨日会議で決めたじゃないですか
 知らない 寝てたもん

 ちゃんと話を聞いておいてくださいよ
      ともかく、新人勧誘活動のために私はですねぇ……
 うん、いいよ

 ……? 何がいいのでございましょう?

 わかんない 難しい事キライ

 ……はっ そうか
      ソロ軍団は各自が自己判断できるソロ戦士 
      ソロ1号の名にかけて、新人スカウトの件はお任せください
 うん ちゃんとやっといてー

 というわけで、あぷりコット殿 我等ソロ軍団に入団しませんか?

 ソロ軍団とは何をする軍団?

 「愛ゆえに、人は苦しまねばならぬ
       愛ゆえに、人は悲しまねばならぬ
       こんなに苦しいのなら悲しいのなら…… 愛などいらぬ!」
      という軍団です
 ……入団はやめておく

 そうですか……
      ソロ軍団の崇高な精神を感じて頂けなかったようで残念です
 お、失敗? じゃあ、罰ゲーム♪ 罰ゲーム♪

 でしこ様、申し訳ございません
      私の力不足でございました(土下座
 ヒザマヅイたー! ヒャッハー!

 怪しい集団…… アルデバランはこわいところ

 大変ですっ

 何事だ、ソロ2号

 町から南方の山中に食人植物が大量発生
      首都プロンテラからの交通が遮断されております
 ヒャッハー! 一大事ってヤツ、まってましたー!
      いでよ、ソロ軍団どもー!

 こいつら、集まるの早いな

 アルデバラン南方に食人植物が大量発生した
      ソロ軍団各員はその殲滅に向かえ!
 全軍出撃だー! ヒャッハー!

 我等無敵のソロ軍団! 出撃!(退場

 やかましい奴らだ 入団しなくて良かった

 助けてくださいー! ……あれ? 誰もいない

 誰もいないとはおかしなことだ わたしはここにいるのに

 あっ、ごめんなさい あなたは誰? ソロ軍団の人はどこ行ったの?

 わたしはあぷりコット ソロ軍団はさっき全軍出撃していった
      そしてお前は誰だ?
 私? 私はアルケミストのケミィよ

 アルケミストとはなんだ?

 アルケミストも知らないの?
      アルケミストってのは錬金術師の筈なんだけど
      露店を開いたり、薬や生物兵器を作ったりする何でも屋なのよ
 何でも屋、
ギャルゲーも作るのか?

 そんな事より私の大事な花子の素が盗まれちゃったよ!

 はぐらかされた で、花子の素とはなんだ?

 あなた質問ばっかりね
      花子ってのはねアルケミストギルドに蓄えていた食人植物の素よ
      口が大きくて歯茎が愛らしい花が咲くの
 花なのに歯茎? 変な花

 なんてヒドイ事を言うのかしら?
      あの美しさがわからないなんて、美的センスがない証拠よ!
      薔薇なんかよりも、もっともっと綺麗なんだから!
 修羅に美的センスなど必要ない
      南の方でも食人植物が大量発生してると言っていた
      それと関係あるのか?
 えー!? きっとそれよ 早く回収に行かなくちゃ!(退場 

 あわただしい人間ばかりいる町だ
      時計塔のせいで 時間に追われているのか?
 ふむ そうかも知れんな

 お前は、ポリン仮面
      ビックリするからいきなり現れるな
 私はお前の守護霊、お前のことを見守っていると言っただろう
      それに、
私も時間に追われているのでな
      でしこめ 簡単な陽動に引っかかりおって
 陽動? 何の事だ

 フクロウ公爵が時計塔を占拠した
      食人植物はそのためのオトリだ
 それは大変だな

 他人事のように言うな 公爵はクーデターを起こすつもりだ
      ソロ軍団がいない今、奴等を排除できるのはお前しかいない
      人助けの機会が来たぞ さあ行け、あぷりコット!
 断る

 断るな

 わたしは今 リンゴを探すのに忙しい
      リンゴと言えば ポリン仮面に聞きたいことが…
 リンゴがほしいのか ではくれてやる 食え

 (シャリ) すっぱいリンゴだな
      これが私の探していたリンゴか?
 それは間違いなくリンゴだ
      だからもう深く考えてはいかん
      あんまり考えると頭がパンクするぞ
 パンクはこまる 考えるのをやめよう

 リンゴが見つかってよかったな
      これでもう断る理由は無い 時計塔に行ってもらおう
 わかった まかせておけ

 そうそう あぷりよ、この上着を持って行け

 ポリン仮面は失礼なヤツだな

 なにが失礼なのだ

 これは男性用の服と書いてある

 うむ、そうだな 良く似合うと思うぞ

 重ね重ね失礼なヤツだ ポリン仮面は私が女だと知らないのか

 そりゃもちろん知ってるが
      ほら、某歌劇で一番黄色い声が飛ぶのは男装の女優だ
      あぷりにはそういうのが似合う
 なるほど、それなら許す これからわたしの事をオスカルと呼べ

