ラグナ記

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97回目「とりのささみ」

 

 ねーパパ 最近太ったんじゃない? 

 な、なにをいきなり?
      騎士として日々剣を振るっている私が太るだなんて!
 いや、絶対太ってる
      なんかアゴの周りとかちょっとたるんできてるよ
      またどっかでヘンな遊びとかしてるんじゃないでしょうね
 さすがは奥方さま、御明察でござるなぁ

 だれが奥方よ! わたしは援交相手なのよ
      ……ところで、あなただれ?
 おおっと、申し遅れたでござる
      拙者は天津の忍者、カブキでござる
      
前々回より騎士殿にお仕えすることになったのでござる
 ふーん、パパったらまた変なのを引き込んだのねぇ
      まあいいわ、それより御明察ってどういうこと?
 いやぁ、騎士殿は我が故郷、天津の殿さまを剣で脅して
      連日飲めや歌えやの宴会をなさっているでござる
      豊かな自然に恵まれた天津の海の幸山の幸を食い散らかしたり
      ミスあまつのおしりをさわったり
      腰元の帯を引っ張ってクルクル回したり
      まさに酒池肉林といった具合で毎日お楽しみでござる
 あっ、このバカ! 余計なことを言いおって!

 へぇ お尻触ったり、クルクル回したりしてるんだ
      また、わたしに隠れてそういうことを……
      絶対に許さないんだからっ!!
 おっと、拙者としたことが、口がすべってしまったでござる
      ここはひとまず退散するでござるよー
 こら、このヘボ忍者! 逃げるなー!

 キイィィィィィーーーーーーッ!


……………………………………………………………………

 やれやれ、ひどい目にあった カブキの奴め、覚えておれよ
      しかし、さすがに最近不摂生をしすぎたかな
      しばらくはペコペコ騎乗もやめて歩くこととしよう
      ほれ、愛鳥ササミ 遅れずについてこいよ
 クワッ ご主人さまより僕のほうが歩くのが速いクェッ
      ご主人さまこそ遅れちゃだめだクェッ
 ぬお、なんだ 降りた途端に喋り始めよって
      まあよい、それよりササミよ
      私に向かって遅れるなとは、なんと無礼な発言であろうか
 クェッ?

 私が速く歩こうと遅く歩こうと私の勝手だ
      ササミは私に合わせて遅れぬよう、追い越さぬよう歩くのだ
      私が主人で、ササミはその家畜 そのことを忘れるな
 ご主人さまはワガママだクェッ でもまあいいクェ
      久し振りに背中が軽くなって楽ちんだクェ
 うむ、そうだ 私の恩恵を受けていることを忘れるな

 クェ なんだかよくわかんないけどありがとクェ
      ご主人さまもたまに歩くといいことあるクェ

 きっとおいしいご飯が見つかるクェ

 別に食い物を探すために歩いておるのではない
      むしろ食い物は減らさねばならんのが現状だ
 クワッ 食べ物減らすだなんてとんでもないクェッ!

 食い物よこすクェッ!

 やかましい 今は狩りの途中だ
      だまって大人しくついて来い
      よし、ピエロ妖怪を倒したぞ

 ……ササミよ 一体何を食っておるんだ?

 ピエロが小鳥のエサを持ってたクェ
      きっと手品の鳩とかのエサだクェ
 ふむ、そうか 私はてっきり……
      まあ、腹もふくれてよかったな ちょっと一休みするとしよう

 こら、つつくな まだなにかあるのか?

 あんな小鳥のエサくらいじゃ腹の足しにならないクワッ
      もっと食いもんよこすクワッ
 ええい、食い意地ばかり張りおって!
      騎乗しておったときは何も言わんかったくせに!
      ……おお、そうだ 降りると喧しくなるのなら乗ればいいのだ
      さあ、ササミよ 私をその背に乗せるのだ

 歩いて食い物さがすクワッ

 おのれェ! 家畜の分際で生意気にもほどがあるわっ!

 こんなペコペコ、返品だ!
      精肉場にでもおくってくれ!
 クワッ 自分が食べ物になるのはいやだクェッ!


ではまた

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