ラグナ記

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195回目「神はサイコロを振れない」



 ここがコンロン・・・
      見たところ、普通の港って感じね
 小さな港だな
      定期便が就航しないのも当然か
 わたくし、もっと神秘的な土地を想像していたのですが・・・

 よく見ろ、町にクマがいるぞ

 ルティエではシロクマに追い掛けられたし、
      あまり良い思い出が無いのよね
 クゥ〜ン ガォガォ

 ふむ、別に襲ってくるわけではないようだな
      しかし、街中にケモノが出るとは物騒だな。
      マリアよ、私から離れるなよ



 なんなのこの町? 建物がすごく小さいわ

 ガリバー旅行記のような気分だ

 なら、ここの住民は手のひらサイズってことか?

 手乗りタイガーなら歓迎しよう
      だが、住民の姿など一切見当たらないのはどういうことだ
 モンスターに全員食べられてたか、街を捨てて逃げ出したか・・・
      ゴーストタウンって可能性もある
 別に荒らされてるような感じじゃないわよ
      多分これは観光用に作られた町並みね。住民は別の場所にいるのよ
 こんなものを作るとは暇な奴らだ



 この石像はなにかしら

 ふむ、獅子のようだな
      ライオン仮面よ、ライオンつながりで何か知っることはあるか?
 (仮面つけてるだけだろう・・・)
      これは唐獅子だから私の管轄外だが、
      えーと、門番みたいな物じゃないか?
 魔除けの意匠が込められたオブジェってことかしらね



 門番が居るということは、門がある・・・この先に門が?



 これが門?

 魔力のゲート・・・ですわね。周囲に置かれた魔石陣が
      恒常的に一種のワープポータルを発生させていますわ
 どうやらここが隠れ里の入り口で間違いないようだな

 さすがライオン仮面ね!

 ま、まあな(汗

 中へ入りましょう



 崖の上・・・? いいえ、地面が飛んでいるの!?

 たまげたぜ

 ・・・・・・。

 どうしたのです騎士殿、
      『ラピュタは本当にあったんだ!』 とか言わないのですか?
 フン、同じネタを何度もやる私だと思っているのか
      ラピュタネタは、87回目で使用済みだ
      とはいっても、87回目は今よりも未来のエピソードなのだがな
 誰に説明しているのかしら・・・

 (高所恐怖症を克服していて良かったわ)
      浮島の先へ進むわよ おっととと・・



 やはり街がありましたわ。ここが隠れ里のようですわね

 お客サンとは珍しい。私はコンロンの住民イーヒーミンです
      下に作った王国の模型は楽しんで頂けましたカ?
 生憎と、観光に来たわけじゃねえよ

 おー、それは残念ネ
      私達は長い間、外部との交流がありませんでしたのデ、
      観光客を呼んで街を活性化させたいのです
      お客サン、街を見て楽シー、私達、お金がっぽがっぽ嬉シー
 なんで観光地まで来て、
      自分の街のミニチュアを見なきゃならんのだ
      それに本音がだだ漏れだぞ、田舎モノめ
 お客サン、せっかくだからお土産買ってヨ
      どれも本物ソックリだヨ〜
 あほかっ、自分から偽物とばらすな!

 ダイジョブだよ、全然見分け付かないヨ〜

 口調が典型的すぎますわねぇ

 商人が居たら、激怒するところだ
      私達は観光客ではないと言っているだろう!
 イーヒーミンさん、あたしはヘビの神様に会いにきたんです
      どこに行けば会えますか?
 それは「黒蛇王」様の事ですネ
      コンロン洞窟の最奥にいると伝え聞きますガ・・・
      あそこは観光用に整備できてナイから、危ないですヨ
 別に、採って喰われるわけでもないだろう

 喰われるヨ、中に入ったおさるサン喰われたヨ

 ・・・モンスターが居るのは確実だろうな

 それでもあたしは、行くしかないのよ



 厚い扉がある 普段は封印されているのか?

 この先に何かが待ちかまえているのは間違いないでしょうね

 ・・・ごくり

 ふん! 私はまだ小娘の話を信じたわけではないからな

 もうじき判りますわ。さぁ前進あるのみ!





 薄暗いな、目が慣れるまで気を付けろ

(サッ!)

 何か動いたわ!

