ラグナ記

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186回目「プラム」


 暗くなってきたし、そろそろ休む場所を探さないと
       でも、しばらく街には近づけないわ

 森の中なら憲兵は来ないと思うけど、
       モンスターに気を付けないとね
       この見晴らし小屋、誰のか知らないけど
       壊れているし勝手に使わせてもらおう…むにゃ、おやすみなさい

……………………………………………………………………

(ゆさゆさ)

 むにゃ…あと五分

(ゆさゆさ)

 やだぁほへい…そんなとこ触っちゃ

(ゆさゆさ)

 で、でもいやじゃないのよ
       ほへいだったら……はっ! 誰!?

 目が覚めた、旅の人
       こんな所で寝ていると風邪をひくぞ
 あ、あ、あp……(お姉ちゃん!?)

 わたしの家に来るといい
       客人は珍しい 食事ぐらい振る舞おう
 う、うん、ありがとう
     (昨日は暗くて判らなかったけど、ここは家の近所だったのね
      無意識に知っている場所へ戻っていたのかしら)
 さぁ、入るといい
       妹と二人暮らしだ 遠慮しなくていい
 お、お邪魔するわ
      (って自分の家なんだけど…)
 おうめ、お客さんだ ご挨拶しなさい

 ごほごほ、いらっしゃいませ
       あたしはおうめです ごほごほ
 ・・・病気?

 妹は小さい頃から病弱なのだ
       身体に障るので、あまり外には出してやれないのが残念だ
       良かったら、旅の話でも聞かせてやってくれないか
 え、えぇ良いわよ
     (あまり小さい頃の事は覚えてなかったけど
      病気だからお姉ちゃんは外に出さなかった…?)
 自己紹介がまだだったな
       わたしはあぷりコット ずっとこの森で暮らしている
 あたしは…おぅ……
      (ま、まずい 昔の自分に出会うなんて思って無かったけど
      『おうめ』じゃマズいわよね えーと、えーと…)
       プラム、そうプラムよ
 わかった では食事を用意しよう
       おうめの話し相手になってやってくれ、プラムさん
 ぷらむさん、お話してほしいな……

 えぇ、何のお話にしましょうか

 ぷらむさんは「ぼーけんしゃ」なんでしょ
       ぼーけんのお話がいい! ごほごほ
 いいわよ この世界には広い砂漠と、深い森、
       どこまでも続く海があって…
 うんうん

(子供のあたし、夢中で聞いてるわ)
      ……北には機械の国があって
 すごーい

 海の向こうには外国があって……

 ねぇねぇ、この世界のちゅーしんには
       すっごく大きい木があってお空まで行けるってほんとうなの?
 うん、本当よ

 もしかして行ったことある?

 ま、まぁね

 うわぁ〜〜、あたしも行ってみたいなぁ

 元気になったら、きっと行けるわよ

 うん、冒険するの! ごほごほ

 食事の準備ができた 食べてくれ

 いただきます

 いただきま〜す

 うん、おいしい……なつかしい味

 ふ〜む(じろじろ)
       プラムさんは、おうめと雰囲気が似ているな
 そ、そうかな、アハハ……(汗

 とても愛らしい顔をしている
       他人の気がしないな、不思議だ
       おうめもこのように美人に育つことだろう
 あたしも冒険者になるー

 あぁ、いつかな……

……………………………………………………………………

 子供の時に出会って、
       あたしの憧れだった人、冒険者プラムさん。
       まさか自分自身だったとは思わなかったわ
      ……喜んでも良いのかな、あの日の目標にあたしは届いたんだから

 プラムさん

 おね……あぷりコットさん、どうしたの

 貴女の目から見て妹はどうだろうか
       いつかは元気になるのだろうか 私はそれが不安だ
 大丈夫よ
       あと4、5年もすれば元気になって、外を飛び回れるわ
       家出しちゃって、追いかけなきゃいけないぐらいよ
 ふふ、そうなるといいな

 心配しなくて良いわ きっとそうなるから

 家出されると、それはそれで心配だ
       だが何故だろうな、貴女の言葉は信じられる気がする
       気休めかもしれないが、安心した
(気休めじゃないんだけどね…)

 しばらくここで暮らしてもらっても構わない
       部屋は好きに使ってくれ わたしは畑に行って来る(退場

 お姉ちゃん、いつも心配してくれていたのね
       あたし、ずっと誤解していた
       未来に帰ったら、謝らなくちゃいけないな
       それにしてもあたし、どうやって元気になったんだっけ?
       医者にかかった記憶も無いし……

 プラムさん、あそぼー

 ちょっと、外に出ても大丈夫なのかしら

 うん、いまはしんどくないのー

 じゃあお家の周りでね 少ししたら戻ろうね

 わーいわーい

 

 ・・・・・・ごくり

……………………………………………………………………

 わーい わーい

 プラムさんが来てから数日、
       おうめが元気になっているな
 お姉ちゃん、お外たのしいねー

 うんそうだな 私もおうめが元気だとうれしい
       今日もいい天気だな ほら、空に大きな鳥が飛んでいるよ
 とりさんー

 ぐるるる(ぎらり

 ……なんだ 大きすぎないかあの鳥は?

