ラグナ記 

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202回目「インペリアルクロス」



 丈夫な服 げっと。
      これでパンツも安心だ。



 安心したら眠くなった。
      長旅、連戦、修羅も疲れる。少し休息する(すやすや…

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 伝令!

 にゃっす ソロ2号、どうかしたか?

 でしこ軍団長閣下に命令書の速達です
      差出人は、ゲフェンの赤リンゴ殿!

 お師匠さまかー

 リンゴの騎士殿はご無事だったのか・・・これは心強い!

 読み上げます!
      ソグラド砂漠西方サンダルマン要塞に反乱軍が集結中。
      全軍をもってこれを殲滅する。
      ソロ軍団はジュノーに停泊中の飛行船を徴発し、
      サンダルマン要塞を強襲せよ。
 んー もっとわかりやすく言って

 ジュノーの飛行船をぶんどって、文字通り飛んで来いという意味です

 どうやら、正規軍だけでは太刀打ちできないようだな

 本国には援軍を出す余裕が無いのです

 ゆえに、我らソロ軍団が期待されている!

 ヒャッハー ソロ軍団、全軍出撃いくぜー!

 念のため聞きますけど、ジュノーの駐屯は・・・?

 おいおい、でしこ軍団長のいつもの方針は分かってるだろ

 我らはソロ軍団、全軍ってのは全部の軍だ!

 戦える奴は片っ端から飛行船に乗せちまえー
      出撃出撃ヒザマヅケー!

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 (すやすや・・・

 乗船を急ぐぞ

 おや、あぷりコット殿が休んでおられる
      もしもし、起きてください
 むにゃむにゃ(すやすや・・・

 起きないな、お疲れのようだ

 どうする?

 軍団長が言っていただろ
      「戦える奴は片っ端から飛行船に乗せちまえー」
 おおそうか
      この人「戦える奴」どころかめちゃくちゃ強いもんな
 しかし熟睡していて起こしても起きないぞ?

 ではこのまま飛行船に運ぶんだ
 そうか、ではそうしよう

 丁重に運ぶぞ

 エイサ

 ホイサ

 (すやすやすやや・・・

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 クックック 軍の不在に王都を狙うとはなかなかの策であったが
      所詮逆賊の浅知恵。私の敵ではなかったな。
 人を散々心配させといて何を偉そうに…

 偉そうもなにも、私は王国の全権を任されているからな。
      間違いなく偉い。
 そういう事じゃないわよ、バカ!

 まったくこの人は……
      それはそうと、先に出撃したケイナの軍を
      追わなくてもいいのかしら?
 うむ、そうだな。王国の全権を振りかざして、
      生意気なケイナの奴を土下座させてやろう。
 そーかそーか、そらええこっちゃなぁ

 ええこっちゃええこっちゃ〜
      で、旦さん、なにがええこっちゃなんやぁ〜?
 わかりもせんのに適当な事ばっかり言うとったらあかんでぇ
      あのケイナっちゅうネエちゃんは大義やら身分やらウルサイから
      あんなもんが上に立たれたら商売人には迷惑やがな。
 へぇ〜 そういうもんなんやなぁ

 お金の勘定ばっかりして、いやらしい人だわね。

 いやらしくないッス。お金は大事ッス!

 金はあっても幸せになれるとは限らんけど
      なかったら間違いなく幸せになれまへんでぇ
 んー、たしかに予算は余裕がある方がいいわね。

 うむ、金はあるに越したことはないな。
      では今後の我々の利益のために、力を貸してもらおう。
 おう、騎士は権力を振りかざしてガッポリもうけなはれ
      ワシらはそのおこぼれにあずかるるさかいにな
 クックック、おぬしも悪よのぅ。

 お前こそ

 儲かるんだったら給料上げてもらえるッスか?

 フン、それはお前の働き次第だ
      馬車馬のように働けば考えてやらんこともない。
 わかったッス。頑張るッスよー!

 お小遣いも上げてね、パパ

 もちろんだとも。えんこちゃんには心配させた分、
      もっともっといい暮らしをさせてあげるよ
 そうこなくっちゃね♪

 ほんなら全員の利益も一致したことやし
      ケイナを追いかけるとしよか
 よし、出陣だ えいえいおー!

 みなみ、そのへんのニイチャンらに金ばらまいて
      荷物運びに動員せぇ
 旦さん、まかしといてぇ〜

 なんか王国の財政を食いつぶしそうな感じね……

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 ぐぬぬ、コモドにあんな戦力がいようとは……
      後方拠点を確保できなかったのは痛手だ。
 俺達の隊長もやられちゃったワン!