 いや、呼ばんし
      それは風の力を持つ服だ きっとお前を守ってくれるだろう
 風の力とはどんな力だ 風邪ひいたりしないか? 
      それともライダーに変身したりするのか?
 風邪もライダーも関係ない
      静電気を帯びにくい上等の上着だから大事に着ろよ

 これが時計塔の入り口か
      辺境の町にこんな大きな時計、何のために作った?
 ハコモノ行政ってヤツだな 予算が余ったんだろう

 金が余るなら貯金すればいい

 それがそうも行かないのが世の中ってもんだ

 世の中には難しい事が多いな
      では、オスカルあぷりは出撃する
 そんなにオスカルと呼んでほしいのか……

 外見以上に大掛かりな機械 なんでこんなものが動く?

 それはこの時計塔に秘められた魔法の力ですよ

 お前は誰だ?

 私は公爵家の使用人
      旦那様に侵入者を通すなと命ぜられております
      塔の奥には進ませませんよ
 お前に修羅を止められるのか?

 いいえ、私には無理ですよ 荒事は苦手でしてね
      貴女の相手をするのは コレです

 これは、時計?

 時計塔の魔力で作られた怪物アラームに勝てますかね?

 こんなものにやられる修羅ではない

 ならばクロックも投入しましょう
      こいつの攻撃力はダテじゃありませんよ

 あたらなければどうということは無い

 機械人形を相手に なんて拳なんだ
      これじゃ止められないようですね それでは一時退却です
      旦那様、貴方のもとへ〜(逃亡
 奥に逃げた 情けないやつ

 使用人はこちらに逃げたと思ったが……
      なにやら意味ありげな台 上ってみる
 フフフフフ……

 よくぞここまで来られたな ほめてやる
      しかし、このオウル公爵の野望、庶民の貴様に止められるかな
 旦那様、かっこいいですよー

 悪の親玉気取り?

 う、うるさい!

 図星のようだ

 えぇい 貴様こそ正義の味方気取りではないか
      名を名乗るがよい!
 わたしは美少女モンク オスカルあぷり

 リリカルなのはみたいなものでしょうかね?

 違う タカラジェンヌ

 自分の事を美少女だとかタカラジェンヌだとか
      庶民の分際で、身のほど知らずにも程がある!

 取り囲め! 生意気な小娘をサツガイせよ!

 どっかの悪魔系バンドの真似か
      しかし、こいつらとはさっきも戦った どうということはない
 では貴族の礼に則って、この私が相手をしてやる
      華麗なる公爵の魔法を受けよ! サンダーボルトっ!

 出た! 旦那様得意の電撃魔法! これを喰らえばあんな奴イチコロ……

 そんなに痛くない

 ……のはずなんですけどねぇ?

 その上着は風属性だな? そいつが私の電撃を和らげたのか

 ポリン仮面が静電気を帯びにくいと言っていたからな
      よし、今度はこっちの番だ

 高貴な私を拳で殴るとは、庶民はなんと野蛮なのだ

 稲妻は良くて拳はダメという理由がわからない

 愚かな庶民には一生わからん事だ
      野蛮人にはつきあっておれん ここは一旦退く

 クロックども 我が盾となれ

 大口叩いてたのに逃げる へたれ公爵

 逃げるのではない 戦略的転進だ!(逃亡

 ……公爵、どこに行った(きょろきょろ

 しめしめ、小娘は気づいてないな
      後ろからこの傘で串刺しにしてやるぞ、それっ!
 殺気!?

 ぬおっ 後ろをとったはずが回り込まれた!?

 わずかな空気の流れを感じた これも風の上着のおかげか
      さあ、オスカルあぷりの華麗なる拳を受けよ!
 庶民め 調子に乗りおって
      とうとう私を怒らせたな 後悔することになるぞ

 さっきからずっと怒っている

 おのれ、へらず口もそこまでだ
      時計塔の魔力を結集し作り上げた最強の魔物
      いでよ、魔剣エクスキューショナー!
 ……

 ……あれ、出てこない?

 お前の探しているのはこいつの事か?

 何者だ!

 こんなもので勝てるなどと……

 思うほうがどうかしておる

 バカな、魔剣エクスキューショナーが……

 バカな貴族は勘違いが過ぎて困る
      私の名はポリン仮面 オウル公爵宛てに国王の書簡を預かっている
 書簡だと?

 反逆者オウル公爵は爵位剥奪の上、地下牢行き
      オウル家は断絶、公爵の位はリンゴの騎士へ受け継がれるとの事だ
      魔剣も、時計の機械人形も倒した おとなしく従うが良い
 オウル家断絶だと! 無念だ……

 ポリン仮面、最後のいいところだけ ずるい

 

………………………………………………………………………………

 ヒャッハー 野郎ども、刈り尽くせー!

 刈り尽くせー! ソイヤソイヤー!

 イヤー わたしのかわいい花子たちがー!


ではまた

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