ラグナ記
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１８０回目「前門のトナカイ、後門の狼（前篇）」
（グー、パー）…よし、治ってきてる
これならもうじき外出できるわ
この2ヶ月、よくリハビリしたな
骨もキレイにくっついているよ
よかったねお姉ちゃん
ほへいがお世話してくれたからよ ありがとう
そうだ、ぼく外で赤いリボンを拾ったんだけど、
これお姉ちゃんのじゃないかなあ？
無くしたと思ってたのに……良かったぁ
転職できたら付けようって思ってたのよね
・・・そうだ、ほへいが付けてくれないかな
ぼくに出来るかなぁ
教えてあげるから大丈夫、絶対上手くなるわ
ここを短く巻いて、くるっと結ぶのよ
くるくるっと…これでいい？
うん、可愛く付けられてる♪
ほへいよ、リボンを拾ってくるのはいいが
外は危ないからあまり遠くまで出歩いちゃいかんぞい
はぁい
危ないって、なんかあるわけ？
ルティエにはもともと野生の熊が生息しておるが
数年前から獰猛なオオカミが住み着いてのぅ
こいつのせいで、外界との交流はほぼ途絶えてしまっておる
クリスマス祭りの伝統も廃れるばかりじゃ
じゃあ、あなた外に出たことないわけ？
ぼくはずっとルティエに住んでいるよ
そういえば、近頃の人間はクリスマスの意味も忘れてるって
あの死神の娘が言ってたような・・・もしかして、これが理由なのかな
よーし元気になったら、あたしがやっつけてやるわ
ほへいに外の世界を見せてあげる
氷オオカミは危険じゃよ、普通の攻撃では倒せぬ
まかせて、あたし弓が得意なんだから
それにオオカミなんて犬の仲間でしょ
おぃおぃ、無茶はいかんぞぃ
……………………………………………………………………
怪我も治ったし、さっそく退治を始めましょ
グオォ・・・
うわっ、シロクマが追いかけてきた
でも相手してる暇はないのよ さよならっ
ガオーッ！
ついてこないでよねっ
ダブルストレイフィング！！
ガォガォ…（退場
シッシッ あっち行ってなさい
さてと、街の出口はこの辺りのはずだけど
やっと 来たか
でかっ！ こいつが氷オオカミなの
早く 喰わせろ 楽しみ 待ってた
あたしの事を狙っているの!?
お前 魔力 たくさん 感じる 俺 腹ぺこ
食べられるわけにはいかないわ
あんたこそ迷惑だから、ルティエから出ていきなさい
ガーーッ！！
こいつ早いっ バックステップ！
矢でも食らいなさい ダブルストレイフィング！！（シュシュ！
・・・（カキン カキン
いま 何か したか？
矢が効かない・・・！？
そんなわけないわ えいっ えいっ（シュシュ！
無駄 無駄 無駄 無駄 無駄
あたしの攻撃が通用しないなんて
そろそろ 飽きた お前 喰わせろ
うわわわ 何とか逃げないと
雪よ煙幕になれ マグナムブレイク！！
ぐぬっ・・
次は負けないわよ、すたこらさっさー（退場
……………………………………………………………………
ハァハァ・・ただいま
無茶だと言ったじゃろぅ
なんなのよアレ 普通じゃないわ
あたしの事 狙ってるみたいだし
あやつは魔力を喰って生きる氷狼
おうめちゃんのような冒険者が狙いなのじゃろう
獰猛じゃが知能も高く、隙を見せぬ
ずっと待ちかまえておるから、簡単には外に出られぬのじゃ
オオカミを倒さない限り、
あたしも未来に戻る手がかりを探しにいけないじゃない
なんとか対抗策を考えないと・・・
あのオオカミを包む氷の結晶には魔力が通っておる
魔力を使った攻撃をぶつければ良いかもしれんな
あたし、攻撃魔法はマグナムブレイクしか知らないわ
魔法属性の矢で攻撃すればいいのかな
あいにくじゃが、ルティエで弓矢の取り扱い店は無い
外には出られない、武器は手に入らない・・・