 魔王が出るなんて聞いてないクゥ〜ン

 あとは王都を攻撃しているネプチューン殿に期待するしかないか

 申し上げます!

 なんだ騒々しい

 プロンテラを奇襲は失敗!
      ネプチューン殿はリンゴの騎士によって倒されたとの事です。
 リンゴの騎士だと? それは本当か!

 プロンテラから撤退した者は口をそろえてそう言っております。
      おそらく間違いないかと。



 騎士め、どこまでも忌々しい奴!
      時計塔にも突然乱入してきおった
 おお、オウル公爵様。戻られましたか。
      それとお前は…… 騎士団にいたギルガメッシュか?
 久しぶりですな、元団長殿

 元騎士団の2人は顔見知りよな
      今まで正体を隠していたが、我らの支援者である
      皆の脱獄などに裏から手を回してくれた
 そうか、お前が……
      どういうつもりだったかしらんが、世話になったな。
 挨拶はそのへんにせい。
      ネプチューン殿が討たれた以上、次のリーダーを決めねばなるまい
 そうですね、旦那様にしては言うことがまともです。

 うるさいなお前は。使用人の分をわきまえよ!
      まあともかく、身分からして高貴なるこのワシ、
      オウル公爵がなるのが妥当じゃな

 えー、無能なのに〜?

 お、おぅ……

 申し上げます!

 今度はなんだ?

 ケイナ=バレンタイン率いる王国軍が
      このサンダルマン要塞へ接近しております!
 ついに来てしまったか……
      
 敵は我が方の倍はあろうかという大軍です。
      まともにぶつかって勝ち目があるとは思えません。
 となると籠城か。しかし援軍のあてもなく要塞に籠るなど……

 援軍なら連れてきていますぞ!

 なんだと?

(ザッザッ
(ザッザッ

 亀の軍団だと?

 亀島より亀将軍の援軍を得ている。これで戦力は互角以上だ

 ギルガメッシュ、貴様一体……

 なんで亀かとか気にしちゃいかん 勝てればいいんじゃ勝てれば。

 たしかにこれなら勝てそうですねぇ



 では王国軍を迎撃してやるとしましょうか
      亀軍団よ、王国軍に無慈悲な鉄槌を! 容赦ない粛清を!

「「「無慈悲に!!」」」
「「「容赦なく!!」」」

 征くぞ者ども!

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 やっと追い着いたですぅ

 お待たせしました。じゃすこ隊、本隊に合流しました。

 庶民の分際で遅れてくるとは無礼な奴らめ。
      ワシら貴族に対する礼儀も知らぬか。
 なんか偉そうなおっさんがいるです。
      なんであの人あんなに偉そうですぅ?
 ダメだよじゃすこちゃん、そんな事言っちゃ。
      あの人達はあちこちの地方領主様たちだよ
      貴族だから生まれた時からずっと偉いんだ
 んー、生まれた時から偉いのは王様だけじゃないですぅ?

 生まれがいいだけで何がそんなに偉いのかね?
      俺たちミッドガッツ銃撃隊の方が遥かに役に立つってのにな。
 庶民が何を言うか!

 無駄話はそれくらいにしてもらおう。

 はっ、バレンタイン将軍。

 これから逆賊どもを討つための軍議を始める
      私は全軍指揮を任されたケイナ=バレンタインだ。よろしく
 よろしくですぅ。じゃあさっそくみんなでどーんと敵に突っ込むですぅ

 じゃすこちゃん、しっかり作戦を考えていかないとダメだよぉ。

 作戦ですぅ? そういう難しいことはぼんごんにお任せするですぅ。

 さっきから、何なんだあの小娘は?
      成り上がり者はこれだから……
 この戦いは逆賊どもを根絶やしにし、王国の正義を示す戦いである。
      そのため王国に伝わる由緒正しき陣形を用いるべきだ。
 ゆいしょただしき、ですぅ?



 我々はインペリアルクロスという陣形で戦う。
      防御力の高いじゃすこ大佐率いる親衛隊が前衛。
 前衛ですぅ。ガンバるですぅ!

 両脇を諸侯の軍とプロンテラ騎士団が固める。

 おー!

 ヘッ、俺たち銃撃隊はどこに配置されるんだ?