 化物か? いや、違うか

 うえ〜ん、助けてくれ〜(T_T)

 な、なんか、見覚えのあるヤツが・・・



 おそらく人面桃樹という妖樹。
      桃の実に近づいた生き物を捕らえて、養分にするそうですわ
 近づいた生き物は、見事にサルばかりのようだぞ

 頼む、助けてくれ!
      俺様をここで助けておかないと、あぷりは転職できないぞ!
      それでもいいのか!?
 ぬぅ、時空を歪める発言をするでない

 メタな会話ですわねぇ・・・

 グゲゲゲゲ

 なんだか解らんが、襲ってくる雰囲気だぜ

 それなら倒すだけよ、えぇい!

 うわっ、俺様に当てるなよ! 絶対当てるなよ!

 グワー!!



 やれやれ、大した相手じゃなかったな

 さぁ行きましょう。なんとなくだけど、
      あのサル共は、ここに放っておいても大丈夫な気がするわ
 た、たすかった・・・



 (ふよよ〜ん)

 誰!?

 いらっしゃいませ お客様方
      我が主の命を受け、お迎えにあがりました
      私は天仙娘々(てんせんにゃんにゃん)と申しますにゃん
 にゃん?

 ・・・どこかで聞いたような語尾

 さぁさ、こちらへどうぞ
      我が主が、首や胴を長〜くしてお待ちですよ
 我々が来ることを知っていたというのか

 おそらく、彼女の言う主とは・・・

 行きましょう





 遅いぞ天仙娘々、待ちくたびれたわい

 まぁまぁ、ちゃんとお連れしたではありませんか

 ふむ、こやつらが客人か

 いかにも仙人といった風体だな、貴公がコンロンの主か?

 違う、わしは主様にお仕えする天邪仙人だ

 主様は、ヒンヤリつるつるお肌の持ち主。
      天邪殿みたいに、しわしわじゃありませんことよ
 お前な・・・



 お前達、遊んでいてはだめにょろ
      人間の時間は、とても短いのだから(にょろにょろ
 これは失礼をば

 主様、お客様をお連れしましたにゃん

 あなたがヘビの王・・・

 頭が高い 控えろ人間共ッ!
      こちらにおわす御方こそ、悠久の時を見通す眼を持ち、
      森羅万象を観測する神「黒蛇王」様であらせられるぞ!
 座右の銘は「足なんか飾りです」だにゃん

 は、ははーっ!

 (これが神のプレッシャー・・・
       おうめの与太話じゃなかったのか・・・)
 高次元存在・・・研究対象・・・うふふ

 フン、私は爬虫類に下げる頭など持っておらん
      だいたいどこが「黒蛇」だというのだ。どう見ても白いではないか
 にょろ〜ん・・・

 おのれぇ、黒蛇王様を愚弄するか!
      無礼者め、我が仙術で冥土に送ってやる!
 黒蛇王様は繊細なんだから、
      気にしていること言っちゃだめにゃん
 騎士殿、余計な事を言って、
      おうめさんの邪魔をしてはいけませんわ
 うー、余は「白い身体」と「黒い名」を持っておるにょろ。
      白と黒、陰と陽、0と1───森羅万象、ありとあらゆるもの、
      世界の根元に通じる神であることを、名と体で表しているにょろ
 陰陽二元論ですわね。
      コンロンの住民の名前とも一致していますわ
 娘よ。そなたがここにいる理由も、目的も、
      余にはわかっているにょろ
 お、教えてください! あたしは未来へ──
 まぁお待ちなさい
      立ち話もなんだし、場所を変えるにょろ
 蛇のくせに「立ち話」って、足もないくせに何を言っとるんだ

 足なんて飾りにょろ 偉い人にはそれがわからんにょろ

 お前も一応偉いんじゃないのか

 余は「偉い人」じゃなくて「偉い蛇」だからわかるにょろよ

 人などより蛇のほうが優れておる証拠じゃ

 なんでそうなる
      それに仙人どもは足があるではないか
 私たちはいつも浮いてるから足は飾りにゃん

 でも娘々ちゃんは足があるほうが萌えるにょろ

 にゃ〜ん♪

 なんなんだお前ら、神の威厳とか無いのかよ

 さ、場所を移動するにょろ

(にょろ〜ん)



