ラグナ記 

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ラグナ記

200回目 「希望の鐘」


 先程の大揺れ、ただ事ではない。
      突入したえんこ殿たちは大丈夫だろうか・・・
      おや、こちらへ走ってくるのはギルガメッシュ殿。ご無事でしたか!?

 ちっ、ガルシュタインが居たか

 王国の諜報員か、道を開けよ

 すみません、旦那様のお通りです〜

 え、どうして反逆者のオウル元公爵が一緒に?



 邪魔だ、どけっ

 ギャッ

 このまま首都へ向かうぞ(退場

 時計塔管理人が破壊された以上、やむを得んがここは放棄する!(退場

 待ってください〜(退場

 イテテ、何がどうなっているんだ?
      一旦、本部に連絡を取ってみるか。

・・・

 あれ程の高度な魔力制御が出来るだなんて、見違えたわ
 あたし、もうほへいの足手まといにはなりません。
      もうあんな悔しい思いはしたくないから―――
 今の実力なら大丈夫でしょ。
      それにしても、短時間にレベルアップした理由が時空転移だなんてね
      あの時パパが来てくれなかったら、未だに信じられない話だわ
 えんこさん・・・騎士様は、その・・・

 いいのよ、気にしないで。今は悩んでる場合じゃないわ
      あなたは自分の事を考えなさい
 はいっ! あたし、ほへいを追いかけます

 まずは時計塔を出るのが先決ね。

 時空震の影響で、階段が崩れかかっています
      えんこさん気をつけて
 停止した機械人形が道を塞いで邪魔だけど、
      迂回しながら下るしかないわね



 そうだ、あたしのローグスキル「誘拐(インティミデイト)」で
      一気に脱出しましょう
 バカ! あんたそれ使ってどうなったか忘れたの?
      時計塔管理者を破壊したとはいえ、あんたの空間転移は不安定なの。
      精密検査が終わるまで、空間転移魔法は使用禁止よ!
 ご、ごめんなさい(汗

 言っておくけど、カプラの都市転送サービスや、
      「ハエの羽」を使った跳躍もしない方がいいわよ。
      塔から出たら、それ以外の移動手段を考えないといけないわ
      ほへいを追いかけるんでしょ。
 そうです、ほへいは何処へ行ったんですか?

 あの子達は、まいのワープポータルで脱出したわ
      行き先は「すごく遠くへ」と言ってたかしら
 それじゃあ、何処へ行けば・・・

 ワープポータルで飛べるのは、最大4箇所まで。
      それも行った事がある場所に限定されるわ。
 ふむふむ。
 まいがとっさに逃げるなら、王国内の街でしょうね。
      となれば、首都・ゲフェン・アルベルタ・イズルード・モロク・コモド
      あたりが候補だと考えられる。



 そして「人間、縁もゆかりも無いところへはなかなか行けない」って
      第100回に商人も言っているわ。
 第100回?

 いいえ、こっちの話。
      人間、誰しも不安なときは「家に帰りたい」と思うものよ。
      以上の推理から、ほへい達はまいの故郷にでも行ってるんじゃないかしら
      あの子は確かコモド出身だったわね。
 コモドって、西の果てだったような・・・

・・・

 やれやれ、ようやく出口ね。
      あの元公爵め。通路をあちこち破壊してくれちゃって!
 思った以上に時間が掛かってしまったわ

 えんこ殿、ご無事でしたか!

 この人は?

 諜報部のガルシュタインよ。

 大変です、ギルガメッシュが裏切りました!

 知ってるわよ、こっちは大変だったんだから・・・
      ほんっとに役立たずの諜報部ね!!
 申し訳ありません。今回の事件は、諜報部の網にも掛からぬよう
      ギルガメッシュ達によって、周到に準備されていたようです。
      まさか、ほへい殿やまい殿は・・・?
 あの子らは、先に脱出させたから大丈夫よ。

 そうでしたか・・・って安心している場合じゃない!
      敵の残党がサンダルマン要塞に集結し、コモドへ進軍を開始したのです!



 なんですって!?

 次から次へと、やってくれるわね

 何を企んでいるかは不明ですが、ギルガメらは首都へ向かったようです

 現在、遠隔地のコモドへ援軍を送る余力が王国にはありません。
      苦渋の決断でコモドを放棄し、住民を船で脱出させているところです。
 コモドには、ほへいが居るのよ!