 ミッドガッツ銃撃隊は本隊の後ろをお願いしよう。

 お〜いおい、それじゃあ俺たちは全然戦えないじゃね〜か。

 これは王国の栄光の下に逆賊どもを跪かせるための戦いだ
      そこに銃などという怪しげな飛び道具など必要ない
 ヒューッ、何言ってんだ将軍さんよ。あんた正気か?

 将軍に向かってなんたる口のきき様。
      下賤の者は黙って従っていればよいのだ。
 古来より戦場の華は騎士団と相場は決まっておる。
      銃や魔法など邪道であろう。
      いやぁ。将軍は戦いのことをよく分かっていらっしゃる。
 お〜いおい、お前ら本気か?

 以上で軍議を終了する。陣形が整い次第出撃するぞ。

 なんか作戦がきまったみたいですぅ。ぼんごん、出撃するです。

 ケイナさんは敵よりも建前と戦ってるみたいだね。大丈夫かな?

 ぼんごんは心配性です。そんなのじゃすこがいるから大丈夫ですぅ。

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 敵軍、動き始めました!

 いよいよ戦うですぅ。

 あれ、でもあんまりこっちに向かってこないね?
      両翼の部隊に向かうのかな。
 われわれ国王親衛隊に恐れをなしたのでしょう。
      これもじゃすこ大佐の武名があってこそですね。
 じゃすこが怖くて敵がよけてるですぅ?
      じゃすこ怖くないです! じゃすこは可愛いですぅ!
 いやあの、見た目の問題ではなく……

 そんな話してる場合じゃない。もう戦いは始まってるんだよ。

 ぼんごんはじゃすこが可愛くないと思ってるですぅ?

 え、いや、あの、その、か、可愛いけど……

 ならいいです。可愛いじゃすこのためにみんな戦うですぅ!

 かしこまりました。我ら、可愛いじゃすこ大佐と共に!

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 なんだあの敵軍は? ほとんど亀ではないか。

 はっ、あれは亀島にいる亀どもかと思われます。

 あんな訳の分からないものと戦うなどやっておれん。
      戦いはケイナの奴に勝手にやらせておけばいいのだ。
 よろしいのですか? ケイナ将軍は王国軍の総司令ですぞ。

 総司令だかなんだかしらんが、あいつも元々は単なる騎士の出だ。
      表向きは立ててやっているが、
      高貴な血筋たる大貴族の私が従う必要など無いだろう?
 しかし、後ほど国王陛下に報告されて罰を受けるのではありませんか?

 そんなもの、適当に戦うフリをして、頃合を見て引き上げればいい。
      私の戦力は私のために使うものだ。
      こんなところで減らしてたまるか。

………………………………………………………………………

 うわっ、マジでこっち来た!
      なんでこんなに亀がいるんだよぉ!
 こいつら硬くって攻撃が通じないよぉ!

(ザッザッ
(ザッザッ
(ザッザッザッザッ

「弓発射、弓発射」(ヒュンヒュン

 うわわっ、こんなに敵がいるなんて聞いてないー!
      誰だよ敗残兵の掃討戦だから楽勝だなんて言ってたのはぁ!

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 あ〜らら、なんか両翼攻められて押されちゃってるよ。
      貴族やら騎士やら、偉そうに言ってる奴らも大した事ないね
 隊長、そんなのんきな事言っててもいいんですか?
      味方が押されてるんですよ?
 そんなの知らね〜よ。俺たちゃ戦うなって言われてんだからよ。
      お前さんらもそんなに気張ってないで、適当に休んどきな〜

………………………………………………………………………

 敵軍は、前衛部隊以外は士気が低いようだな。

 とくにプロンテラ騎士団が弱い。へっぽこにも程があるのぅ。

 …すいませんこの間まで団長でしたホントもうしわけない。

 …すいませんこの間まで団員でしたホントもうしわけない。

 いやあの、そんなつもりで言ったわけじゃなくて。

 まあ、団長がちゃんと鍛えてなかったおかげで
      今回は戦いに勝てそうですし、良いじゃないですか。
 そ、そうだな。そういう事にしておいてくだされ。

 この調子なら程なく両翼を崩せましょう。
      そうすれば前衛を包囲し、本体を攻撃できます。
 しかし、敵の後衛部隊はなんのためにいるのかのぅ

 あれはインペリアルクロスという陣形だ。
      王国に古くから伝わる由緒正しき陣形。
      敵の大将にこだわりがあるんだろう。
 そんな無駄なこだわりで兵力を減らしてくれるのであれば
      我らとしては好都合。一気に打ち破ってみせましょう!

