ラグナ記

戻るTOPへ

163回目「南国リンゴ果汁100%」

 

 おい リンゴを知っているか?

 えっ、リンゴ? しってるよー

 そうか リンゴはどこだ 教えてくれ

 えーと、向こうの果物屋さんで売ってたよ リンゴおいしいよねー♪

 リンゴは人だ 食うな!

 えー!?

 

 パパ、荷物まとめてどこに行くつもり?

 おっと、えんこちゃん 見つかったか

 見つかると悪いようなところに行くのかしら?

 いや、別にそういうわけじゃないが
      ちょっとしばらく国外逃亡しようかと思ってな
 なんで逃げなきゃいけないのよ?

 諜報員からの情報によると
      あぷりコットのヤツが私のことを探しているらしい
      私とポリン仮面が同一人物だとヤツに知られたくない
 別に知られたっていいじゃない なんか不都合でもあるのかしら?

 ポリン帽のモンクと一緒に工作活動をしている謎の騎士が
      私と同一人物だと明らかになってはまずいだろう
 なるほどね あの娘なら良く考えずに
      「ポリン仮面はリンゴだ」とか言い出しかねないわね
 まあ、どうせ3日もすればリンゴのことは忘れるだろう
      ゆっくりバカンスを過ごす事にしよう
 あらそう、お土産忘れないでね

 お兄ちゃん! お兄ちゃん! あのキノコ、食べられるかなぁ……

 ミーナ……今日の夕食は、何かちゃんとしたものにしようか……

 あ、ううん。無理しなくていいよ……

 ほら、なんだ。俺もそろそろいもには飽きてきたし、さ。
      今日はこの街で宿を探すか。
 うん!

 なんと貧乏臭い会話をしておるのだ

 お兄ちゃん! あのリンゴ、食べられるかなぁ……

 人の頭装備を食えるかどうか検討するんじゃない

 わっ、ごめんなさい 聞こえてました?

 フン 聞こえておるわ

 騎士さん、芋を買ってくれませんか?

 芋なんぞいらん 倉庫に遺伝子組み替えたやつが山ほどあるからな

 そうですか……

 それにしても辛気臭い奴等だな 顔色も悪いし
      まともな物を食っておらんのではないか
 実は、私達の母が重い病気にかかってしまって……
      薬がとても高価なもので、私達には手に入れることが出来ません
 ほう、それは大変だ
      その貧乏っぷりではしょうがないな
 それで、母の病気を治す法を身につけるために
      世界を旅しながら修行しているんです
 なるほど、それは立派な心がけだ
      体に気をつけてがんばれよ それではまた
 あーちょっとちょっとー!

 何だ 私は国外逃亡しなければならんから忙しいのだ

 今の話、聞いたでしょ 僕達大変でしょ?

 うむ、大変だな だからがんばれよといっている

 母が病気で、薬が高価で……

 ええぃ、すがりつくな
      しょうがない 5000zくれてやる
      これでステーキでも食うがいい
 ありがとうございますっ!

 まったく、私は急いでいるんだ
      これ以上貴様等の相手などしてはおれん さらばだ(退場
 お兄ちゃん、これで今日の夕食はステーキ食べられるね

 バカっ ステーキなんか食ってるヒマがあるか
      あの騎士を追いかけるぞ
 えっ ステーキ食べないの?

 せっかくの金づるを逃がしてたまるか 早く行くぞ!

 あーん ステーキがー!

 

 さてさて、アユタヤについたぞ
      風光明媚な南国だと聞いている ゆっくり観光でもするか
 あっ あの男は…… 長老に知らせなきゃ!

 

 とうとうこのアユタヤにもゲフェンの赤リンゴが来てしまった

 アマツや龍之城を征服した赤リンゴか!?
      それは本当なのだろうな
 本当です あの赤いリンゴ、間違いない!

 アユタヤの地を支配するために来たに違いない 恐ろしい事じゃ

 何をそんなに恐れている 相手はたった一人だろう
      我等が行って捕らえてやろうじゃないか!
 龍之城は 騎士とは別に極秘潜入していたソロ軍団によって
      制圧されたと聞いておる
      本当に単独で行動しているとは考えにくい
 しかし、今のところ他に怪しい入港者はいませんよ

 港さえしっかり見張ってれば大丈夫だ

 いや、たとえ今はヤツ一人だとしても
      下手に手を出せば敵軍を呼び寄せかねん
 じゃあどうするって言うんですか!
      きっと莫大な税金が課せられるに違いない
      米と魚だけが主要産業のこの国にそんな金はありませんよ!
 敵が来るなら迎え撃つまでだ 抗戦あるのみ!