それならあたしは、この弓をとことんまで鍛え上げてやるわ！
……………………………………………………………………
ハッ！（ひゅん！
うわー、すごいすごーい
お姉ちゃんは剣だけじゃなくて、弓も上手なんだね
わたしの弓の先生は、こんなもんじゃなかったわ
（未来のあなたの事だけど・・・）
もっともっと腕を磨かないと
僕もお姉ちゃんみたいな、冒険者になりたいよぉ
そしたら、お姉ちゃんと一緒に世界中を旅するんだ！
あなたはまだ身体が出来てないから、もっと大きくなったらね。
その時が来たら・・・その時が・・・
（あたしも、その"時"へ戻らないとね）
それにしても一人じゃ大したトレーニングにならないわね
ビリーとかその辺にいないかしら ワンモアセッ！
この辺に元軍人のマッチョなんぞおらんよ
それより北のオモチャ工場に行ってはどうかな
最近、オモチャの兵隊が暴れて困っているそうじゃ
わかった 行ってみる
……………………………………………………………………
ここがオモチャ工場か・・・でも、なにか変よね
人が出入りしない街で、どうしてオモチャ工場が動いてるのかしら？
うわー、すっごいオモチャの山
この街そんなに子供が住んでいたっけ？
まぁいいわ 奥へ進みましょう
侵入者ハッケン 撃テー！（バーン
きゃ、危ないじゃないのよ
おかえしよ わたしの矢を受けなさい！(ズババババ
必中吶喊！ 撃テ撃テ！（バキューン
どれだけ兵隊がいるのよ、切りがないわ
これじゃあ矢が無くなっちゃう 今日は撤退よ
ワレラ侵入者ヲ撃退セリ 勝利バンザイ！
……………………………………………………………………
工場の様子は、どうじゃったね？
ふんっ、まぁまぁね（汗
明日から通って修行するわ
オモチャの兵隊は工場施設を利用して自己増殖しておるから
まとめて倒さないと、増え続けるぞぃ
そうなのよね、途中で矢が足りなくなっちゃうわ
なんとか矢を補給する方法も考えないと…
ほっほっほ、無いなら作れば良い
残念だけど『矢作成』はアーチャー系のスキルなのよ
あたしには作れないわ 氷オオカミを倒すにも属性矢が必要なのに
何をするにも、魔力の使い方次第じゃよ
わしの見たところ、おうめちゃんは魔力が人よりも多い
コントロールできないのは持て余しておるからじゃろう
弓の特訓も良いが、魔力の扱いも練習してはどうかの
そんなのどうやって練習すればいいのか…
ここは"幻想の街"じゃ 強く念じる心がチカラになる
色々ためしてごらん
……………………………………………………………………
ほへい 夜も遅いよ そろそろ寝なさい
お姉ちゃん ねる前にお話して〜
しょうがない子ね どんなのがいいの？
冒険のお話がいい！
じゃあちょっとだけよ
うんっ（わくわく
・・・ここであってここではない いつかのおとぎ話
あるところに仲の良い姉妹がいました
お姉さんは強くてがんばりやさん 妹は負けず嫌いでいじっぱり
二人は田舎の街で静かに暮らしていましたが
妹はある日 家を飛び出しました
冒険の始まりだね ・・・でも、どうして？
夢を叶えるためよ
どんな夢？
それは・・・女の子には憧れの冒険者がいたの
すっごくカッコイイ女戦士で、自分もあの人みたいになりたいなって
ふふっ、なんだかほへいと似てるわね
・・・（すやすや
あら、もう寝ちゃったの？ かわいい寝顔
子供のほへいって、すごく可愛いのね
あたしに弟がいたらこんな感じだったのかな
いまなら・・・あぷりお姉ちゃんの気持ちが解るかも
この街を出たら、一度様子を見に行ってみようかな
この時代にいるあの人に、プラムさんにも会えるかもしれない
……………………………………………………………………
う〜ん集中、集中・・・
おねえちゃん、工場にお出かけしないのかな
