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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第十一話

 

〜演劇部室・将姫〜

予想通り二年生達が戻ってきた。もちろん園田さんも。

「あ、御劔さん、来てたんだ。お待たせ〜。」

「お疲れさん。お邪魔してたよ。」

「あっはは。あれぇ、先輩達、まだネタ考えてるみたいだねぇ。」

そういうと園田さん達二年生は、
部室の奥でいまだ夢中で話し合っている三年生達の方へ向かっていった。

「先輩。二年生、練習終わりました。ネタは決まりましたか?」

「あ、おかえりなさい。えぇ、なかなか良いのができそう。」

「よかった〜。来週ですもんねぇ。どんなのですか??」

「それがね・・・」

なんだかとっても楽しそうに話し込んでいる・・・。
そうだ、今のウチに預かった本を渡しておこう。
わたしは話しの区切りの良いところを見計らって割り込んだ。

「あの、すいません。さっき文芸部の長谷川さんっていう方が来て
 この本を部長さんにお渡ししてくれって言ってました。」

そういってさっきの本を部長さんに見せた。

「えぇっ!?直美が?いつのまに!?みんなわかった?」

あの人は長谷川直美さんというらしい。

「ほんとについさっきですよ・・・ノックの音がしたじゃないですか。」

「え〜〜。ぜんぜんわからなかった。」

「いつのまに・・・。」

他の三年生も全然気づいてなかったみたい・・・ダメだこりゃ。

「あぁ、そういえば長谷川さんならさっきすれ違いましたよ。
 ホントに僕らと入れ違いだったんじゃないですか?」

二年生の中の一人が証言する。
ついでに園田さんも言う。

「どうせ話し合いに熱中して誰も気づかなかったんでしょ?
 あ〜あ、み〜んな熱中すると他のことどうでもよくなっちゃうからなぁ。」

「「「「「アンタが言うな。」」」」」

その場にいる人間全員がいっせいにハモった。もちろん私もである。

「な、なによみんなして・・・ヒドイ。ふん、いいですよ〜だ。」

園田さんは隅っこに行っていじけたふりをする。
演劇部員だけあって仕草はいかにもと言った感じだ。
それをほっておいて部長さんが私の方を向く。オニだ。

「御劔さんがいて助かったよ、ホント。ありがとうね。
 直美は文芸部の部長なの。ウチと文芸部はわりと本の貸し借りがあってね。」

「あ、そうだったんですか。なんだか穏やかそうな人でした。」

「そうでしょ。マイペースでちょっと変わってるけど、いい人だよ、あははっ・・・
 さてと、ネタは大筋決まったから二年生も目を通してくれる?
 意見があったら後で言ってね。今度は三年生が発声練習してくるから。」

あ・・・もうすぐ五時だ。私もそろそろ行かなくっちゃ。

「すいません、用事がありますのでそろそろ失礼します。」

「うん、わかった。今日はありがとう。良かったら、またいつでも来てね。」

「はい、またお邪魔します。
 それでは皆さん、お邪魔しました。園田さんも、またね。」

「うん、また明日。」

私は練習に向かう三年生達と一緒に部室を後にした。
文化部室棟を出ると三年生達は建物のすぐ脇で発声練習をするそうだ。
だけど部長さんだけは私と一緒に校舎の方にやってきた。

「あれ、部長さんはこっちに用があるんですか?」

「あ、ちょっと職員室にいって顧問の先生に会ってくるの。」

なるほど、部長ともなるといろいろあるんだね。

 

「それじゃ、失礼しま〜す」「うん。またね。」

職員室は昇降口のすぐ側なので、私たちはそこで別れた。
4時45分か。さて、人目に付かないように茂みの奥に入ってから武道館の方に向かおう。

武道館に着いて適当な木の陰に隠れた。
様子をうかがうと、まだ雪姫が一人だけだ。
さてと・・・あっちはどう来るかな。
実はホントにラブレターでした。とかいうオチは勘弁して欲しいけど。

 

 

〜放課後、武道館裏・雪姫〜

武道館裏に着いて時計を見ると4時50分。
まだ誰も来ていないようだ。
武道館の中からは勇ましいかけ声と竹刀で打ち合う音が聞こえてくる。
他に人の気配は感じられない。
もっとも、将姫姉さんは近くにいると思うけれど。

ここは本当に学校の隅っこのせいか
しばらく待ってみても誰かがここを通る気配すらない。
由美子いわく、絶好の呼び出しスポットだそうである。
そして5時3分。一人の女生徒がやってきた。見覚えは・・・無い。
こちらにまっすぐ近づいてくる。どうやら彼女が手紙の主のようだ。

「・・・あなたが手紙をくれたの?」

少女はこちらの問いに答えずに言う。

「あなた・・・"姫"ね?」

やはりこの少女はアイテム強奪事件に何か関係あるようだ。

「・・・・・・なんのこと?わたしに用があるなら早く言って。」

少女はあくまで無表情だ。

「アイテムは・・・渡さないわ。」

やはりこちらの言葉には耳を貸さずにゆっくりとこちらに歩いてくる。
相手がアイテムを所持している可能性が大きい。
これ以上近づかれるのは危険だ。

「・・・止まって。それ以上近づいたら敵意が有るとみなすわ。」

それでも止まる様子はない。

「渡さないわ・・・。」

私は少し下がって距離を保つ。

「・・・・もういちど言うわ。止まって。次は攻撃するわよ。」

「・・・。」

少女はやはり反応せず、歩みを止めようとしない。
やむえないが戦うしかなさそうだ、そう思うと同時に少女は崩れ落ちるように倒れた。
その後ろには将姫姉さんが立っていた。
いつの間にか背後を取った姉さんが手刀で気絶させたようだ。

「悪いけどちょっと眠ってもらうよ。
 ・・・雪姫、コイツはやっぱり何か知ってるみたいだね。」

「・・・間違いないわ。」

「さてと、縛り上げて尋問タイムだね・・・・ん!?」

「・・・どうしたの?・・・・・!」

10人以上もの気配がする。
辺りを見回すと、男女入り交じり、
格好も制服、ジャージ、ユニフォーム、何かの道衣など
バラバラな集団に挟まれていた。
みな一様に無表情で、一言も口をきかない。

「ちっ、しまった。全員倒すのは簡単だけど・・・」

 

To be continued...

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