 生まれ育ったこのアユタヤが、戦場になるのですか……
      そんなの嫌っ 嫌ですっ!
 アユタヤの自立を失わせる判断は出来ない
      独立保持のためには闘わねばならん
 こちらが一切攻撃をせず無抵抗でいれば
      相手も攻撃しようなんて思わないはずだわ 闘うなんてだめですっ!
 ……

 長老、ご決断を!

 なにがあっても、町を血に染めるわけにはいかん
      ……我がアユタヤは、ルーンミッドガッツ王国に対し
      従属国となることを申し入れる事にする
 なんと、ばかげた事を!

 戦って敗れるより、和を結んで従う方がよい
      アユタヤは生きる道を選ぼうではないか
 長老がそうおっしゃるのなら、従いましょう

 戦いは避けられるのですね よかった……

 良くなどあるかっ 我々軍部はなんとしても戦うぞ!

 

 ふむ、なかなか美しいところだ
      この街に別荘を構えてもよいかもしれんな
 街を見て回っておる 攻撃のための視察じゃろうか……?

 長老、何を恐れておられるのです
      我々は和を結ぶと決めたではありませんか
 そうじゃ 我等は平和のために恥を忍ぶと決めたのじゃ

 そうです さあ長老、リンゴの騎士殿をお迎えせねば!

 なんだ爺さん 私に何か用か?

 ゲフェンの赤リンゴ殿とお見受けする
      ワシはアユタヤの長老 町を代表して話をしに参りました
 ん? 私はただの観光客だ 何を話するつもりだ?

 ただの観光客とは、ご冗談を…… まあ、立ち話もなんです
      お宿をご用意させて頂いておりますのでこちらへお越しください
 こちらの娘はミス・アユタヤコンテスト優勝者でラルリタと申します
      身の回りのお世話をさせていただきます

 ふつつか者ですが、精一杯つとめさせていただきます
      宜しくお願い致します
 ミス・アユタヤというだけあって、美しい娘だな
      しかし、どういう風の吹き回しなのやら
 リンゴの騎士様、こちらでございますよ〜

 こちらが騎士様のお宿にございます

 ……豪華すぎるにも程がある
      私はただバカンスを過ごしに来ただけだというのに
      これは一体なんのつもりだ!?
 そろそろ本音を聞かせていただけませぬか
      騎士殿はこのアユタヤを征服しに来られたのでしょう?
 違うと言うのに……

 アユタヤの民はアマツや龍之城のようにはなりたくありませぬ
      騎士殿、我等は王国に従いまする
      引き換えに平和を下さいませ
 わたし…… アユタヤの平和のためなら、身を捧げる覚悟です

 ラルリタ…… アユタヤのためだ 我慢してくれ!

 ……事情は良くわからんが
      そうまで言うならアユタヤは王国領となる よいな?
 結構でございます

 これでアユタヤは戦火から守られたのですね よかった……

 なぜか労無く国が一つ手に入った おかしな話だ

 大変だ 長老の方針に従わない軍部の連中が
      遺跡に拠って兵を挙げましたぞ!
 そんな、戦いは避けられたと思ったのに……

 愚か者どもめ 和を結ぶ事が最良の道となぜ気づかん

 そりゃ軍部としては当然の反応だろうな
      ちょっと遺跡に行ってくるとするか
 彼等の反抗はアユタヤ全体の意志ではございませぬ
      どうかお怒りをお鎮め下さい!
 わかったわかった 別にお前等をどうこうするつもりはない
      優雅なバカンスを過ごしに来たはずなのに、面倒だな……

 

 遺跡というのはここか…… おや?

 先ほどはどうも

 こんにちはー

 さっきの物乞いじゃないか

 物乞いだなんて人聞きの悪いこと言わないでくださいよ

 フン、それ以外に貴様等を形容する言葉を知らぬ
      ところで、こんなところで何をしている
 母が病気で、薬が高価で、世界を旅して、修行して……

 その話はさっきも聞いた

 というわけでいくらかでもご寄付を頂けたら……

 何故そんなに何度も金をくれてやらねばならん
      私は今忙しいのだ 貴様等が貧乏だろうと知ったことではない
 あー 待ってー 行かないでー……
      お兄ちゃん リンゴの騎士さん遺跡の中に入ってっちゃったよ
 アユタヤへの渡航料2人分で2万zもかかってるのに
      ここでお金をもらえなかったら経費割れだ
 お金もらえるアテもないのに、来なきゃよかったんじゃないかなぁ

 なんだよ お前だってさっきまで何も言わなかったじゃないか
      あの騎士からお金を貰わないことには帰るに帰れないし
      ともかく追いかけよう

 

 リンゴの騎士め 自分から我等のところに飛び込んでくるとは愚かな
      飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのこと 覚悟しろ!
 フン、雑魚ども 数だけ多いな

 ふざけるな! 全軍迎撃!

