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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 

 

第二十九話

 

〜雪姫の部屋・将姫〜



雪姫の容態は素人目にも悪くなっているように見える。
私はタオルで雪姫の汗をぬぐってやりながら鬼姫が来るのを待っていた。
早く来て。このままじゃ絶対にやばい。

「ん・・・んんっ・・・・・・。」
雪姫が苦しそうに呻く。
「がんばって、もうすぐ鬼姫が来るからさ。」
聞こえているかはわからないが、とにかく励ます。
私にはこれぐらいのことしかできない。

その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい。」
わたしが返事をするとドアが開き、鬼姫が入ってきた。
「将お姉様、お久しぶりです・・・雪お姉様の様子はいかがでしょうか・・・」
「わからない。でも良くはなさそうだよ。とにかく早く診て上げて。」
「はい、わかりました・・・。」

鬼姫が雪姫の枕元に近づいて手を取り、顔をのぞき込んだ。
すると鬼姫の顔が険しくなる。
「いけない・・・。」
そう言うと鬼姫はふところから人型に切り抜いた紙を取り出して雪姫の頭にさっ、と撫でつけた。
「それは?」
「これは形代(かたしろ)です・・・災いを肩代わりさせることができます・・・」
「じゃ、これでもう治っちゃうの?」
「いいえ・・・自然にかかった病気ならば、これで快方に向かうはずですが・・・
 呪いは、軽減させることしかできません。」
「それじゃダメじゃない!!!」
「ひっ!」
あちゃ、つい語気を荒げてしまった。
この子は気が弱いので萎縮してしまう。

「ゴメンね・・・。でも、それじゃどうするの?」
「・・・え、えっと・・・あの・・・少しでも時間を稼がないと危険なぐらい、お姉様の容態が悪かったので・・・」
「そ、そんなに!?」
「はい・・・形代が燃え尽きる前になんとかしないと、敗血症を引き起こして、死に・・・至るでしょう・・・。」
よく見ると形代の足のさきっちょの部分が黒く焦げはじめている。
その分、雪姫の呼吸は少し安定したように見えるし、発汗も減った気がする。

「そ、それじゃ早く何とかしてっ!」
「は、はい・・・将お姉様、お願いがあります・・・庭から柊の枝を取ってきてください。」
「ん?柊?あの葉っぱがとがってるヤツ?」
「はい、呪詛返しに必要なのです・・・その間に別の準備をしますので・・・」
「了解!」

私は全速力で庭に出て柊を探す。
あった、これこれ。
枝を一本へし折って再び部屋まで駆け戻ると、鬼姫が紙に六方星やら何やらを書いていた。
「鬼姫!持ってきたよ。これ、どうするの?」
「そちらの方角・・・そうですね、机の上に立ててください・・・。」
「おっけい!」
私はペン立てに柊の枝を立てた。
「準備が出来ました・・・それでは、呪詛返しの法をはじめます・・・。」

形代を見ると、既に膝の辺りまでが燃え尽きてしまっている。
思ってたよりも、だいぶ早いよ・・・大丈夫かな。。。
「鬼姫!がんばって!!」

鬼姫は力強くうなずくと印を結んで何やら唱えはじめた。
「魔の式よ、此処は汝の居るべき所にあらず。
直ちに汝が主の元に還るべし。還らぬとあらば我、汝を滅ぼさん・・・。」
私は、固唾を飲んで鬼姫を見守っていた。
全ては鬼姫にかかっているのだ・・・がんばって。。

「くっ・・・」
鬼姫が顔を歪める。
「どうしたの!」
「どうやらこの呪いには雪お姉様の毛髪か血液が用いられているようです・・・。」
「ど・・・どういうこと?」
「標的が絞られる分、格段に呪力が増します・・・。」
「そんな・・・・なんとかならないの?!」
「・・・・・。」
そんなことって・・・。

すると鬼姫がおもむろに口を開いた。
「まだ・・・手は残っています。」

To be continued...

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