 なんだいこりゃあ・・・

 空間転移呪文ですわね

 余の庭園じゃ、くつろぐがよい

 足下が空ということは、洞窟の外へワープしたようだな
      空飛ぶ碁盤とは、凝った趣向だ
 主様の趣味なのにゃん

 余はゆっくり考えるゲームが好きにょろ

 主様は囲碁では負け知らずにゃん

 ヘぇ、それはすごいわね
      一局お手合わせ願えるかしら?
 いいにょろよ。
      いざとなったら100年くらい考えこんでれば
      そっちの寿命が尽きるから絶対負けないにょろ
 ・・・時間制限付きでお願いしたいわね

 それだと負けちゃうかもしれないからダメにょろよ

 そんな話はどうでもいい 早く本題を話せ

 人間はせっかちじゃ
      そんなんだからすぐに寿命がくるにょろ
 心して拝聴せよ人間共ッ!
      普通ならば、お目通りすることもできぬのだぞ!
 は、はいっ!!

 長い話になりそうだ。

 難しい話は、わたくしの専門よー





 あたし、5年後の未来へ帰りたいんです。
      でも、どうやったら帰れるか解らなくて、教えて欲しいんです!
 余は長らくこの世界を観測しており、これからも観測する、
      それが余の役目であり、存在理由にょろ。
      だから、そなたの事情も全てお見通し。
 「見てるだけ」とは、楽な仕事だな
      ネットサーフィンが趣味の神がいるとは知らなかったぞ
 ネットサーフィンほどあわただしくないにょろ
      ドモホルンリンクルの品質管理みたいな感じにょろよ
 一滴一滴、じっと見てるにゃん

 おそろしく暇なやつだな
      このニート神め
 そんな話より早く、早く続きを!

 時空は過去から未来へと繋がっており、流れてくにょろ
      しかし時空はたまにその流れがもつれて、
      ループや、スキップや、ターンすることもあるにょろ
 よく解らねぇが、時間って戻ったりするのか?

 「巻き戻り」だな、ガンホーにはよくあることだ

 そんな時空の変化に巻き込まれた者は、時空を超える。
      そういった者を観測するのは、余にとって楽しみの一つにょろ
 それがあたし、ってわけね

 ただ流れ行く時空を見つめるだけだと、さすがに退屈。
      余にとって時空転移者は、退屈を紛らわすスパイスにょろよ
 『退屈は神をも殺す』・・・ってヤツか

 そなたの行動は、此度の時空ねじれと密接に関係していて、
      余はとても有意義な観測が出来たにょろ。
 まさに『神の視点』ですわね、魔科学者として羨ましいですわ

 余は、そなたが次に何を見せてくれるか期待している───
      だから、未来へ戻りたいというなら、その方法を教えるにょろ
 ありがとうございます!

 余の趣味と実益が一致しただけにょろ

 主様の寛大なお心にひれ伏せ人間ども!

 ははー(平伏

 土下座とかいいから話を聞くにょろ
      時空転移は、時間と空間が歪められた時に発生する。
      余の観測によれば、そなたは魔力スポットである時計塔内部で、
      暴走した魔力制御ユニットに空間歪曲魔法を使用した───
      未来の出来事を過去形で話すのは、解りにくいかにょろ?
 いいえ、あたしは理解できます

 今の話だと、黒蛇王様は未来をも見通せるのですか?

 「悠久の時を見通す眼を持つ」と言ったであろう!
      主様の力を侮るでないぞ、人間め!
 様々な時空連続体に「余」は存在しているから、
      「未来の余」と情報リンクする事によって、
      未来の事象を把握する事は可能にょろ。
 5年後に「HUNTER×HUNTER」が打ち切りになってるか教えてくれ

 また、メタな発言を・・・

 でも、ネタバレを見てしまうと観測が詰まらないにょろ。
      未来を知ってしまうのは、この先、退屈しかないという事。
      だから、余が見つめるのは基本的に「今」だけにょろ〜ん。
 楽しい夏休みでも15000回以上繰り返すと、
      退屈を通り過ぎて、長門が壊れてしまうからな

 ・・・ナガトって誰?

 しかし「この時空」に飛び込んできた時空転移者については、
      観測の一環として、出所時点の出来事を観測しているにょろ。
 あの時空転移は、未来へ帰る方法と関係しているんですか?