 お、お兄ちゃん! 斬り合いがはじまっちゃったよ!?

 あの騎士を見失うなよ!

 貴様等、リンゴの騎士の仲間だな? 覚悟っ!

 お兄ちゃん、危ないっ!

 うわっ! (ガキン

 くそっ 無念……

 ……こんなところまで、何を考えている?

 渡航費用までかけて追いかけてきたんです
      お金を貰わないことには帰れません
 帰りの船賃も無いんです……

 なんでそんなんで海を渡ってくるんだ
      諦めてこのアユタヤに定住するんだな
 そんな、病気のお母さんがいるのに……

 見捨てないで下さい 助けてください!

 ええい、鬱陶しい すがりつくな 放せっ!
      大体、ただで金を貰おうというその精神が気に入らん
      私が欲しがるような物があるなら考えないでもない
 えーと、芋ならたくさんありますが

 芋はいらん 他に何かないのか?

 他に何か欲しい物…… はっ まさか!
      ダメだ、妹は聖職者 そんなことはさせられない!
 お兄ちゃん、わたし、お母さんのためならこの身体……

 ダメだダメだ お金のために誇りまで失ってはいけない!

 だれもそんな事をしろとは言ってない 私を何だと思っているのだ
      娘よ、お前も聖職者のはしくれなら
      ヒールくらいは使えるであろう
 えっ はい、もちろん使えます

 支援魔法でもかけてくれれば、
      帰りの船賃くらいは出してやらんでもない
 本当ですか!? ありがとうございます

 しかし、それでオサラバだ もう追いかけてくるなよ

 じゃあ、魔法かけますね それっ!

 なんだこれは! 支援魔法のフルコースではないかっ!

 ヒールだけでお金貰うのも悪いのでがんばりました

 これほどの力があるなら物乞いなどせずとも……
      さっきはオサラバと言ったが気が変わった 娘よ、私について来い
 へっ? それはどういう……

 私は今、敵と戦っておる それを魔法で支援せよ
      そうすれば母親の薬代くらい出してやる
 本当ですか? ありがとうございますっ!

 うむ、しっかりと支援せよ 娘よ、行くぞ!

 何故だ さっきよりも増してすばやい動き 何故だ!

 支援魔法があるとやはり楽だな クックック

 ブレス! グロリア! マグニフィカート!

 いい調子だぞ よし、これで最後だ!

 ……無念

 ここが遺跡の一番奥か 制圧完了だな
      これでアユタヤはルーンミッドガッツ王国のものだ
 ふぅ こんなに支援をしたのは初めてかも……

 楽勝だった お前のおかげだ

 わたしのおかげだなんてそんな…… 恥ずかしいです……

 それだけの力があるのなら
      働き口はいくらでもありそうなものだがな
      なんなら、大聖堂にでも口をきいてやるぞ
 憧れの大聖堂ですか! ステキ……
      でも、そういうことはお兄ちゃんに相談しないと……
 母の薬が手に入ったらまた故郷で暮らすんです
      家族水入らずが一番だね
 なんだお前、まだいたのか

 まだも何も、ミーナを置いて帰れるわけがない
      僕ら兄妹はいつも一緒の一心同体です
      ねえ、ミーナ♪
 えっ う、うん……

 バカ兄貴め…… まあ、気が変わったら私のところに来るがいい
      さてと、これでやっとこさおちつけるな
      バカンスを楽しむとするか


……………………………………………………………………

 プロンテラを旅立ってから何年たっただろう
      とうとうこんな南国まで来てしまった……
 おねえさん みやげ物に首飾りなんていかがー?

 アユタヤはのどかで美しいところだな
      ここには求める者がいるだろうか……
 さあ、アユタヤについたぞ

 高給取り騎士団員職はお役御免
      こんな南国に左遷されちゃオレの人生もおしまいだな
 ヘルマン団長がいなくなった途端に縛りがきつくなったかなぁ
      今まで訓練サボってばっかりだから目をつけられたかな
 うーん 今後は反省してまじめに訓練やろう
      そしたらそのうち本国に戻れるかな
 まあ給料はさがったけど、アユタヤは気候もいいし食べ物も美味い
      いいところだし、ゆっくり暮らそうかなぁ
 ……あれは、王国軍?
      なぜこんなところにいるのか?
 アユタヤはリンゴの騎士様によって王国に編入されたのですよ

 なんと!? 赤リンゴの奴め
      こんな遠い国まで遠征をするとは、何を考えている
      ヤツはこのまま世界中を支配するつもりか
      すぐに王国に戻って問いたださねばならぬっ!(退場
 えっと、別に遠征軍が来たわけじゃないんですけど……


ではまた

次へ戻るTOPへ

inserted by FC2 system