ラグナ記

戻るTOPへ

185回目「あかいのはリボンなんじゃよ」

 

 王様、申し訳ございません
      賊を取り逃がしました
      城北に包囲網を敷いたのですが
      あと一歩の所で川に飛び込んだようです
 ふむ、大丈夫じゃろうか

 賊は「ソグラド砂漠の紅い疾風」でした
      奴なら生き延びている可能性があります
      王の御命を狙った不届き者は、私が必ず処刑いたします
 はて、あの娘は暗殺者だったかのぅ?
      名前も違うような気がするのじゃが…
 陛下は気が動転しておられたのでしょう

 う〜む、可愛らしい娘じゃったがなぁ
      緑の髪と紅いリボンがキュートじゃったぞい
 緑の髪・・・?
      紅い疾風は、桃色の髪に悪魔帽子でしたが
 この部屋に来ておったのは、こんな娘じゃったよ
      (さらさらさら)…っと、朕は絵が得意なのじゃ

 クリーチャー……でございますか?

 昨晩、訪ねてきた娘じゃ 可愛いじゃろ
      これを町中に貼り出せば、すぐに見つかるぞぃ
 恐れながら、陛下の美的センスは平民には高尚すぎて
      理解できないモノと思われます
 あの娘には聞きたいことがあったのじゃが…

 私は「紅い疾風」を指名手配してまいります
      ひとまず失礼します

……………………………………………………………………

 なんとか逃げ切れたようね

 無茶しやがって……
      あんな高さから無事に飛び降りられると思ってたのか?
 飛行船に比べれば、どうってことないわ
      それより怪我の手当てをするから、岸へ上がって
 あぁ、助かるよ

 傷は深くないわ
      これなら数日ってところかな
 ヘマしちまったぜ
      これじゃあ当分、城にも街にも近づけねぇな
      たぶん指名手配がかかってる
 
し め い て は い !?
      あまり良い思い出じゃないわね
 どうした、あんたもお尋ね者か?
      そういや同業者のようだが、見ない顔だな
 い、いや、ちょっと昔のことを思い出しただけで
      あたしはおうめ、旅人よ お尋ね者じゃないわ
 その旅人がどうして私なんかを助ける?
      だいたい、なんで城に居た?
 それは商人の娘さんが…かくかくしかじか…
      長老って人に文句を言いに行ったら道に迷っちゃって
      これからジュリエットさんの事、どうしよう…
 そんなお人好しな話があるもんか・・・どうも怪しいな
      まさか、国王を襲ったってのはお前か

 ええぇ!? アタシそんなことしてないわ誤解よ、ゴ・カ・イ!

 お陰でこっちが犯人だと思われたじゃねぇか

 そんな…アタシの所為だなんて

 お前は一体何者だ!
      洗いざらい吐いてもらうぞ
 闘うしかないの!?

……………………………………………………………………

 昨晩は賊に襲撃されたと聞きました
      お加減はいかがですか
 最悪だ!
      何をしておったのだ、この役たたず共め!
      最初に駆けつけたのは教会の聖騎士だぞ
      騎士団は揃いも揃って寝落ちしていたのか!
 申し訳ない しかし騎士団は予算不足で
      夜間警備に充てる人員が確保できない状況でして…
 やはり騎士団は縮小するべきだと陛下に進言しておこう

 由緒ある騎士団を軽んじようとおっしゃるか!
      そもそも我等に予算が回ってこないのは
      長老殿が手を回しているからだという噂も…
 えぇい五月蠅い、もう下がってよい!

 くっ……失礼いたす(退場

 しかし侵入者対策はせねばな

 長老様、陛下がお呼びです

 

 陛下、ご機嫌うるわしゅうございます
      賊は私が追い払いましたのでご安心下さい
 んー、別にこっちは何ともなかったんじゃがのぅ
      ところで聞いた話じゃが、そちは甥の交際に反対しておるそうじゃな
 そ、それは身分が違いすぎる故に…

 恋愛は自由であるべきじゃと思うがどうかの?

 これは我が家門の問題ですので、
      陛下のお気を煩わせることはございません
 それならば、甥にとっても個人的な問題ではないかのぅ

 いえ、その…

 朕は身分を越えた恋愛を推奨するぞぃ
      そこでこの王が、教会で結婚式の司祭を務めようと思う
      良いアイデアじゃろう?
 陛下が結婚式などと、ご冗談を!

 やるといったらやるのじゃ
      最近退屈しておったから、新しい趣味にするぞぃ
 むむぅ…

 

 陛下が毎日教会に来ては、色々とやりにくくなる
      う〜〜〜〜〜〜〜む
      ロミオ、ロミオ財務補佐官!
 お呼びですか伯父上、…じゃなかった長老

 確か、東の寺院は院長不在であったな

 モンク僧の転職を管理している聖カピトーリナ修道院ですね
      現在、人手不足で畑の管理もままならぬようです
 私はしばらくそこへ行くことにした

 どうしたのですか突然?

 聖職者としての基本、奉仕の心だ
      なにを驚くことがあるロミオよ
 い、いえ、あまりに伯父上らしくない発言というか…

 陛下が御自ら教会の司祭を務めると仰っておる
      わたしも僧侶が不足しておる寺院のために働こうと思ったまでよ
 さすがです伯父上 見直しました!