 ほへいが居ると決まったわけじゃないわ。
      居たとしても、脱出船で逃げているはずよ。
 あそこには、まいの家があります。私達、二人でお世話になったんです。
      ほへいはきっと逃げたりしない。
      もし別の街に居たとしても、きっとコモドを助けに行くはずよ。
      ほへいは・・・そういうヤツなんだから。
 確かに、あの子ならそうするかもね。まさか行くつもり?

 あたしもコモドへ行きます。それが今、わたしに出来ることだから

 今から向かっても間に合わないわ、あぷりコットじゃないのよ。

 でも、じっとなんてして居られないわ。
      いざとなったら、その辺でペコペコでもかっぱらってやるんだから!
 その行動力、平時ならCIMにスカウトしたいところですが・・・



 ほっほっほ、ペコペコよりももっと早い乗り物があるぞい(ゴゴゴ

 サンタのおじいさん!

 飛行船ですって!?

 この地域に路線は無いはずです。
      それも非常事態宣言が発令されている現在、運航しているわけが・・・
 ガーハハハハハーッ! 今日のソリはジジイの貸切だ!
      乗りやがれ、おうめ!
 船長も!

 あんた、いつの間にこんな凄い人脈を・・・

 おねえちゃーん! やっほー!

 あなたはあの時の子ども! 久しぶりね、無事で良かった!

 え? 今日あったばかりだよ?

 ややこしい話は後回しにしなさい。
      おうめをコモドまで運んでくれるんでしょ?
 その通り。この為に毎日時計塔の横で待ち構えていたのじゃよ。
      ご都合主義と笑わば笑え! 笑顔は幸せ運びくるぞ、ほっほっほー!
 ほっほっほ〜ぅ!

 さあ、えんこさんも早く

 私はやることがあるから、気にせず行きなさい。
      ほへいが待っているわよ
 (えんこさん、自棄にならないでね・・・)
      行ってきます
 ご武運を!

 大将、号令を頼むぜ

 本日天気晴朗なれども雲高し。出航せよ!

 いくぞ野郎共、取り舵いっぱーい!
      針路南西、コモドへ向かう!!
 お嬢ちゃんは、奥の船室で待っていようね

 はーい

 (もう少しよ、ほへい。すぐに追いつくから―――)


・・・



 盗賊団の相手だなんて・・・逃げようよ、こもるお兄ちゃん

 僕の引きこもりライフを邪魔するなんて許せない!
      全員、返り討ちにしてやる
 でも、二人きりでどうやって・・・

 どうもこうもないよ
      この天才ウィザードのこもる様がいれば大丈夫なのさ
 うわーん、お兄ちゃんなにも考えてないー!

 自分の居場所は自分で守る! 自宅警備員こもる、出陣!

 お兄ちゃん、待って〜(退場







 聞いたかほへいよ
      あの小僧、縄張りを守ろうとする姿、なかなか見所がある
 ・・・

 我輩は、父である魔王バフォメットが、
      なぜ人間の街に攻め込まぬのかずっと解らなかった
 ・・・

 
打って出ない父を、不甲斐ないと思っていた、

 ・・・

 だが、お前達人間と行動を共にするうちに理解してきた。
      父は戦わなかったわけではない、ずっと我らの森を守っていたのだ。
 ・・・

 奪うことは、たやすいことだ。
      だが、守ることのなんと難しきことよ
 ・・・(ピクッ

 あの娘は、身を挺して仲間を守った
      えんこ殿も我らを逃がすために、死んだのであろうな
 ・・・

 種族こそ違えど、我輩はあの戦士達に敬意を表する

 ・・・守られても・・・嬉しくない
      おうめちゃんが死んじゃうなんて・・・意味ないよ
 フン、ならば守られた貴様がここで呆けている意味はあるのか?

 !!

 これ以上ふぬけに用はない。我輩はまいと共に行くぞ(退場

 ・・・







 よーし、もうすぐコモドに到着だな

 王国はコモドを放棄したみたいですよ、ボス

 モロク攻撃失敗の汚名を返上しようとコモド攻めを買って出たが
      放棄されたなら楽に達成できるな
 ラッキーでしたねー

 よーし、コモドに残ってるものを略奪するぜ

 ヒャハハハハ 俺たちコボルド盗賊団!