 時空転移したのは、そなただけでは無く、
      魔力制御ユニット「時計塔管理者」も、時空転移しておるにょろ
 アルデバランの魔力スポットに、大魔力干渉、
      それから空間歪曲魔法・・・(ぶつぶつ
 じゃあ、あの機械人形が「今」もどこかに?

 「今」には居ない。
      そなたとは別の時空へ転移してるにょろ。
      時計塔管理者は「今」から1週間後、時計塔へ転移してくる。



 なんで、おうめとは別の時間と場所なんだ?
      理屈なんてわからねーが、同じタイミングで飛ばされたんだろ
 時空転移はとても繊細な現象。
      転移中に魔力暴発が起きては、安定した跳躍は出来ないにょろ
 そういえば、あたしがルティエへ着いた時
      ズタボロだったっけ・・・
 魔力暴走のエネルギーに押しやられ、
      そなたは更に過去の時間、別の場所へ辿り着いたにょろ



 この二者が、此度の時空転移の特異点。
      再び接触すれば、時空の歪みは閉じ、元の時空へ帰結するにょろ
 なるほど、過去へ跳んだ青梅さんは
      通常の時間軸を過ごして「今」へ至り、
      時空転移の原因である魔力制御ユニットへ再接触する・・・
      しかし、まるで仕組まれたかの様にタイミングが良すぎますわね
 この娘は時空転移して以後、世界へ多くの影響を与えてきた。
      それらは、元から時空ループに組み込まれた運命にょろ。
      昔の己と「魂の融合」をしたのは、とても興味深かったにょろろ。
 おうめさん、まさか過去の自分にも会っているの?

 えぇと、はい、偶然会ってしまって、
      一緒に御飯を食べたり、あ、あとお姉ちゃんにも会ったかな
 そんな事をしたらタイムパラドックスが!!宇宙が!!
      何という危険な事を!!
 落ち着けマリアよ。
      結果として宇宙は消滅していないし、我々は無事だ。
      つまり、世界はそんなにヤワじゃないって事だろう
      『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも、
      別時間の当人同士が出会っても、気絶で済んでいたしな
 はぁはぁ、そんな事でいいのかしら・・・

 時空というものは柔軟性があり、復元性も持っている。
      多少の揺らぎは許容して、修復してしまうにょろ。
 いい加減なものですのね。

 アナログだからこそそういうことができるにょろ
      だからウチのテレビの右上にも「アナログ」って書いてあるにょろ
 それ、あと2年ほどで見られなくなりますわよ
      そんなことより、気になる事を仰いましたわね・・・
      「魂の融合」とは何ですか? おうめさんは何をしたんですの?
 いやその、昔のあたしが事故で死にかけちゃって
      そしたらあたしの身体も消えそうになったから・・・
 自分殺しのパラドックス!? 何という危険な事を!!

 マリア、落ち着けってば。

 回復アイテムを触媒にして、あたしの生命力を注ぎ込んだの。
      今ではピンピンしているわ
 主様、この娘は、希有な魂を持っているようですな

 本当ね、魂が2つ・・・あれれ、やっぱり1つ、何これ?

 そういえば、魔力の保有量が桁違いだとかマリアが言ってたな
      それと関係しているのか?
 あなた方には、魂が直接見えるようですわね。
      教えてください、おうめさんの魂はどうなっているんですの!?
 ふふふ、魂を2つ持っておるとは、
      観測対象として実に面白い娘にょろ
 でも1つにも見えますよ、主様?

 先程の話を聞いていれば解るであろう。
      この娘は、時空を超えて、己と魂を共有しておるのだ。
      二つの魂は共鳴しあい、魔力生成量を相乗化させておるのだ。
 時空転移による『魂の二乗化』・・・莫大な魔力生成・・・
      なんてデタラメな娘なのかしら!
      乙女座の私は、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない
      貴女の圧倒的な性能に、わたくしは心を奪われた───
      この気持ち、まさしく愛よ!!
      舐めるように、隅々まで研究したいですわ〜(はぁはぁ
 いや、その、舐めないで・・・

 だから落ち着けと言うにマリア。小難しいことはさっぱりだが
      要するにこの娘は、ダブルオーガンダムみたいなものか?
 あたしに、そんな力が備わっていたなんて

 盛り上がってるところ悪いが、話が脱線しているぜ
      どうやって未来へ戻るか、なんだろ?
 そ、そうだった。黒蛇王様、話を戻しますけど、
      時計塔管理者に接触すれば、未来へ戻れるのですか



 時空の復元力が働き、未来へのゲートが開くだろう
      それに乗って、元の時空へ進む事が可能だ。
      天仙娘々よ、あれを・・・
 は〜い主様♪



 これは「羅盤」という。
      持ち主を向かうべき地へ導くよう、魔力を付与したアイテムじゃ。
      身につけておれば、元の時空へ到達するじゃろう
 黒蛇王様からの賜り物だ! 控えよ、頭が高い!