 というわけだから財務管理は任せた
      後の指示は、時々手紙を送るのでそれに従うように
      では下がって良い
 はい、失礼します(退場

 ・・・ふんっ、何が奉仕の心だ 馬鹿馬鹿しい
      あの田舎寺院ならば屈強のモンクどもがいるから暗殺者も手を出せんし
      国王から離れて好き放題にやれるから都合が良いだけだっ

 ふむ、一時はどうなるかと思ったが、
      早速長老が動き出したようだな
      「紅い疾風」は上手くやってくれたようだが
      国王陛下を襲撃したとはどういう事なのだろうか…
 リンリンは何をすればいいッス?

 しばらくは長老も大人しくしているだろう
      監視はこちらで行うので、
      君には諜報員として戦闘訓練を受けてもらう
      これからの任務によっては、戦い抜く力も必要だからな
 うぇー、だるそうッス〜

 ・・・というわけで伯父上が転勤になったんだ

 じゃあ私たち、これからは隠れずに交際できるのね

 うん♪

 きっとあの親切な人のおかげだわ♪

 愛してるよ、ジュリエット

 私もよ、ロミオ

 そうだ。今度、旅行に行かないか

……………………………………………………………………

 そらそらどうした!
      そんな大振りのナイフが当たるかよっ
 (デビ姉に怪我はさせられないし
       でも、こっちも余裕があるわけじゃ・・・)
      くうっ!(ガキン
 少しはやるようだが、攻撃がまっすぐすぎる
      対人戦の経験が少ないな
 ずっとモンスター相手に修行してたから

 そんなんじゃあこの業界は生き残れないぜ!(シュッ

 止めて、あなたと戦いたくない!
      それに、そんなに動いたら傷口が開いちゃう
 ふんっ、敵の心配をしている場合かよ

 ぐっ、それなら幻想矢で……魔力集中!(キュイィィン

 魔法も使うタイプの戦士か
      厄介だが、呪文詠唱を邪魔してやればどうと言う事はないね(シュシュシュ
 連続攻撃で矢が作れない…ッ!!(ガキン ガキン

 相手のペースを乱し、自分の領域で戦うのが対人戦の定石だ
      さぁて、そろそろ終わりだ
      「紅い疾風」のオリジナルコンボを喰らえ!
 速いッ

 オラオラオラオラ、ソニックブローッ!(ドガガガガ

 (でも…アタシはこの技を知っている!
       次は飛び込んでくるからカウンターで迎撃よ)

 マグナムブレイク!!

 なにっ!?

 そこよ!(蹴りッ

 ぐっ(ごろごろ

 動かないで!(チャキ
      ・・・えぇとアタシの勝ち、かな
 必殺のコンボが破られた? 負けたのか私は
      一日に二度も負けるなんてな・・・いいぜ、殺せよ
 もう、どうしてそんなこと言うのよ!!
      死ぬとか殺すとか、短絡的じゃない
 そういう世界なんだよ、アサシン稼業ってのはな
      私はもう疲れた もういいんだ
 あなたはそんな人じゃない
      もっと前向きな考え方ができるはずよ
 わかったような事を言うな!
      お前に私の何がわかる!? 何を知っている!?
      自分の事は、自分が一番わかってんだよ!
 ・・・まだ自分の事しかわかってないのね
      アタシはたくさんの冒険者を知っているわ
      あなたは迷える冒険者を導く人になるのよ
 知らねぇよ・・・もう放っておいてくれ

 デビ姉には仲間になって欲しかったけど…
      ごめんなさい アタシ行くね(退場

 

 甘ちゃんで、お人好しで、おかしな奴だ
      そういえば、右腕だけは狙わなかったな
      ……さて、これからどうするか

……………………………………………………………………

 長老が突然、プロンテラ大聖堂を去られてしまわれた
      わたしはどうしたらいいのだろうか
 ケイナちゃん、ちょっと良いかな
      頼み事があるのじゃが
 ハイ陛下、なんなりとお申し付け下さい

 トキンを探してもらいたい

 トキン様を……?
      王子は病で幼くしてお亡くなりになったハズ
      いったいどういう事ですか!
 …当時は国政が乱れておったので
      王子に危害が及ぶことを恐れ、トキンを里子に出すよう指示したのじゃ
      しかし混乱の中、王子の行く先が判らなくなってしまった
 ……

 見つけることは、半ば諦めかけておった
      じゃが昨晩、あの娘がトキンの事を話してくれた
      間違いない、トキンはどこかで生きておる
 トキン様が……よかった……

 無事がわかった以上、あの子を探さねばならん
      手がかりは少ないが、あの子をよく知っておるケイナちゃんが適任なのじゃ
      引き受けてくれるか
 陛下、トキン様は私が必ずお連れいたします!

 うむ
      それでは王国聖堂騎士ケイナ=バレンタインよ
      ルーンミッドガッツ王国国王トリスタンIII世の名に於いて命じる
      トキン王子を探し出し、我が元へ連れ帰るのじゃ
 ハッ! かしこまりました!

 

 やれやれ、マリアの愚痴に付き合わされるのも疲れる話だ

 ……

 おや、そこを行くのはケイナではないか
      旅装などして、どこに行こうというのだ?
 お前には関係のない事だ

 フン、私も一応は正規の騎士だ 関係なくはなかろう
      聖堂を守護するお前がプロンテラを離れるなど、余程の事のはず
 勅命を受けたのだ 今はそれ以上は言えぬ

 勅命……? ならばこれ以上は訊くまい

 長期の留守となるはずだ
      その間、この国の守りを頼むぞ さらばだ(退場
 頼む相手を間違えておるのではないかね
      小うるさい奴がいなくなって、いろいろやりやすくなるな クックック
      しかし、あの無能な王が勅命とは珍しい 何なのだ?


長老その後 ケイナその後


ではまた

次へ戻るTOPへ

inserted by FC2 system