 無人の町でやりたい放題!

 さあ、この森を抜ければコモドだ いくぜー!
      ・・・ぎゃっ!
 おい、どうした なにかあったか?

 森に入った途端に魔法が飛んできたワン!

 ビックリしすぎて犬語出てるぞ

 おかしい コモドの住人は逃げたはずだ

 僕が引きこもり続ける限り、コモドに希望の光は絶えない!

 格好良いようで、格好悪い台詞だなー

 ウィザード? たった一人か

 僕は、誇り高き自宅警備員。だから自分ちは自分で守るのさ
      お前等犬コロなんかに勝手なことはさせないよ
 あー 犬って言った、犬って言ったなー!

 俺たちの事を犬呼ばわりするとは命知らずだな
      コボルド盗賊団の恐ろしさを見せてやれ


 アイアイサー!

 いくら数がいたって、狭い道に入ってきたところを各個撃破さ
      それ、ファイアーウォール! ファイアーボルト!



 キャイーン!

 ダメです、突破できません

 おにいちゃん頑張って、ブレス!速度!キリエエレイソン!

 おっ、なんだか身体の調子が良くなってきた♪
      きっと僕の体内《カラダ》に秘められし鼓動《のうりょく》が
      ついに覚醒《めざめ》たんだ!
 突然どうして振り仮名が?

 ハッハッハー 犬コロどもめ思い知ったか!
      我こそは影の魔術師《ウィザード オブ シャドウ》 こもる様だ!
 お兄ちゃんの病気が悪化してるよ〜

 また犬コロって言ったなー!

 トツゲキトツゲキー!

 何度やっても無駄さ、それそれ燃焼《も》えろー!

 キャイーン! 突破できない

 まだまだー! つっこめー!

 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!

 ちくしょー 何回やっても何回やっても魔法使い倒せないよー

 あいつの魔法何回やってもよけれない

 数に任せて突撃しても火壁でまとめて焼かれる

 だから僕は勝つために、親分だけは最後までとっておくー♪

 歌ってる場合か! 休ませるな、強行突破だ!

 おっ、ボスさんのお出ましだ
      それじゃあ僕も取って置きをださないとね
      この間勉強したメテオストームでいくよ!
 お兄ちゃん、SP節約しないともたないよー!

 ……呪文はどんなだったかな? えーと教科書教科書っと

 なにやってんだアイツ

 今がチャンスだ 行くぞ!

 あっ、ヤバイ 教科書なんて探してる場合じゃなかった
      ファイアーボルトを・・・詠唱が間に合わない!
 馬鹿め、この勝負もらったぁ!

 んもう、お兄ちゃんのバカァ
      ホーリーライト! ホーリーライト! ホーリーライト! ホーリーライト!

 ギャッ

 ぼ、僕の妹がこんなに優秀なわけがない…!

 のんびりしてないで!
      ほら今のうちに下がって、態勢を立て直すんだよ
 フン、僕もそう言おうと思っていたところさ
      我が妹よ、戦略的撤退だ!
 イテテテ、鼻が (ひりひり

 追え、逃がすなー!








 囲め囲めー!

 ヘッヘッ、もう逃げられないワン!

 お兄ちゃん、逃げ道がふさがれちゃったよぅ

 くっ・・・邪気眼が疼くッ・・・
      やめろ・・・ッ! 出てくるんじゃない・・・かはあっ!
 こんな時に、お兄ちゃんの邪気眼が本格発動しちゃった!?
      あぁもう、どうすればいいのー!
 おい、こいつ様子がおかしいぞ

 ただ事じゃない気迫を感じるワン

 おい、イヌ語でてるぞ

 ふははははははっ!!
      追い詰められたのはどちらか理解しているのか、この犬コロ共。
      お前達をまとめて殲滅するため、わざと誘い込んだのさ!
 なんだと!?

 極寒の地の氷の神よ、我に力を与えたまえ。言葉は氷柱、氷柱は剣。
      身を貫きし凍てつく氷の刃よ、今嵐となり我が障壁を壊さん!
      《エターナル フォース ブリザード》!!