………………………………………………………………………

 亀なんか弱っちいです。じゃすこ無敵ですぅ。
      怯えるです。竦むです。
      亀甲羅の性能を活かせぬまま死んでいくですぅ!
 じゃすこ大佐、申し上げます。
      プロンテラ騎士団は敵に一方的に押されている模様。
      貴族部隊も徐々に後退している模様です。
 味方の両翼が戦線を維持できないみたい。
      このままだと前衛の僕たちは包囲されちゃうよ。
 ここは我々も後退をした方がよろしいのではないでしょうか?

 ダメです!

 おおお、じゃすこ大佐!?

 じゃすこと王様親衛隊は絶対に負けないですぅ。
      後退なんかしないですぅ!
 しかしそれでは我々は……

 うん、そうだね。前衛の僕らが崩れれば戦線は完全に崩壊する。
      そうなれば僕らは追撃を受けて、生きては帰れないよ。
 ぼんごん殿、このまま踏ん張っていればどうにかなるものでしょうか?

 それは、後ろの人たちが戦線を立て直してくれるかどうかだね。
      望みは薄いけど、それに期待するしかない。
 とにかく我々はここで戦い続けるしかないわけですか。



 ぼんごん、じゃすこは死に場所をみつけてしまったです。

 じゃすこちゃん……

 じゃすこ大佐……


………………………………………………………………………

 ……戦局はどうなっている?

 騎士団部隊、諸侯軍ともに士気が低く、後退しつつあります。

 前衛部隊のみ踏ん張っていますが、敵に包囲され危機的状況です。
      本隊を前進させて前衛を救いましょう。
 それでは本隊が敵に包囲されてしまう。
      ここは一時撤退をして態勢を立て直す時だ。
 何を言うんだ。それでは前衛のじゃすこ隊を見捨てることになるぞ。

 こうなればやむを得ない。本隊まで壊滅させるわけにはいかん。

 貴様、我が身がかわいくてそのような事を言っているのか!

 何を言うか、お前こそ大局を見誤っている!

 言い争いをしている場合ではない。
      この状況を打開する策を考えねば。

 
…………ヒャッハァァァァァァアアアアアアアアアアアアー!



 なんだあの声は?

 上空に現れた飛行船から大量の落下傘が降りてきます。

 あれはソロ軍団です。
      北の果てジュノーにいたはずなのになぜこの砂漠に?
 なぜもクソもあるか。この無能ども。

 リ、リンゴの騎士!? 今までいったいどこに……

 ケイナ=バレンタインよ。たった今をもって王軍の指揮官を解任する。
      以降、私の指揮下に入れ。
 なっ、そんなことが許されるものか。
      私は国王陛下より全軍の指揮権を預かっているのだ。
 その指揮権というのを剥奪するといっているのだ。
      この私は陛下より行政・立法・軍事の三権すべてを委託されたのだ。
      私の命令は陛下の命令と同じだ。黙って従うがよい。
 なんということだ。
      貴様のような陰謀家に王国の全権が渡ってしまうとは……
 おまえなぁ、そういう事は本人の前で言うなよ。
      それに陰謀家でも無能よりはいいだろ。
 ほら「国王のサイン入り命令書」よ、文句ないでしょ

 くっ、確かにこれは陛下の御署名。わかった、指揮権を譲渡する

 指揮官解任となると、ケイナ殿はわれらと同じ兵卒ってことかな?

 うむ、そして新入りなので俺たちが先輩って事になるよな。

 おお、そうか じゃあ新入り。ちょっと飲み物とってこいよ。

 俺の分もな。ダッシュで行ってこい!

 いやいやいや、飲み物買いにいかせるな。

 ううう…… なんという屈辱。
      国王陛下のお立場を守れなかったばかりか、
      このような仕打ちをうけようとは。

 とりあえずケイナは指揮官付の100人隊長ってことにしとこう。
      お前らはその部下な。
 おおおぅ なんってこった。
      先ほどのご無礼お許しください。
 ケイナ隊長! なんでもご命令を!

 手のひら返すの早いな。

 ……人間不信になりそうだ。
      とりあえず飲み物をとってくる事にする。
 ああ、隊長。俺たちが持ってきます。

 隊長はここで待っててくださいよー。

 うるさい。私はお前らなんか信用しないぞ。

 うふふ、権力を追われるって哀れな事なのねぇ

 さて、反撃開始と行こうか



ではまた

 

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