 は、ははーっ! ありがとうございます!(土下座

 随分と権力に弱いガンダムだな

 良かった、これで「元の未来」へ帰れる・・・

 ・・・う〜ん

 何を悩んでいる、マリアよ

 おうめさんが帰るのは、本当に「元の未来」なのかしら?
      だって、彼女は過去に多くの影響を与えていますわ。
 それがどうかしたか

 例えば「騎士殿が5年後に暗殺される事を私達は知っている」
      それならば、わたくしは未来を変えますわ。
      過去を変えれば未来も変わる───



 ということは、おうめさんは「元の未来」へ戻るのではなく、
      「新たな未来」へ進む可能性があります。
 ??

 ??

 おうめさんは、未来の私達に会ったことがありますね

 はい

 でも、その私達は、あなたの事を覚えていましたか?

 ・・・いいえ、初対面でした

 でも、わたくしはあなたの事をもう知っている。
      既に、あなたの知っている「元の未来」とは異なっています
 マリアよ、それが何か不都合なのか?
      私はどうやら死なないらしいし、良いことではないか
 これは「並行世界派生」という仮説で、
      時空への影響によって世界が枝分かれすると考えられています。
 コインの表を選ぶか、裏を選ぶかで、
      行き先が変わるようなもんか(チャリ〜ン・・・パシッ)
      「表」だ。
 その通りです。そしてこの「仮説」によれば、
      「コインの表を選んだ世界」も「コインの裏を選んだ世界」も
      独立してそれぞれ存続するというのです。
 んあ? いま出たのは表なんだぜ。
      それ以外に、裏が出た世界が生まれるっていうのか?
      そんなことあるわけがないだろう
 えぇ、なぜなら普通は、並行世界など意識することはない。
      わたくし達は並行世界を観測する術を持たない。
      しかし、おうめさんは違います。
      異なる未来へ進む可能性を持っているのです
 ええっと・・??
      何のことだか、よく理解できないんですけど
 安心しろ、私もよく解らん

 ふむ・・・残酷な「仮説」だな
      つまりこういうことだ



 お前は「都合のいい未来」へ進むことが可能だが、
      「元の世界」へ帰ることはできない。
      「元の世界」で私は死んだままだし、
      お前の家族や友人は文字通り帰らぬ人となったお前を
      待ち続けるのだ・・・いや、金ぴか逆毛の騎士団長とやらに
      殺されているかもしれんな
 もう「あのほへい」には・・・会えないの?

 既存の魔科学では、答えられません。

 そんな無責任なことないわ!
      あたしは「あのほへい」を助けに行かなきゃいけないのよ!
      「元の世界」へ帰らなきゃ、意味がないわ!!
 おい、落ち着け。
      焦ってたら、見えるものも見えないぜ
 それに答えられそうな方が、ここに居ますわ。
      そうですわね・・・黒蛇王様。
 こやつ、我が主を試そうというのか、小賢しい!

 ふふふ、人間の発想は面白い。
      これだから観測は止められないにょろ
 どうなのです? この世界はどうなっているのです?

 ───確かに。
      「この世界」ではない「並行世界」は幾つか存在しており、
      それぞれに世界の名前もあるにょろ。
 ・・・。

 「並行世界」とは、大海を漂う魚のようなものだけど、
      枝分かれなんてしない。神々はそれを「鯖」と呼んでるにょろ。
 ほへいが言ってた
      世界はゾウの背中に乗っているという説があるんだって。
      ゾウじゃなくて「鯖」だったのね。
 ふーん、世界の根っこに鯖とはねぇ