 ぎゃあああー!!(氷結

 エターナル フォース ブリザード・・・
      それは一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結される魔法。相手は死ぬ。
 これ、普通のストームガストだよね

 うっ・・・凡人にはわからないのさ
      この僕の身体を通してでる邪気《ちから》が!
 また変な振り仮名 作ってるしー

 さぁ、次に死にたいやつからかかってくるがいい!
      《アルティメット・ダーク・ファイアー・スラッシュ》が良いか?
      《クーゲル・シュライバー》はどうだ?
      それとも、《フォン・ド・ボー》がご希望か!? フゥーハハハ!
 気をつけろ、こいつ只者じゃないぞ!

 どんな魔術を使ってくるかわからん! 警戒しろ!

 (クーゲル・シュライバーって、ボールペンだよ〜〜っ)







 コボルド隊は何を手こずっているのだ、コモドへ進軍できないではないか!

 それが思わぬ抵抗があって・・・

 このままでは埒が明かん。魔獣を投入する!

 魔獣を使うのは、いささかオーバーキルではありませぬか?
      コボルド隊にお任せ頂きたいが・・・
 アルデバランの時計塔が王国に奪還されたらしい。
      フェイヨン占領も失敗した。我等は一刻も早く、新たな拠点を確保し、
      王国陥落の為の橋頭堡とせねばならんのだ!

・・・



 急に攻撃が止んだね。どうしたのかな?

 フゥーハハハ! どうやら恐れをなして逃げ出したようだな!

 まだ安心できないと思うよ
      敵も作戦を立てているんじゃないかなぁ
 どんな作戦で来たって、「コモドの紅蓮術士」こもる様がやっつけてやるさ
      大丈夫だ、お前はちゃんと守ってやるさ
      コモドの町も、家も、かーちゃんも、お前の部屋だってちゃんと警備する
 こもるお兄ちゃん、かっこいー
      でもさっきは影の魔術師とかいってなかったっけ?
 僕ほどの術師にもなると、いくつもの通り名があるのさ

メキメキ・・・バキバキ・・・



 なんだ!? 森の木が次々倒れていくぞ!

 なにあれ!

 
ゴアアアアアアッ!!

 通信教育のテキストで見た事があるぞ。
      グラストヘイム城に生息する合成魔獣、
      ライオンの頭に、ゴーレムの腕、蛇の尾を持つという合成魔獣だ。
      なんでこんな所に・・・!
 こっちに近づいてくるよお兄ちゃん、逃げないと!

 攻撃射程は短いはずだ、離れて戦うぞ

 
キュギョアアアアアアアッ!!

 きゃあっ、下草が絡まって走れない

 なにやってんだ、まい逃げろ!



 がはっ

 お兄ちゃん、しっかりして!

 
グルルルル・・・

 ぎゃーははは、ざまーねぇな

 一気に形勢逆転だぜ

 観念しろー

 ううぅ、痛い・・・
      オカンにもぶたれたことないのに・・・
 しっかりして、ヒール!

 殴られるとこんなに痛いんだ・・・
      もうだめだ。僕はここで死ぬんだ。
      こんな事なら自宅警備なんてやめて、逃げた先でひきこもればよかった・・・
 だめだよ、お兄ちゃん。そんなにすぐあきらめたら!
      お兄ちゃんと一緒に、お家に帰るんだから!!!
      うあーん、うあーん!
 このひまわり付きの娘、喰っていい? 喰っていい?

 だめだめ、オレが予約済みだぜ じゅるり

 うあーん!

 ちっ・・・鬱になってるヒマもないみたいだな。
      しかたない。しっかり見てろよ、ここからの大逆転をさ!
 なんだ、なんか始まるのか?

 死にぞこないに、何が出来るんだよ〜

 いや待て、あいつさっきも突然強力な魔法を使った
      油断するなよ、お前ら
 フゥーハハハ! 聞け、下郎ども。
      我は稀代の魔術師にして究極の召喚術士 こもる!
      いまよりここに、魔界の王を呼び寄せ、貴様らを屠ってくれるわ
 げぇっ、やべえよ兄貴

 魔界の王だと!?

 どうする? どうする?

 こっちにはキメラがいるんだ、負けるもんかよ!

 ふん、ならば偉大なる召喚の儀を見られる事に感謝するが良い!

