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著:ショウさん(@愚者の書庫)  絵:えもん氏

真闘姫 〜THE GIRL'S STRUGGLE FOR EXISTENCE〜 


第六十一話

〜夕方、帰宅途中・水田 七瀬〜

部活を終えて、いつも通りの経路で家へと向かう。
不意に携帯が鳴ったので画面を見てみるが・・・
先々月までつき合っていた大学生だ、別れ話は済んだはずなのだが未だに電話などしてくる。
面倒なので放っておくことにする。
まったく、女々しいったらありゃしない。
つきあい始めたのは二年生になったばかりの頃だった。
あの頃は彼が大人っぽく見えたし、優しかったし、そこに惹かれたんだろうけど・・・。

別れ話してた時は泣いたりもしたんだけど、
一度別れちゃうと不思議なくらいどーでもいいというか・・・
今思うとアイツ、"女子高生"に萌えてただけじゃねーか?なんて疑念も沸いてきたり。
はあっ、とため息をついたところで、いつも通る公園にさしかかると、
最近は日が長くなってきたせいか、まだ子供達のはしゃぎ回る声がする。

さほど気にも止めずに歩いていると足下に小さなボールが転がってきた。
ひょいと拾い上げると、幼い女の子の声がした。小学校低学年ってところだろうか。
この頃は男とか女とか面倒なこと考えなくてよかったなぁ・・・いや、それはそれで退屈かな。

「おねえちゃん、ありがとう。」
「あなたの?はい。」
無邪気な笑顔を浮かべて手を差し出してきた女の子にボールを手渡す。
「それじゃあね、バイバイ。」
手を振って帰ろうとすると呼び止められた。
「待って、ため息付いてたけど何か悩み事?」
「!?・・・・あはは、わかっちゃったかな、ちょっとね。でも、大丈夫だよ。」
しゃがみ込んで女の子と視線を合わせる。
そうすると、女の子は今までとはうってかわって妙に大人びた笑みを浮かべた。
「そう、それはよかった・・・あのね、長岡澪さん、死んだわ。」
「!!?・・・・な・・・あ、あなたいったい・・・。」
予想外のそのまた予想外で絶句してしまったが・・・
この人はいったいどうやってここまで姿を変えるのか。
って、今なんて言った?長岡さんが?
「誰にやられたの?」
「それがねぇ・・・長谷川直美さんよ。」
「はあ?直美?!・・・あのバカ、ほんとに何考えてんの!」
「まったく、困ったものね。」
あまり困っていないようにも見えるのだが。
「ねえ、直美の居場所は知ってるんでしょ?教えてよ。」
「聞いてどうするの?それに・・・残念ながらあの子、神出鬼没って奴でね、
 なかなかこっちも苦労してるのよ。」
「わかったら教えてよ、シメてやるっ。」
「まあまあ、落ち着いて、あなたじゃ喧嘩になったら恐らく勝てないわ。
 それに、あんまりあなた達同士でつぶし合いはして欲しくないのよねぇ。
 とりあえず、長谷川さんのことは私に任せておきなさいよ。」
「いいから!とにかくあの子の事わかったら教えて!」
「わかったわかった。それじゃ、せいぜいアイテムの使い方、もっと慣れておくことね。」
そう言うと、幼女の姿をしたその人は、わざとらしく幼い仕草で手をひらひらとふって去っていった。
「ふう・・・ほんと、冗談も大概にして欲しいね。」
いろんな意味で。
頭がくらくらしてきたのでとっとと家に帰ろう。



〜夜、某所・音姫〜

目の前に小さな女の子がいる。
今更だけど、本当にこの人は何者なんだろう。
「ええっと・・・今日はまたずいぶんとかわいいですね。」
「あら、ありがとう・・・ってなんか言いたいことがありそうね。」
「なんでもないですよー。ところで、長谷川センパイほんとにどうします?
 なんなら、私が始末をつけますよ?」
「んー、でも、あなたが行って闘いになったら、ちょっと、もうどちらが勝つかは分からないわよ。」

そう言われてちょっとカチンと来ちゃった、あんな人に負けるものか。
「やってみなきゃわからないですよー!」
「あなたねぇ、わかってからじゃ遅いかもしれないでしょう。
 あの子がハイブリッドになったとはいえ、たぶん、まだあなたに分が有ると踏んでるけどね。
 ま、一応話も聞いてみたいし、私が行くわ。」
・・・なんだか、適当に慰められたみたいで気持ちが収まらない。

「でも!私だって他にもアイテム欲しいし。」
「アイテムは数そろえればいいって物じゃないって言ったでしょう?
 あの子も使いこなしには結構苦労するはずよ。
 黒の聖書にせよ、嵐の魔剣にせよ、強力だけど扱うのが難しいアイテムだもの。
 その二つをいっぺんに扱うなんて一朝一夕じゃとてもとても。」

力の強いアイテムは使い難く、弱いアイテムは使いやすい、とは聞いたけれど。
「あのぅ、それじゃ、私の情動のハープは?」
「そうねぇ・・・中っくらいってとこかしら?」
「それじゃ、このままではいずれ勝てなくなっちゃうってことじゃないですか!」
「だからね、そういう単純な話じゃないのよ、あなたもそのうちわかるだろうけど。
 これだけは言えるって言うのは、
 まずアイテムそのものの力もまた要素の一つに過ぎないということ。
 そして、アイテムは数よりも
 まず、一つのアイテムからどれだけ力を引き出せるかというのが重要。
 そこんとこいくと、あなたは情動のハープの力をかなりひきだせてるわ。
 アイテムの力を多く引き出せれば、
 後は、アイテムの力そのものよりも、契約者が"どういう風に使うか"が問題なのよ。」
「・・・んーと、よくわからないけど、
 私はとにかくハープをよりうまく使えるようになればいいって事ですか?」
「そうね、期待してるわ。」
「それはがんばりますけどー。」
「じゃ、今日はこれで。またね。」
「え?はい、さようなら。」
彼女を見送りながら、なんだかなだめすかされたことに気が付いた。
仕方がない、長谷川センパイはあの人に任せよう。
あのセンパイはなんだかヤバイ、怖くはないが積極的に会いたい人でもない。



To be continued...

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