 いやそれ、たぶん「サーバ」の事だぞ・・・って
      誰も聞いてないな。何なんだ、今回の役回りは!
 結論を言えば「並行世界」は「この世界」では派生しない。
      なぜなら、余が「観測する神」だからにょろ。
 つまり、あなたの【観測】によって、
      「この世界」の事象は【確定】してしまうということですの?
 然り。余は「この世界」の森羅万象を観測し確定する。
      それこそが余の存在意義にょろ〜ん。
 ただのニート神じゃなかったのか

 余は未来を【観測】していないにょろ。
      しかし、5年後にそこな騎士の死が【観測】されているのならば、
      それは【確定事項】であり、お前達がどう抗っても、
      改変は不可能にょろ
      つまり時間の流れは、これが正しいにょろれりひ〜。



 ですがっ! わたくし達は既に未来を知っている!
      記憶がある! それは矛盾なのではありませんか!?
 そのままであるならばな。

 【確定】した未来を変えられないというならば、
      その理由は何ですの?
 「時空の復元性」がお前達に干渉する。
      おうめが元の時空へ戻れば、お前達が持つ未来に関する記憶は
      問題が無くなる時点まで「この世界」によって封印されるにょろ
 何かに書き残しておけば良いんじゃないか?

 未来の情報を書き残そうとも、
      「この世界」の干渉により、例えそれを読んでも認識出来ない。
      記憶を保持できるのは、神格を持つ者か、それに近い者のみにょろ
 なるほど「時空の復元性」が働くとはそういうことか。

 余はただ観測する神───。
      見てるだけだから、時空をどうにかすることは出来ないにょろ。
 何を納得しているんですの騎士殿!
      「騎士殿が死ぬ運命は回避不能」と言われてるんですのよ!!
 いや、5年後に死ぬと言われても、いまいち実感がない。
      5年後の事は、5年後に考えるしかあるまい。
 ・・・私やえんこちゃんはどうするんですの?
      残される者の身にもなってくださいな
 ぬぅ・・・

 知りたいことは以上ですわ。
      他はどうせ忘れてしまうのでしょう
 そうにょろ

 では、もう帰りましょう。これから善後策を練らないと。

 これからも、余を楽しませて欲しいにょろ〜ん

 畏れと敬いを抱いて、行けぃ人間よ!

 入り口まで送ってあげるにゃん♪

 えぇと、ありがとうございました!
      あたし、きっと未来へ───(退場









 う〜ん、肩が凝ったぜ
      難しい話で、私にはさっぱりな所も多かったけど、
      これからどうするんだ、おうめ
 私は未来へ戻って・・・良いんですよね?

 1週間後、時計塔へ行くのだったな。
      そこで時計塔管理者とやらに接触し、時空のねじれを元に戻せ



 でも、それじゃあ未来は変えられない・・・
      リンゴの騎士様は助かりません
 ふん、私は暗殺されるつもりなど無い!

 でも・・・

 おうめさん、騎士殿のことは
      「この世界」のわたくし達がなんとかします。
      あなたは「元の世界」で、あなたのやるべき事をしなさい。
 はい・・・

 騎士殿の事は、あなたが気に病むことはありません。
      あなたが「元の世界」へ戻れる保証が取れたのです。
      それは、とても良い事なのですよ
 そっか、ちゃんと「元の世界」のほへいに会えるんだ
      よかったぁ・・・
 私はしばらくおうめに協力するぜ。旦那はどうする?

 ・・・やられっぱなしというのは気にいらん。
      ヘビが何を言おうと、やれるだけの事はやってみんとな。
      おうめよ、未来の事を詳しく教えるのだ
 騎士様、あたしのこと信じてくれるんですね

 いまさら信じるも信じないもあるか。
      べ、別にお前に協力するわけじゃないんだからな!
      私は私の未来のために、話を聞きたいだけだ、フン!
 あらあら、ツンデレキャラのお株を奪われましたわねぇ

 それでは、ルーンミッドガッツ王国に戻り次第、
      旅立ちの準備をするぞ。色々とやることもあるだろう
 はい!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 ねぇねぇ主様
      人間に情報を与えても、忘れちゃうんでしょう。
      なのに、どうして無駄なことをしたのですか?
 人間は、時に神の予想を超える行動をする───
      それを見るのは、何よりも楽しいことにょろ。
      あやつらが何をするか観測するのもまた一興。
      にょろにょろにょろ〜〜ん。

ではまた

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