 よ、呼べるもんなら呼び出してみろってんだ

 灼熱の業火を纏う巨体よ 天地を貫く紫電の鎌よ
      大いなる暗黒の淵よりいでし者 荒ぶる魔界の覇者よ
      契約者の名においてここに命ず・・・出でよ魔王――!(ドーン





 ・・・

 ・・・怖いんだ

 ・・・

 ・・・また・・・守れないんじゃないかって

 ・・・

 ・・・でも

 ・・・

 ・・・何もせずに居るのは、もっと怖い



 ・・・ついて来てくれるかい、相棒?

 ・・・

 ・・・ありがとう



 鎧も装備した。
      行こう、まいちゃん達を守るんだ

・・・

 い、出でよ魔王!! (ドーン!!

 お兄ちゃん・・・

 おいおい、もう10回目だぜ〜

 あ〜あ、飽きちまったよ、もう終わりか?

 
グルルルルル

 ほらほら、キメラも腹を空かせてるぜ
      もう喰っちまおうよ、兄貴
 だが、近づけばまた氷魔法が飛んでくるからな、キメラを突撃させるぞ

 まだだ、出でよ魔王!!

 
ゴガアアアアアァァァッ!!(突進

 だめぇ、お兄ちゃんをいじめないで!


(シュバッ!)

 
ゴギャアアアア!!

 なんだ!?

 キメラが左目をやられた!

 待たせたな、まい。我輩も一緒に戦うぞ

 ヤギちゃん、どうしてここに!

 我輩にも、魔の眷属としての矜持がある。
      ここで戦わずに、いつ戦うというのだ。
      それに、まいに撫でてもらえないのは寂しいからな
 ど、どうだ犬コロ共。
      これが僕の召喚術《デーモンズ・ゲート》だ!
      驚いたか、フゥーハハハ!
 うーん、驚いたっていうか・・・

 これが魔王?

 
ゴガアアアオオッ!!(ボガッ

 ぶぐっ(吐血

 ヤギちゃん!

 卑しい寄せ集めの魔獣め。
      我輩がいる限り、まいには指一本触れさせぬぞ・・・
 
ゴガアアアオオッ!!(ドグシャアァ

 ぐぉおあぁ・・・(流血

 もうやめて、ヤギちゃん逃げて!



 ただのヤギじゃねーか、ギャーハッハッハ!

 ゲラゲラゲラゲラ

 くそーっ! お前ら、馬鹿にするなーっ!
      食らえ、エターナル フォース ブリザード!
      ・・・だめだ、SPが足りないや
 うあーん、うあーん!!

 我輩は無力だった・・・
      力が欲しい・・・まいを守る力が欲しい・・・
      父王のような力が・・・!!!!
 ヤギちゃん・・(ぽろぽろ

―――カッ!!



 な、なんだ!?

 これはどうしたことか・・・ 力が、力が湧き出るぞ!

 
ガアーッ! ガアーッ!(怯え

 ヤギちゃん・・・なの?

 こいつは魔王バフォメットだワン!

 
フォオオオオオオオ!!!

 
ゴガァアアアァァァ!!(転倒

 やばい、キメラが押されてるぞ

 マジで魔王だったのか!

 人間が他者を思いやる強い心を理解した瞬間、
      我輩に流れる魔王の血が発現したのだ
 やっぱりやっぱり、ヤギちゃんなんだね

 すごいぞ、ぼくのエターナル フォース ブリザードの魔力が共鳴して
      ヤギちゃんに力を与えたんだな
 それは違うと思うよ?

 この魔獣の相手は我輩に任せよ。格の違いをその身に刻んでやる

 すごい、すごいや

 
フォオオオオオ!!

 
ギャガアアアア!!

 なにをやっている貴様ら、そっちの人間をさっさと始末しろ

 そ、それもそうだな

 やばい、気付かれた

 かかれー!

 《ブリッツビート》!!

 ぎゃー!

 よし、よくやったぞファルコン! さすがぼくの相棒だ。

 ほへいお兄ちゃん!



 敵部隊をこの森から一気に追い出す!
      吹き飛べ《マグナムブレイク》!!(ドゴーン!
 ちっ、たかが小僧1人の増援などに

 うぉおおおおお!!! (ドゴーン!

 キャイーン

 引けッ、引けーッ!(退場

 ちっ、ココモビーチまで下がって迎え撃つぞ(退場

 待てー!