 ねぇ、とりさんって足が4本あるのー?

 いけない、あれはモンスターだ!
       急いで家に戻るんだ、青梅
 ギャエーッ!!

 きゃー!

 グルル……(ばっさばっさ

 おねえちゃ……助け……

 おうめを放せ、化け物め!
       おうめを返せ、返すんだ
 うあーん うあーん

 ギャガー!

 うわっ

 巣に持って帰って、食べる気か!
       このっ、放せ!
 うわーん高いよー 怖いよー

 大丈夫だ 姉が助ける!
       このっ このっ(ぼかぼか
 グルルル・・・(ぽいっ

 お姉ちゃん!

 おうめーーー!(落下

(どさっ!)うぐあっ……
       うぅ、やわらかい地面に落ちて助かったか
 大声がしたから駆けつけてみたけど、どうしたっていうの!
       しっかり、しっかりして!
 うああああー!!
       おうめがモンスターにさらわれてしまった
       わたしの不注意で・・・こんな・・・うぅ(ぽろぽろ
(バシッ!)しっかりするのよあぷりコット
       モンスターはどこなの!
 ……空だ、飛んでいるからわたしにはもうどうにもできない
       おうめ、おうめーーー!!
 あれは……(ガクガク
       お、思い出した あたしは子供の時にグリフォンにさらわれて
       それで空が怖くなったんだ
 おうめーー!

 もうあんなに高く・・普通の矢じゃ届かない
       あたしが倒すしかない 今! ここで!
       魔力集中、幻想矢ロングシュート・スタンバイ……
 助けて、たすけてー

 あ、足が震える(ガクガク
       少しでもズレたら……助けられるの……?
       いいえ、考えてはダメ。集中するのよあたし!
 グルルル・・・

 ファンタズミック・アロオォォーッ!!(どしゅーん

 ぐ・・ごあぁ・・・・(絶命

 やったわ

 いけない、落ちる!

 急いで、落下地点に!
       お願い、間に合って・・・(疾走

 間に合わ……なかった……

 こんな・・・こんなことは
       夢だ 悪い夢なんだ うわあああああ おうめえええ
       すまないおうめ わたしがついていながら うわあああああ
 しっかり、まだ息があるわ
      こんなときのためにクローンスキルで覚えたヒールで!
      ヒール!ヒール! ダメ、見よう見真似のヒールじゃ追いつかないっ
 頼む、おうめを助けてくれ…

 あたしの手、透けてる? 身体が消える?
      (だめ、ここであなたが死んだら、未来のあたしが消えちゃう!!)
       何かない、何か? 考えるのよあたし!

……………………………………………………………………

 その通りにゃ 魂たちは世界樹を通って新しい命になるのにゃ
       イグドラシルの樹が生命の輝きに満ちているのは
       命の輝きが詰まっているからなのにゃ

……………………………………………………………………

 そうだ、これなら!

 商人さんにもらった『イグドラシルの実』
       これを触媒にして、あたしの魔力を生命力へ返還して注ぎ込む!!
       まだやることがあるでしょう、生きなさいあたし!!!!!!(ぎゅ〜〜ん
 う、う〜ん

 はああああああああ!!!!!!

 おうめ、しっかりするんだ、おうめ!

 ……あ、あれ、ここはどこ?

 はぁっ、はぁっ、はぁっ……もう、くたくた……
      でもこれで、大丈夫よ……

 おうめ、おうめ〜〜!!!!

 どうしたのお姉ちゃん、くるしいよ?

 おうめ、良かった…おうめ…

 あたしの身体も元に戻ったし、一件落着かな
       でも今回は、本当に危なかったわ…
 何ともないか、痛いところは無いか?

 うん、だいじょーぶ
       あのね、さっきから身体の奥が暖かくて
       すごく元気があふれてくるの
(あれだけの生命エネルギーがあれば、
       これからは病気をすることもないハズだわ
       それにしても、これは全部決まっていた運命なのかしら…?)
 よかった、ほんとうによかった

 

ではまた

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