今日は魔術の練習なの
でも、あたし魔術をあまり見たことがないから
やり方が分かんなくてね
弓術は見様見真似で上手くなったけど
おねえちゃん、魔術が使えるの？ 見せて見せて〜
もう、しょうがないわね
危ないからちょっと離れてなさいよ
はあぁ… マグナムブレイクッ！（どーん
すごいすごーい どうやったのー
これは武器に魔力を集中させて
そのエネルギーを地面に叩きつける技なのよ
へぇー、それじゃあ弓矢でも出来るのかな
矢に魔力を通す・・・？
そうか、矢にエンチャント(魔力付加)してやればいいんだ！
ほへいありがとう、そうと判れば早速練習開始よ！（キュイィィン
どがん！
うわわっ
勝てる！ ふふ、これなら氷オオカミもイチコロよ
じゃあ行って来ま〜す！
飛んで行っちゃった、大丈夫かな
・
・
・
ハァハァ・・・ただいま
お姉ちゃん、どうだった？
うぅ〜、威力が足りなかった
もっと魔力を丸ごと打ち込めるような技じゃないと…
次こそは勝つんだからね！
……………………………………………………………………
もう何ヶ月もオモチャ工場で修行してるけど、
広くていつも道に迷いそうだわ
ん、あの服は・・・
どこかで見たような気がする
誰だったかなぁ？
ここには壁画がある 誰なんだろう？
動物はシカ・・・かな
侵入者ハッケン！ 撃テ撃テ（バキューン
来たわね、わたしの矢を食らいなさい（ズババババ
……………………………………………………………………
はぁ…今日も氷オオカミに勝てなかった
いつになったら、この街を出られるのかな
お姉ちゃん、おかえり
今日はお客さんが来るから準備手伝って〜
あら珍しいわね
というか初めてじゃない、お客さんなんて？
お爺様のお友達 毎年遊びに来るんだよ
ガハハハハーッ！ よう坊主、元気かーッ！
今年も騒がしいのぅ
ジジィはまだくたばってねーのかよ、ガハハ！
ホッホッホ、まだまだ現役じゃて
ああっ、あなたはトナカイの…
むおぉうっ？ 女だ、女がいる！
ジジィ手前ぇホントに現役かよ、ガハハ！
馬鹿もん勘違いするな 彼女は旅行者じゃ
そっか、この時代じゃ初めて会うんだっけ
あたしは青梅 話すと長いんだけど ここでお世話になってるの
実はかくかくしかじか・・・
あぁ結構だ、長い話はいらん！
それより今日は飲み明かそうぜ、ガーハハハッ！
ちっとも話を聞いちゃいないわね
ほへい、いつもこうなの？
おじさんはいつもテンション高いんだよ
ほへい？ 坊主、ほへいっていうのか
うん、お姉ちゃんに名前を付けてもらったんだよ
覚えておこう ほへいか、良い名前だ
さぁさぁ、食事にしよう
・
・
・
ぷはー お腹一杯 もう食べられないよ〜
はい おそまつさま
一杯食べたら 眠くなっちゃった
おやすみなさーい ……ぐぅ
そんなところで寝ちゃダメ
ほへい… ほへい… 起きなさい
う〜ん むにゃむにゃ
風邪ひくわよ…
子供はそろそろ寝る時間じゃ
おうめちゃん ほへいをベッドに運んでくれるかの
ワシらは二人で飲んでおるから
ぐっすり寝ておけよ ガハハーッ
おやすみなさい むにゃ…（退場
ほへい トイレはこっちよ（退場
さてと、今年も準備は出来ておるぞぃ
オレ様のソリもエンジン快調だ
あれはソリじゃなくて、飛行船じゃろう
そうとも言うが気にするな、ガハハ！
しーっ 静かにせんか あの子らが起きてしまう
おっといけねぇ、それじゃあ30分後に出発だ
クリスマスの大仕事じゃ
・
・
・
・・・（すやすや
氷オオカミが道を塞いでるのに、お客さんなんてオカシイじゃない
つまり、出入りする方法があるって事よね・・・
あ、そうだ！ あのトナカイさんは！！
ではまた
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