 ほへいお兄ちゃんに補助魔法をっ
      《ブレッシング・速度増加・キリエエレイソン・マグニフィカート》!
 ありがとう!(退場

 やったぁラッキー助かった。
      ほへいくんありがとう。じゃあ今のうちに逃げるぞー!
 だめだよそんなの
      まいは、ほへいお兄ちゃんを支援するよー



 よーし、海岸の仲間と合流だ

 おらおら、かかってきやがれー!

 《アローシャワー》!!(シュバババババババッ

 ぎゃおー

 《ブリッツビート》!!(ズガガガガガガガッ

 ぎゃいん!

 コボルド隊なにをしている、回り込まんか!

 だってあいつ、超強いワン

 近づけないワン

 ふむ、まぁ時間の問題だろう。

 元騎士団長殿に何か考えが?

 あれだけ強力な攻撃を立て続けに使用すれば、SP切れも早い。
      矢の残量もすぐに底をつくだろう。
 なるほど・・・

 そして、敵はまんまと森から出てきた。
      つまり、こちらも矢を射掛けることが可能だという事だ。
      レイドリックアーチャー部隊、前進! 標的に向け一斉射!
 コボルドアーチャー部隊も続けて一斉射!

ヒュンヒュンヒュンヒュン

 回避だ!(グサッ) くっ・・まだまだァ!

 げっ、あいつ矢を受けながら突っ込んでくるぞ!

 撃ち方やめーい! 同士討ちになるぞ

 くぅ〜ん

 内側から切り崩す!
      《マグナムブレイク》連打!! (ドゴーン!



 グゲゲガガガ・・・(カシャンバラバラ

 なんという豪胆さだ。
      内側に切り込むことで弓矢を封じるなど、自殺行為に等しいぞ!、
 おちつけ、数の差まで覆ったわけではない!
      囲んで切り刻めい!

 かかれー!
 ギギギ・・・

・・・



 コモドから最後の避難船がイズルート港に到着したそうです。
      避難民の話によると、コモドにはまだ3名ほど住民が残っているそうです
 バカな、全住民の避難を命じたはずだぞ!

 どうも自らの意思で残ったようです。
      残存者の名前は「こもる」「まい」「ほへい」ということです。
 ほへい君、なんでそんなところに・・・

 ほへい殿だと!?
      ききき貴様、その情報に間違いはないのか!!
 乗船していた現地住民の証言から、確かなようです。

 (トキン王子、何故・・・)

 ふむ、まあ残りたいから残ったというのじゃろう?
      それはそれでいいんじゃないかのぅ
 んー、王様ってばすっごい薄情ね
      そんなんじゃ王様失格だよ!
 むむむ、王様失格は困る。
      ケイナよ、どうしたらよい? 救助隊でも送るかのぅ?
 はっ、では直ちに王国の全軍を以ってほへい殿救助に向かいます!

 えっ、全軍?
      三人助けるためだけに、そこまでする必要はないんじゃない?
 そうじゃのぅ。適当な小部隊を派遣してお茶を濁しておけば・・・

 
なりませぬ!

 おおぅ、急に大きな声を出すな。びっくりするではないか。

 大声を上げた失礼はお詫び申し上げます。
      しかしながら我がルーンミッドガッツ王国と陛下の権威のためにも
      臣民を見捨てるなど軽々しく言えたことではございません。
      それに賊軍がコモドに兵力を割いている今こそ
      賊の本軍を一気に叩くチャンスです。
      さあ陛下、出陣の御勅命を!
 ふむぅ。ケイナがそこまで言うなら、まあ許すかのぅ。
      ルーンミッドガッツ王国国王トリスタンIII世の名に於いて命じる。
      全軍を動かして敵軍本拠地を叩いてまいれ。
 ははっ、命に代えても!!!


・・・



 はぁ・・はぁ・・もう矢が無いか
      後はこのナイフ1本で、どこまでやれるか
 ちきしょー、ほんとにしぶといヤツだな

 おい、こいつどこかで見た事あると思ったら、
      コボルド盗賊団のアジトを爆破したやつじゃねーか!
 そうか、あの時の小僧だな

 あっれー、一緒にいた人間の雌がいないぞー?

 おーい、あの娘はいないのかー?

 ・・・

 ぎゃーっはっはっは、どうやら死んじまったみたいだぜ

 雌一匹、守れないなんて、情けないやつだな



 ねぇねぇ 今どんな気持ち? どんな気持ち?(トントン

 くっ・・・

 ははは、何本も矢を受け、その出血量では後10分と持たぬだろう。
      だが、これまでコボルド盗賊団が受けた屈辱、許せるものではない
      やはり最期は、この剣で直接仕留めてくれよう
 やっちまえー

 いけー

 戦士として死なせてやろうというのだ、ありがたく思え

 ・・・(ナイフを構える

 いいか野郎共、手を出すんじゃねぇぞ!

 来いっ!

 ぬおりゃ!(ガキン

 うおおっ!(ガキン



 それそれそれー!(ガキガキガキガキン!

 出たー、隊長の必殺技!

 目にも留まらぬ連続攻撃だ!

 うっ・・くっ・・・(ガキン

 短剣一本でよくねばる

 くそっ、負けるか! ブリッツ・・・

 ファルコンの助っ人なんでダメダメ! それっ!(ヒュン

 あっ、ファルコンが止められた!?

 どうしたこれで終わりか、もっと楽しませろ

 《集中力向上》・・・(キュィィィィン



 矢が出てきたぞ!

 え、矢は撃ち尽くしたはずだろ? 

 くらえ、《ファンタズミック・アロー》!

 魔法の矢ねぇ・・・ふんっ!(パリィィィン



 そんな・・・幻想矢が砕けた!?

 おや、もしかして今のが切り札だったとでも言うのか?

 どうして・・・

 魔力を凝縮させ、矢を放つ技と見たが・・・つまらんな

 くそぅ!

 見苦しい!(蹴りッ

 ぐあっ

 今の貴様は心が折れている。
      怖かろう!(ガキン
      苦しかろう!(ガキン
      たとえ鎧をまとおうと、心の弱さはぁ守れないのだぁ!(ドガッ
 くぅぅぅっ・・・

 お兄ちゃんが危ない!
      神様お願い、お兄ちゃんを守って。
      防御増加《エンジェラス》!! (ご〜ん、ご〜ん♪



 まだ僕は戦える、守るんだ!

 こっちはもう飽きたぞ。さぁ止めを刺してやろう。
      オレ様が、貴様の死神というわけだ
 負けるもんか・・・絶対に負けるもんか!

 ギャハハ、どうやって勝つつもりだ?
 殲滅・・・殲滅・・・(ザッザッザッ

 耳をそいでやろうか、心臓を串刺しにしてやろうか
      それとも生意気な首を落としてやろうか
 (出血多量でふらふらする・・・)
 まずはその腕、もらったああああ!!!
      ん・・・なんだ、急に空が暗くなったな
 おい、何だあれ!?

 空に船が飛んでる!

 飛行船だワン!!

・・・

 ほへい・・・どこに居るのほへい

 おいジジイ、敵がコモドに入り込んでたらどうすんだよ!

 その時は、海岸から突っ込めい!

 そいつは高くつくぜえ!

 待って、いまココモビーチで何か光ったわ
      鐘の音が聞こえる・・・これって!?
 船長、望遠鏡を出してくれ

 おうさ、もう見てる・・・ほへいが戦ってるぞ!
      しかしこいつぁヒデえ・・



 アタシにも見せて! 早く!

 あっこら、てめぇは見るんじゃねぇ!

 ほへい! あんなに血だらけになって・・・

 だから見るなっつったろ!

 船長、早く下ろして、早く! ぐずぐずしないで!

 わかってる、野郎共ビーチに降下を急げ!

 許せない、あたしのほへいに よくもよくも・・・
      ゆ る せ な い―――(ぷっつん
 着陸準備ー!

 はあああああああああああ!!!!!!(バリバリバリバリ

 おい、降りるまで待てっての!

 いかん、完全に切れとるぞ!

 
降り注げ、
      
七天貫く幻想雨滴《RAIN-BOW》!!!!



・・・



 ギャアアアアア!!!
 退避・・・退・・(ガシャパリンバラバラ

 なんだっ、矢が降ってきた!

 損害状況を知らせい! 敵はどこだ!?

 まだまだ終わらねぇぞ、こっからが本番だ
      主砲エクソダスジョーカーIX用意! 撃てぇーッ!!(ドゴーン

 キャインキャイン!!!

 馬鹿なっ、そんな馬鹿なっ

 あれは幻想矢だ・・・幻想矢を使える人ってまさか・・・





 高度が下がるまで待ってられないわよ、とぉ!!

 おおっ、やめろー。…あの小娘、飛行船から飛び降りやがった!?

 高所恐怖症は完全に克服しとるな…





 
いーくーわぁーよぉー

 んっ? 何の声だ?

 んー? 上から?

 この声は・・・!?

 スーパーおうめキィィィック!!(ドゴーン



 ギャイン!(砂に埋没

 あっ、隊長がやられた!

 ぼくは・・・夢を見ているのか?

 夢でも幻でもない! あたしはここに居る!

 思い出した・・・ぼくのお姉ちゃん・・・おうめお姉ちゃん!!

 ほへい・・・会いたかったっ!

 えぇと、おうめちゃん・・・なんだよね?
      なんだかこの間より大人っぽい様な・・・
 詳しい話は後回しよ。ほへいの治療をお願い!



 わかった。聖域構築《サンクチュアリ》

 ひどい打撲だ、僕の魔術で傷を冷やそう《氷結果汁》!

 それただの、フロストダイバーLv.1だよね

 おうめお姉ちゃん・・どこへ・・・

 後はあたしに任せて休んでなさい

 まさか一人で・・・無茶だ

 誰に言ってんの。あなたのお姉ちゃんは無敵なんだからね♪

 ちっ新手か。しかし一人増えたところでなんだというのだ。
      者共、かかれー!
 隊長の仇め、覚悟しろー!

 へへん、あんたらの攻撃なんで当たらないんだから!

 速い!

 ガガガ・・ドコダ

 後ろ取ったわよ。サプライズアタック!(ズバズバズバッ



 グアー(カシャンパリン

 あの小娘、なかなかやりおる。
      魔獣キメラはどうした!? 早く呼び戻せ!
 あいつなら、森でのびているぞ

 うわっ、なんだあの化け物は!?

 ヤギちゃん!

 え、このデカイのがヤギちゃんなの?

 いかにも。我輩はバフォメットJr改め二代目魔王バフォメットだ。

 すごい魔力を感じる・・・ あたし、震えがとまらない・・・
      これが魔王の力なの?
 娘よ、おびえることはない。
      我輩の力は、我輩の友と飼い主を苦しめた者どもにしか向けられん。
 おい、これ、やばくないか・・・?

 よく気がついた。犬にしては頭が良いな。
      お前たちは今、相当やばいことになっているぞ。
      なにせ、魔王を敵に回してしまったのだからな。
 そ、そうですよね、やばいですよねー。
      ・・・に、にげろー!
 しかし、もうひとつ気づくべきだったのは、もう手遅れだということだ。
      魔界の焔に焼かれよ《ロード・オブ・ヴァーミリオン》!(ずどーん!

どごーん!

 燃エル・・・ガガガ(カシャンパリン

 馬鹿な・・・ 魔王バフォメットなど、こんな場所にいるはずがない。

 あんなの相手にしてちゃ命がいくつあっても足りないワン!

 おい、またイヌ語でてるぞ!

 ぐぬぬ・・・

 伝令!

 何事だ、こんなときに!

 王国の首都プロンテラから、王国軍全軍の出撃を確認。
      こちらに向かってきている模様です。
 なんと!? もはやコモドなどに関わっている場合ではない。
      遺憾ながら、この戦場を放棄する。退却!
 言われなくても逃げるワーン(退却

 なんとか追っ払ったわね。
      あのちっちゃなヤギちゃんがこんなに強くなっちゃうなんて、

      びっくりしちゃった。
 ハーッハッハッハッハッハ!
      我に逆らった愚かモノども逃げていくぞ。
      「煉獄の導師」こもる様の力、思い知ったかー
 なにがお前の力か(ゲシッ

 ぐはっ!(昏倒

 ・・・動かなくなっちゃったわよ。大丈夫かしら?

 さすが魔王のツッコミだねー。
      でもこんなに大きくなっちゃったら、もうなでなで出来ないよ?
 そ、それは困る!

 ほへい、あたしたちコモドを守りきったわよ

 うん、よかった・・・(がくっ

 ちょっとほへい! ほへい!

 大丈夫、安心して気を失っただけだよ

 驚かせないでよ・・・

 でも身体のダメージが大きいから、どこかでキチンと治療しないと

 飛行船に医務室がある、早く運ぶんじゃ!

 ふぬけと言ったのは取り消そう
      見事な戦いであったぞ、ほへい。


ではまた


 

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